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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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4/10主従の日・・・には間に合いませんでした。
そして佐幸成分が薄いです。
二人の再会をいつかちゃんと書きたいなぁ。










・佐幸
・現パロ












秀吉や謙信、そして義輝の様に友と呼べるほど彼とは親しかった訳ではない。
けれどそれなりに付き合いはあって、人と形は知っているつもりであった。
熱くて真っ直ぐで純粋で。
狭い世界で満足する所があるから社交的とは言えないけれど、人見知りと言う訳ではない。
近しい人には懐こい面を見せていた。
だから慶次も旅の途中で近くを通る度に足繁く通った。
そして初めて前田殿から慶次殿へ。
名前を呼んでもらえた時は嬉しかった。
そんな彼がまるで別人のように冷めた目で。

「・・・慶次殿か」

中学の入学式で偶々見つけ、余りに雰囲気が違い過ぎて一瞬通り過ぎかけた。
しかし翻った特徴的な一房だけ長い後ろ髪にあれと思い、肩を掴んで呼び止めたら見知った顔で。
あぁ彼だと思って嬉しさに久し振りと声を掛けたら少しの逡巡の後に言われたのだ。
前記の様に。
酷く興味が無い様な声音。
冷静で熱の欠片も無い表情と生気の無い瞳。
別人のような彼に、慶次は呆然と名前を呼び返すしかなかった。

「・・・幸村


【春の宵】





慶次はこれまでも何人もの戦国の世での知り合いに会っていた。
しかしその誰も、皆変わりが無い様だった。
利家もまつも、謙信もかすがも。
そして元親と毛利も。
毛利は寧ろ平和な現代で丸くなったのか、家が近く幼馴染らしい元親と相変わらず口論ばかりしているけれど、それでも関係は以前の様な殺伐としたものではないらしい。
仲良くはないがそれなりに上手くやっていると元親に聞いた。
そんな中で何故幸村だけ。
その答えをおっしえてくれたのは入学式後に会った新たな二人の前世の知人で。
否、知人と言っていいかは微妙な所であるが。

「ふん。理由など…奴が半人前だからだ」

半人前とは。
幸村が未熟だからあの様になったと言うのか。
寧ろ今の幸村は年上の前世の頃より大人びて見えるが。
そんな慶次の疑問をもう一人が訂正で答える。

「やれ三成。それでは意味がちと変わろう」

二人の内の一人は今名を呼ばれた三成で、もう一人は大谷だ。
彼らは幸村と幼馴染で小学校も同じだったらしく、また大谷に至っては遠い親戚でもあるらしい。
そんな彼らが教えてくれた。
幸村が変わってしまった、理由。

「半身がな、おらぬのよ。」

傍にな、と。
前世で幸村に常に寄り添い支えた彼の半身、彼の影。
猿飛佐助。
彼が傍にいないのだ。
え、と慶次は驚いた。
慶次が知る者達は皆、縁の強い者はやはり変わらず傍に生まれていたからだ。
三成と吉嗣も然り。
そして彼らの傍には秀吉も半兵衛も左近もやはりいると言う。
なのに幸村だけ。
空虚に押しつぶされ、殻に籠り。
それは変わりもするだろう。
大谷と三成が傍で様子を見てくれているようであるが周囲からはすっかり孤立してしまっており、入学式から数日経った現在もクラスメイトと話した形跡は全くない。
今も昼休みで皆は数人で机を集めたり或いは食堂に向かうなどしている中、一人机に伏せて起き上がる気配もない。
いいのかと慶次は思ったがいいのだと大谷は言った。
初日はクラスメイトでも気にして声を掛けようとした者がいたらしいがそちらも大谷が止めたのだそうだ。
何故なら。
三成がため息交じりに近づき声を掛ける。

「おい、真田。起き・・・」

――ろ、と最後まで言い切る前。
三成の手が幸村の肩に触れるか触れまいかと言う所で、幸村が急に体を跳ね上げ振り返る。
髪の間から見える鋭い眼は殺気を帯びて。
同時に机上のペンの咄嗟にか掴んで先端を三成の喉元に向けようとするが、それは慣れた様子の三成に手首を掴んで止められる。
ペンが無い時は首に直接手を掛けようとした事もあるらしい。
起こそうとするだけで終始この調子だ。
ただのクラスメイトを近付ける事など出来はしまい。

「石田・・・殿・・・」
「起きろ。昼だ」

三成を認識していなかったらしい幸村は、一瞬気まずそうな表情を浮かべた後に小さく謝罪の言葉を告げてから静かに席に座り直す。
しかし以降も動き出す気配はない。
大谷も、あの三成ですら弁当を持ち寄っていると言うのに。

「幸村、昼は・・・」
「いりませぬ」
「忘れたなら俺の・・・」
「いりませぬ」
「でも身体に・・・」
「いりませぬ」

何を言っても取りつく島もなく即答される。
そして最後には面倒に思われたのか席を立たれてしまった。
こんなやり取りももう何度目か。
昔はあんなに美味しそうに食事をし、甘味を強請っていたのに。
今では偶に携帯食か栄養ゼリーを食べている所しか見た事がない。

「仕方あるまい。味覚が失せれば食への興味も同様よ」

覚えがあるらしい大谷の言葉は実感が籠っていて納得も出来ようが。
しかしそれでも、昔は同様の彼の忍の不摂生を咎めていた彼だからこそその落差が切なく感じる。

「味覚を感じないって、相当だよね」
「病院で精密検査もしたらしいがな」

特に病の類は見つからなかった。
とすれば心因性のものとしか考えられない。
更にその原因など考える余地も無い。
慶次は顔を歪めて幸村の出て行った廊下を見詰める。
恐らく彼は屋上に行っているのだろう。
そうだと三成が前に教えてくれた。
彼はふと姿を消すとよく一人で屋上やひいては高い所にいるのだと。
それは忍を探して見晴らしのいい所にいるのかも知れないし、求める忍がよく高い所に登っていたから自然と同じ所へ行ってしまうのかも知れない。
どちらにせよ、佐助を求めての行動である事には変わりがないが。

「あぁ、もう!佐助の奴何処にいるんだよ!」

このままではいつか幸村は壊れてしまうかも知れない。
否、もう壊れかけているのかも。
戦国の世で二人を見た時はどちらかと言えば佐助の執着ばかりが見えていたが、どうやら一方通行ではなかったらしい。
それが良い事なのか悪い事なのか。
分からないが、取り敢えず今は後者に傾いているのがもどかしいと慶次はギリと硬く奥歯を噛み締めた。

 

 

 

 


「――なんて事もあったよねぇ」

麗らかな屋上で持ち寄った弁当を広げて五人。
慶次は懐かしむように大きく息を吐いてそんな事を言った。
その言葉を三成は無言で流し、大谷はそうさなと形だけの相打ちを打つ。
幸村は意識は既にここにないのか聞いておらず。
そしてもう一人のこの春から新しく増えた人物。
佐助は気まずそうにへえと短くそう返した。
慶次が幸村と再会して3年。
何だか心配で大谷達と一緒になって様子を見守り続け、高校まで同じ所に進んだ彼はその先で漸く探し続けていた佐助を見つけて歓喜した。
二人の感動の再会は幸村が佐助を殴り泣き喚くわ、佐助も人目も憚らず泣いて縋るわで大変だったが。
それも今までの幸村の様子を思い返せば良かったと安堵する気持ちの方が慶次は大きかった。
そうして半月ほど経った今では幸村はすっかり変わっていて、手負いの獣の様だった彼は親を見つけたそれの様に今も佐助の膝を枕にすやすやと穏やかな寝顔を見せている。
その脇には大きな重箱形の弁当箱。
佐助の手製であった中身は勿論空になっている。

「その節は旦那が大変お世話になりまして」

照れ隠しなのか妙に慇懃な言い回しで佐助が三人に頭を下げるのに、慶次はいいってと軽快に笑って見せる。
自分は放っておけないのは性分であるし。
大谷や三成は多少意外に思ったが、思い返せば幸村は戦国で最後まで西軍側についていた。
その忠義を三成は買っていたようであったし、大谷も元々三成に似た所のある幸村を昔から気に入っている節はあった。
その結果であろう。

「後は幸村も意外だったよな~。昔は虎のおっさんもいたからか、そこまで佐助に執着してるとは全然気付かなかったけど」

変わったのか、或いは隠しているのに気づかなかっただけなのか。

「何か二人の関係性のイメージ、ちょっと変わったかも」

笑って慶次は眠る幸村に向かって手を伸ばす。
あんなに警戒心剥き出しであった彼が、佐助がいるだけでこんなにも無防備な姿を晒すのに感心して。
しかしその手が幸村に触れる直前、凄まじい勢いで振り上げられた手にそれは叩き落とされる。
鋭い視線。
胸元のポケットから出されたペンの先端が慶次の顔の前で止められる。
以前の三成の様な状況だが、剥けてくる相手は幸村ではない。

「真田の旦那に安易に触れないでくれる?」

感謝はしているがそれとこれとは話が別だと佐助が。
忘れていたが、幸村の執着が目に見える様になっただけで佐助からのそれが失せた訳では決してないのだ。
伸ばした腕を元に戻し顔の横で両手を挙げながら、慶次は前言撤回と完全ホールドアップで二人の間からそっと身を引き距離を取った。

 

 

 



 

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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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