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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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いつも大変お世話になっているあさぎ先生のお誕生日に。
前に140字で書いた二人を私の誕生日に先生がイラストにして下さり、それが嬉しかったのでその二人で続きを書いてみました。
あさぎ先生、おめでとうございます。

(元の140字)
https://twitter.com/sayori_888/status/890934690432950272
(頂いたイラスト)
https://twitter.com/asagi_4793/status/90251196873662464






・佐幸
・現代





【三度目に最愛】







佐助はほとほと困り果てていた。



先日、幼なじみとの関係が少し変わった。
幼馴染の名は真田幸村。
誰よりも近しく、大切で、放っておけない友人だった。
それが先日、近しく大切で放っておけないと言うのは変わらないが、友人の部分が変わってしまった。

切っ掛けは二人で夜の学校のプールに忍び込んだ事。
基本的には真面目な幸村だが、稀に悪戯的な佐助の提案に乗ってくる事もある。
その日は熱帯夜で陽が落ちても気温は下がらず、動かずとも汗ばむ程で。
しかし冷房を嫌う幸村が暑い暑いと団扇を片手に呟いていたので佐助が涼を求めて提案したのだ。
ならばプールにでも行こうか、と。
忍び込む事に多少の抵抗を感じたらしい幸村だったが、熱さと好奇心には勝てなかったらしくその提案に乗って来た。
佐助の知る侵入口は壁を乗り越えなければいけなかったが幸村は運動神経は非常に良いので問題ない。
そうして二人夜の学校に忍び込み、誰もいないプールに飛び込んだのだった。

普段は二組合同の手狭なそれをたった二人で使える解放感。
幸村は大はしゃぎで全面を使い泳いでいた。
佐助も、時折声が大きくなりすぎる幸村を諫めつつも楽しんで。
そろそろ帰ろうかと言う時だった。
持ってきたタオルで体を拭い、一応教師に見つかった時に忘れ物を取りに来たと言い張れる様に着て来た制服を再び身に付け。
そんな時に幸村があ、と声を上げた。
どうしたのかと振り返ると、幸村は空を指差していた。
そして言った。
満月だ、と。
しかし佐助のいた位置からは校舎が邪魔をして月は見えず、何処かと問うと此方だと幸村が腕を引いた。
二人で夢中になって空の月を探し、そうしていたら足元を気にするのをすっかり忘れていた。
まず幸村が段差に足を取られて体制を崩し、腕を取られていた佐助は当然それに引っ張られる。
佐助も珍しく気を抜いていたのか咄嗟の事で踏ん張りがきかず。
そうして二人仲良く共にプールに落ちてしまったのだった。

折角水着とタオルを持ってきて、態々制服にまで着替えたと言うのに。
これでは見つかった時の言い訳も出来やしない。
何をしてるんだと二人で笑って。
それでも並んで見上げた月は綺麗で。
綺麗だな、楽しかった、有難う佐助。
そう微笑んだ幸村の、濡れた髪と肌と唇と。
見た瞬間に己の中の何かが変わった。
髪から滴る水の雫が月明かりに光って綺麗だった。
佐助と見上げる幸村の瞳も同じくらい。
落ちた雫が唇に流れ、それに吸い寄せられる様に口付けた。
幸村は嫌がる素振りも無く、ごく当たり前の様に目を閉じて。
触れたのは一瞬。
離れると濡れた瞳がまた佐助を見上げ。
キラキラ輝く中に己の姿が映っている。
それを見た瞬間に思ったのだ。
あぁ、好きだ、と。
思った所で幸村が、初めてが塩素の味かなんて言って笑うので。
佐助はまた堪らなくなって直ぐに二度目のキスをした。

それが少し前の話。





以降佐助は暫くの間浮かれていたが、幸村は反して何処か怒っている様だった。
二人でいる時は佐助の方を見ようとはせず、終始むっつりとして。
それでも離れる訳では無いので偶には良い雰囲気になる事もあるが、そうするとそれを避けるかの如き素振りを見せる。
三度目のキスをと佐助が思うと、急に何かを口にしたり。
飴だのチョコだの。
普段は佐助に強請るばかりで自分で持ち歩いた事などなかった癖に。
何故か自分で用意したそれを徐に口に含むのだ。
その度佐助はタイミングを逃し、未だ三度目は為せていない。

もしかして、嫌だったのだろうか。
しかしプールで口付けた時はそんな気配は全くなかった。
寧ろ嬉しそうにさえ佐助には見えて。
だから二度目のそれをしたのだ。
塩素味だとはにかむ顔が可愛くて。
そう見えたのは単に己の願望だったのだろうか。
それとも、後になって冷静になりやはり嫌だと感じたとか
男と付き合うなんてと。

そこまで考えた佐助ははたと気付く。
口づけをして、嫌がられなくて、だから両思いで付き合っているものとばかり思っていたが、そう言えば己は幸村に告白をしていないし、幸村の気持ちもちゃんと聞いた訳でも無い。
両思いと言うのは己の勝手な思い込みで、幸村はそうではないのではと、そう思い至ったのだ。
遊びと思われ、からかわれたと怒っているのかも。
或いは、幸村にそんな気は全く無く、単に親しい友人同士の触れ合いとしか思っておらず、我に返って嫌になったか。

どちらにせよ、気付いた佐助がすべき事は一つだった。
想いを告げて、幸村の気持ちを聞く事。
故にそれを実行した訳なのだが。



「旦那、あの時は急にあんな事して、ごめん・・・でも別にからかったりした訳じゃなくて・・・だから、その、あんたの事が好きなんだけど・・・」

告げると幸村はぽかんとした表情で目を見開いて佐助を見返した。
突然どうしたのかと、その視線が問うている。
だから佐助は慌てて付け足した。

「だから俺様は、また・・・あんたとキスとかしたいと思うし・・・それで、あんたの気持ちを聞きたくて・・・」

そんな佐助の問いに、幸村は訝し気だ。

「俺の気持ちなど・・・知っておったからあの時口付けたのではなかったのか
「えいや、まぁ、その・・・」
「それともお前、俺が好いてもおらぬ者に二度も口づけを許すとでも思うておるのか・・・」

じとりと半眼で睨まれ、佐助は首を振った。
そんな事は断じて思っていない。
思っていないが、それならば、何故・・・

「でも、じゃあ、何でずっと不機嫌そうだったのそう言う雰囲気になると避けるって言うか、何か食べ始めるし」

一応此方にも言い分はあるのだと、佐助は抱いていた疑問を投げかけた。
すると幸村の答えは別に怒ってなどおらぬと非常に簡素なものだった。
しかしそうしてそっぽを向く横顔の唇はやはり怒った様に尖っている。
否、尖っているが、これは怒っているのではなく

ふと思い至る。
この表情。

「旦那、もしかして・・・照れてた

幸村の表情を読み間違えるなど、己は余程浮かれていて、そして動揺していたようだ。
そうだ、幼馴染の己は知っている。
幸村が本気で怒った時は、寧ろ表情は凪いだ様に静かな物になる。
口付けてから数日の表情を思い出してみればそれは怒ったものではなく、拗ねたり照れ隠しをしたい時の表情だった。

「し、仕方なかろう俺は、その…慣れておらぬ故、どういう顔をしたらいいか分からぬし・・・お、お前は平然とした顔で笑っておるし・・・

己の浮かれた笑みを幸村は幸村でそう捉えていたらしい。
悩んだ数日が馬鹿の様に思えて佐助は苦笑いを浮かべる。
まあ解決したのならばそれでいいか。
しかし、怒っていた訳ではないのなら、もう一つの方の理由は何なのか。

「じゃあ、良い雰囲気になると避けてたのは
「別に、避けておったつもりは無いが・・・」
「でも、さっきも言ったけど、何か急にお菓子とか食べ始めてたでしょ。あれは
「あ、あれは・・・

誤解が解け、余裕が出来た佐助はここぞとばかりに問い掛けた。
どうせなら今の内に全て解決してしまわねば、また似たような事を繰り返す羽目になりそうだ。

もう誤解しない、途端に可愛く微笑ましく見える幸村の照れて拗ねたような顔を堪能しつつ、沈黙に耐え幸村からの答えを待つと、それは予想もしなかったもので。

「は・・・」
「は
「初めての口付けと言うのは甘い物と聞いたのだ」
「・・・・・・・・・は

突然の訴えに佐助は思わず間の抜けた声を漏らした。

まあ確かに俗説や少女漫画などではそんな話を佐助も聞いた事はあるが。
それが一体どうしたと言うのか。

「だが、俺達の、その・・・それはっ、塩素の味しかしなかったから・・・」

もごもごと幸村が言う。
照れてしまってその先は続かなかったが、佐助は考える。
それは、つまり。

「旦那、キスされると思ってそうしてた

尋ねるとボンッと音がしそうな勢いで幸村の顔が茹で上がった。
その変化が答えを如実に表わしていた。
当たりだ。
幸村は次こそはと思って甘い菓子を口に含んでいたのだ。
つまりは無意識にでも彼はキスを望んでいたのだと思うと佐助はもう堪らなくなって赤い顔を隠す様に頭を抱えて蹲る。
何だそれは。
思考回路も行動も可愛すぎてやばいだろう。
こんなの撃沈せずにいられない。

「さ、佐助・・・

突然蹲った佐助に己の言動を不安に思ったらしい幸村がオロオロと声を掛けて来る。
人の気も知らないで。

その表情すら愛しくて、佐助は幸村の手を引き彼が菓子を口に含ませる暇も与えずその唇に口付けた。



三度目の口付けは、甘かった。











(2018.2.25)



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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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