愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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仕事が落ち着く気配を見せ始めたものの、まだまだ忙しいです。
早く暇になってくれ!
SSはツイッターで募集してた台詞のリクからです。
1個目。
・佐幸+α
・戦国
【モラトリアムの箱庭】
ある日佐助は女中頭に呼ばれ、とある女を紹介された。
それは新しく入った女中らしい。
防犯上、新たに家に入るようになる者は男女問わず佐助に面通しを行うのがこの家の慣例だった。
長とは言え忍に面通しってどうよと思わなくもないのだが、それだけ皆幸村の身を案じ、且つその護衛をする佐助を信頼してくれているのだと思えば無碍にも出来ず、佐助もいつしかそれを受け入れる様になっていた。
尤も、佐助の方は話が出た時点で相手の身辺調査をしているので顔も素性も全て知っているのだが。
故にこの面通しはどちらかと言うと相手の為のもので。
主に近しい佐助には臣下達も何かと接する事は多い。
顔は知っておいた方がいいだろうと言う訳だ。
まあ、忍が顔が割れてるってどうよと思わなくもないが以下同文。
ともあれ、そんないつも行われる面通しであったが、今回は少々相手の態度が違っていた。
常であれば挨拶をして偶に主の話をして、まぁ何かあったら言ってくださいよと笑ってお開きとなるのだが、そう告げると新しい女は酷く嫌そうに顔を歪めた。
忍如きが何故、と。
そしておやと目を見張る佐助に畳み掛ける様に告げるに曰く、何故忍が女中の仕事である主の身の回りの世話までしているのかそれだから幸村様は女に慣れずあのお年になられても浮いた話一つ上がらないのだ、との事らしい。
成る程と佐助は無表情の下で思う。
そう言えば事前調査によればこの女の親は武田の家臣団の一人だった筈だ。
主が質素な生活である上女性が苦手である事から余り新しくは取らない女中を、その親に強引に薦められる形で雇う事となったと佐助は上から聞いている。
女中の名目ではあるが恐らく幸村に近付き側室目当て、あわよくば正室を狙っているのだろう事は容易に察する事が出来た。
言い出したのが親か本人かまでは知らないが。
まぁ気持ちは分かると言うものだ。
何しろ幸村は傍から見てもかなりの優良物件と言えるのだから。
見目は良く、年も若く、性格は若干熱すぎるきらいはあるものの真面目で基本的には優しい。
更に武田の大将であり将来を担うとされている有望株とくれば女として狙わずにはいられないだろう。
今いる女中達の中でもあわよくばと思っている者は少なからずいる事を佐助は知っている。
もっとも本人がそう言った事を忌避している為あからさまに近付こうと言う者は今までいなかったのだけれど。
しかしこの女は違うらしい。
元が武田の重臣の娘と言う立場もあってか、かなり積極的に迫る性質らしい。
強く止められる者がいなければ尚更そうもなるだろう。
そんな事を考えていた佐助が無言のままでいると、言い負かしたと思ったらしい女は忍が女中の仕事に手を出さぬ様にと言い置いて踵を返す。
忍とは言え仮にも佐助は甲斐武田の副将なのだが。
女中頭が諫めてもどこ吹く風。
去って行く背中を佐助はひゅぅと口笛を吹いて見送る。
立場を気にしてやはり強くは言えないらしい女中頭が追いかけながら頻りに佐助を振り返っては頭を下げていたものだから、佐助は笑って気にするなと手を振った。
彼女の言葉にも確かに一理はあると思ったので。
そうしてそれから数日、真田の屋敷は一気に騒がしくなった。
先に宣言した通り女が佐助がしてきた仕事を全て引き受け甲斐甲斐しく幸村の世話を焼こうとしたからだ。
困り果てた幸村が佐助を呼ぼうとしても窘められる。
忍殿もお忙しいのです、そもそも女中の仕事を彼に任せるのは如何なものか、それぞれの領分と言うものがある事を上に立つ者ならば考えなければなりません。
言われる言葉は間違ってはいないので幸村も言い返せず、只管逃げようとして朝の着替えだけで大騒ぎだ。
言い寄りたいなら幸村に対してはあれは逆効果なんじゃないかなと思いつつ佐助はその様子をいつも天井裏から見守っていた。
いたのだが。
数日そんな騒ぎを繰り返し、幸村が憔悴し始めると流石に見ていられなくなってくる。
甘い物でも差し入れてやるかと彼女がいない隙に幸村の前にこっそりと現れると。
「佐助ぇ…」
大分疲弊していたらしい幸村がへにょりと眉を下げ、随分と情けない顔で安堵した様に佐助を呼んだ。
「随分疲れてるみたいだねぇ」
苦笑して、甘やかす様に頭を撫でれば堰が切れたかのように幸村が抱きついてくるので受け止める。
今は団子にすら目もくれず、何も見たくないとばかりに顔を懐に埋め擦り付ける様はまるでぐずる子供の様で。
「何なのだ…皆に言うても少しは女性に慣れろと言う…このままではならぬのか。確かに着替えや食事の仕度や身の回りの世話は忍の仕事ではないやも知れぬが…」
訂正だ。
様、では無くそのままぐずる子供だ。
変化を怖がる未成熟の。
彼の成長を思うならば突き放すべきなのだろう。
他の周りの皆の様に、これを切欠に女性に少しずつ慣れていけばいいと。
分かっている。
けれど、駄目だ。
こうして全身で縋られてしまうと、どうにも…
(どうしても、甘やかしちゃうんだよねぇ…)
佐助は溜息を苦笑に乗せて吐き出すと、宥める様に背を撫でる。
「一応言っておくと、皆旦那の事を思ってるんだよ?」
「それは、分かっておる!それでも俺は…今のままがいい…傍に在るのは佐助が良いのだ…」
そんな口説き文句の様な。
言葉と共にしがみ付かれてしまっては仕方がない。
佐助のする事は決まっていた。
「――と、言う訳で。そろそろ遠慮して貰えないかな?」
薄暗い廊下の影に散らばった幸村の夜着。
幸村の寝仕度を手伝いに行こうとしていた女を捕まえ、端に追い詰め佐助は言った。
これまで黙っていた佐助の突然の変わり様。
加えて夜という時間も相俟って女は動揺して視線を逸らす。
しかし少しすると唾を飲み込み、それでもこれは女中の仕事だからと反論して見せた。
その気丈さは賞賛に値すると言っても良いかもしれない。
仕事と言っても単に着替えの手伝いと言うには己も寝衣の単衣のみと言う煽情的な出で立ちは真の目的が他にあると丸分かりだ。
まあそれも主が望めば女中の仕事の内と言えなくもないが。
あくまで主が望んだらの話だ。
残念ながら幸村であればその姿を見た途端に裸足で逃げ出す事だろう。
こんな冬に着物一枚で裸足で山中にでも行かれては流石の彼でも風邪をひく。
そんな事はさせられない。
「まあ確かに、俺様だって女中さんのお仕事を好きでやってる訳じゃないですよ?ただでさえ忙しいのに勤務外だし疲れるし誰からも褒められないし、寧ろこうやって逆恨みとかされちゃうし?」
女中だけの話ではない。
幸村の世話を焼きたいと言う者は忍隊の中だけでもごまんとおり、そんな連中からも佐助は羨ましいといつも半目で見られている。
一応己が長ではあるが、自分より古株の忍から八つ当たりめいたからかいを受ける事もあり、結構面倒臭いのだ。
また羨望だけでなく真田の繁栄、将来を思う者達にも佐助の行動はよく思われていない。
佐助がいるから、余りにも近しい存在に居心地が良すぎて、故に幸村が女性に興味を持たないのではと。
そう言われた事もある。
しかしそれでもあの人が望んでいると思えばそんなのは些細な事とこの日常を守って来た。
「下手したらお歴々にも疎まれるんだけどね。でも、それでも、今まで守り抜いて来たものをぽっとでの奴に壊されるのは無性に腹が立つもんで」
自分が必死に守り抜いて来たもの。
それはただ只管あの人が望む世界、それだけだ。
あの人が変わらぬ日常を望むなら、己は――
「だから壊させてあげないよ」
赤い目を光らせて猿が笑う。
ひ、と女のか細い悲鳴が静かな夜闇に融けて消えた。
翌日、屋敷は静けさを取り戻し、縁側で鍛錬後の一服をする幸村の隣にはいつもの佐助の姿があった。
「あの女中、体の具合が悪いと突然暇を申し出て来たが…大丈夫であろうか…?」
昨夜、また来るのかと戦々恐々としていた幸村を余所に、寝仕度を整えにと部屋に顔を出したのは佐助であった。
そしてその際、彼女が具合が悪いと寝込んでいる事を聞いた。
翌日も姿を見せないので思い切って佐助を呼んでみるといつもの通りはいはいと軽い返事と共に姿を現した忍。
思わず安堵の笑みが零れたのは仕方がない事と言えた。
そうして久し振りにのんびりと朝餉を食べている時に女中頭から彼女の暇乞いを聞かされた。
幸村としては特に反対する所はなく、内心を言えば寧ろ喜ばしいと嬉々として受け入れたのだが。
「何か、高熱で一晩寝込んで記憶も曖昧って話だけどね」
「そうか…心配だな…」
苦手な相手ではあっても具合が悪いと言うのは放っておけない。
心配する優しい主を安心させる為に佐助は軽い口調で答えた。
「ま、慣れない土地で疲れもあったんじゃない?家に戻れば良くなるでしょ」
平気平気と手を振れば、佐助がそう言うなら大丈夫だろうと幸村も安心したように笑った。
何だかねぇ。
何が大丈夫なんだか。
佐助は組んだ足に肘を置き、頬杖をついて苦笑する。
「しかし、その…もし流行り病などであっても困るし…城下に異変が無いか様子を見に行った方がいいのかも知れぬな」
「あんた、それ、ただ遊びに行きたいだけでしょ」
妙に難しい顔で言う主の、しかし真意をあっさりと見破った忍は呆れ顔でそう告げる。
看破された幸村は途端に狼狽え。
「そんな事はないぞ!俺は領主としてだな!」
「へー、ふーん、じゃあ新作が出たって噂の団子屋には寄らなくていいよねー」
「そ、それはだなっ、佐助…!」
佐助の切り返しにしどろもどろになりながら、八の字眉で佐助に縋るその表情は昨日のものとよく似ている。
しかし空気があの時とは違う。
彼に滲み出る悲壮感はもう、ない。
佐助は笑って寄った眉の間を撫でる。
「冗談ですよ。視察ついでに寄ればいいんじゃない?ただ、その前にちゃんと汗拭いて、着替えてね。髪もぼさぼさだし」
「うむ!佐助、手伝ってくれ!」
当然城下にまで付いて来るのだろうと信じて疑わず部屋に向かって歩き出した幸村の背を佐助も追う。
戻って来た日常。
例えそれが狭い箱庭であろうとも、彼が望むのならば――
佐助が後ろ手に閉めた障子がぱたりと音を立てた。
終
殺してはない。
<リク台詞>
「別にこんな事好きでやってる訳じゃないし、すごく疲れるし誰からも褒められない上に下手したら疎まれる。でも自分が必死で守り抜いてきた物(事)をぽっと出の奴にあっさり壊されるなんてそれはそれで無性に腹立つんだ。だから壊させてあげない」
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早和
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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