愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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140字の83-⑧と同じ設定。
140字にはとても収めきれなかったけどどうしても書きたかった部分です。
弁丸様初めての〇〇〇〇。
・佐幸(弁丸)+真田家+上杉
・微腐
・弁丸様初めての〇〇〇〇
※何でも許せる方向け
【ようようと】
佐助が任務から戻ると弁丸がいなかった。
いつもならばいの一番に佐助の元に駆けて来るのに。
そしてお帰りと汚れるからとの制止も聞かずに飛びついてくるのに。
不思議に思いつつもまずは仕事の報告が先と主の父、この城の城主である昌幸の元へと向かう。
もし弁丸に何かあったと言う様な大事であれば屋敷がこんな静かな筈は無い。
大方誰かと出かけているか、或いは隠れているかと言う所。
ならば報告がてら昌幸に聞けばいいだろうと佐助は算段していた。
そしてその通りに尋ねると、昌幸の口から聞かされたのは意外な答えであった。
曰く、弁丸が城下に買い物に行きたいと言うので修行の一環として一人で行かせてみたのだが、どうやらそれが失敗して落ち込み隠れてしまったとの事。
城内からは出ていない様なので取り敢えず騒ぎにはせず一人になりたい時もあるだろうと今は放っているそうだが。
この主の父が思いの外教育に関してはスパルタである事は薄々感じていたが、よもや知らぬ内に弁丸の初めてのお使いが終わっており、しかもそれが失敗していたなんて。
佐助としては何だか妙に悔しい気分だ。
自分もその様子は是非とも見守っていたかったし、そうしていたら失敗などさせなかったのにと思う佐助は、だからこそ昌幸が佐助のいない間にそれを決行した事に気付いていないが。
閑話休題。
ともあれ終わってしまった物は仕方がない。
落ち込んでしまっているならこれからどう慰めたものかと失敗の内容を佐助は尋ねたが、昌幸もそれに関しては詳しくは知らないと言われ頭を抱える。
「小倅殿が言いたがらなくてね」
男には言いたくない事もあるだろうと追及はしてないそうだ。
また次又精進して望めと助言した所頷いてはいたらしいが。
「どうにも空元気のようで、いやはや参った・・・」
言いながらも妙に芝居がかった言葉に佐助は溜息を吐いた。
彼のこの態度が己に何を求めての事なのか。
どうにも分かりづらいこの人と話すのは佐助としては少々苦手で。
ここで食い下がるよりも弁丸を探す方を優先した方が良さそうだと判断した佐助は頭を下げて場を辞する。
その間際、昌幸は意味深な言葉をかけてきて。
「小倅殿からは聞いていないが・・・ただ・・・」
「ただ?」
「あの後調べさせたら、最近この辺りで性質の悪い商売をする輩が出没するって噂があるらしい」
その者は流れの商人で各地を渡り歩いてるとの事で、先日隣町にも出たらしい。
「うちに来ててもおかしくないねぇ」
噂と言いつつ確信を持ったような話しぶり。
はあ、と適当な相槌を打ちつつ佐助は心の中で呟いた。
このタヌキ親父め、と。
昌幸の話も気になったが、佐助がまずすべき事はそれよりも先に弁丸を探し出す事だ。
彼の部屋から始まり邸の彼方此方を佐助は片っ端から探していく。
邸内では見つからず、方々歩き回って漸く見つけたのは庭の外れの古い蔵だった。
そこは弁丸が落ち込んだ時など一人になりたい時に籠っていた場所だった。
外から様子を伺うと僅かなすすり泣きが聞こえる。
あぁ、やはり此処かと佐助はゆっくり扉を開けた。
そして探していた人を目にし、いる事は知っていたが姿を見た事で思わず安堵の息を零し、告げる。
「やっと見つけた・・・」
佐助の姿を見ると弁丸は慌てて顔を拭っていた。
泣いていたのを隠そうとしているのだろう。
返す言葉も平静を装った声だった。
「さ、佐助!帰っておったのか!お帰り!よく無事で戻った!」
いつも通りの労わりの言葉。
しかし顔には先程拭ったものの拭いきれていない涙の跡が見える。
しかもこんな蔵で蹲っていた為手が汚れていたのかその筋に反って泥がついている。
目立つし袖も大きく水の染みが広がっている。
「弁丸様、一人で出かけたんだって?」
ただいまと取り敢えずの挨拶を返し、しかし直ぐに佐助は本題を尋ねる。
びくりと肩が震える。
この子は父親と違ってまだ隠し事が上手く無い。
素直にこくりと頷いて、でもそれは失敗して買い物は出来無かったのだと弁丸は言った。
その顔は笑顔であったがいつもの溌剌としたものではない。
明らかに作った様な、無理をした笑顔だ。
「弁もまだまだだな・・・精進せねばなるまい!」
心配をかけまいと元気に振る舞う。
その痛々しさが腹立たしい。
俺様には言ってくれてもいいのに。
「何を買おうとしたの?」
故に佐助は追及の手を緩めず更に尋ねたのだが、その問いをすると弁丸は息を飲んで俯いた。
それでも無言で答えを待つと、やがて小さく途切れ途切れに。
「さ、佐助が・・・家に来て・・・丁度、季節が一回り・・・するから・・・」
記念の物を何か買ってあげたかったのだと、弁丸の答えはこうだった。
声が次第に潤み出す。
「でも・・・買えなかった・・・」
佐助に買ってあげたかったのに、すまぬとほろほろと泣きだす弁丸に佐助はその品を聞いて驚いていた。
まさかそんな事を考えてくれていたなんて。
忍如きに、恐れ多いにも程がある。
そんな事で、しかも失敗して心を痛めさせた己への不甲斐なさもあったが、それよりも今は弁丸を慰める事の方が断然先で。
涙を拭いながら佐助は優しく言い聞かせる。
「その気持ちだけで十分だよ・・・」
「でも・・・俺が、あげたかったのだ・・・」
「じゃあ、明日また一緒に買いに行けばいいじゃない」
季節が一巡りと言っても正確な日付がある訳ではない。
ならば今日で無くてもいいのではと佐助は言ったのだが。
弁丸は首を振り。
「出来ぬのだ・・・」
もう買えないと告げる彼の涙は止まらない。
「どうして?」
何があったのかと聞いても何度も首を振るばかり。
何が彼の心をそんなに頑なにさせているのか。
「言えない?」
「言えぬ・・・」
「何があっても俺様が味方になるって言っても?」
言うと弁丸は一瞬身体を揺らし顔を上げたが。
「言ったら・・・父上に、迷惑がかかる・・・」
成る程彼を頑なにさせているのはそこかと佐助は納得した。
父や家族を大事にする彼は家に迷惑が掛かる事を好まない。
だから佐助は額を寄せ。
「昌幸様には言わないよ」
二人の秘密だと嘯いた。
誰にも言わない、大丈夫だから俺様にだけ教えてくれると促せば、やはり小さな子供には抱えきれるものではなかったようで、やがて耐え切れないとでも言うように弁丸は吐き出した。
「お、かねっ・・・全部っ、と・・・られ・・・っ」
弁丸の話を聞くとこうだった。
佐助への贈り物を探しに城下に下りたはいいものの、勝手が分からず取り敢えず彼は通りをうろうろしていたらしい。
食べ物、特に甘味ならば何処が美味しいとか何が旬だとか色々詳しいところだが、しかし探すのは初めての佐助への贈り物。
食べてなくなってしまうのは寂しい気がして、形に残る物を探したかったのだそうだ。
そうした所に声を掛けて来たのがその男だった。
店の中に商品を置くのではなく、外に茣蓙を引いて品を並べて売る形式のその店は、弁丸には店内に入らずその場で品を見られる分安心感があった様で、気さくな男の笑顔にも警戒心が削がれ呼ばれるままにその並べられた品を覗いたらしい。
何を探しているのかと問われ、忍とばらすなと言われていたので取り敢えず大事な人への贈り物とだけ答えると、男はならばと背後から小さな箱を取り出した。
とっておきだよと微笑まれ、手渡されたのは母親の部屋で見た事がある。
香炉と呼ばれるものだった。
蓋を開けてみて、と言われ促されるままその通りにすると中から香りが辺りに広がる。
母親は確かに時折この様な匂いをさせている事があるが、幼い弁丸にはその匂いの強さから余り好ましいとは思えなかった。
それに弁丸だけではない。
忍も匂いはつけないようにしてる筈だから、贈り主は匂いが強いものは好きではないのだと弁丸はそれを返そうとしたのだが。
すると途端に男の顔が変わったそうだ。
そして低い声音でこう告げた。
開けたらもう使えない、商品にならない、どうしてくれるのだと。
急にガラが悪くなった男に弁丸も反論はしたらしい。
「俺は言ったのだ・・・“貴殿が開けろと言ったのではないか”と・・・」
しかしその辺りは相手も予想していたようで。
開けるといい匂いがすると言おうとした、言い切る前に開けたのはそちらだと返したらしい。
流石にそう言う商いを続けて来ただけある。
相手の反応も予想して予め言葉は決めてあるのだろう。
忍の佐助には容易に想像がつく。
そんな事はない開けてみよと言ったと弁丸は尚も言い募ったがそれを証明出来るのかと問われ言葉に詰まった。
それはそうだ。
人の記憶だけが頼りのそれを証明するなんて誰にも不可能だ。
それは相手にも言える事だが大人と子供であればやはり大人の方が信用されやすいのは確かだ。
誰かに訴える?大人と子供の言葉、どっちを皆信用するかね?それであんたが嘘つきってなったらあんた、随分と身形がいいし良い所のお坊ちゃんみたいですけど息子さんが商品駄目にしておまけに嘘ついて逃げようとしたなんて知れ渡ったら家の名に泥を塗る事になるでしょうね。
そんな事を息を吐く間もなく言われどうにもならなくなり・・・
弁償のお金だと持っていた金を全て取られてしまったのだそうだ。
それは弁丸が父や家の手伝いなどをして貰った小遣いをこつこつと健気に溜めたものだった。
期間も随分かかったらしい。
また溜まる頃には季節が変わってしまうとボロボロと泣きだす弁丸を佐助は腕に抱いて慰めながら苦笑する。
「そんなのいいのに・・・」
「でも・・・俺が、佐助にあげたかった・・・」
またそう繰り返すので、佐助はならば来年と次の約束を取り付ける。
「来年?」
「そう、来年。それまで傍にいて弁丸様をお守りするから・・・」
来年のこの時期になったらね?
そう提案すると来年もまた一緒にいられる確約になると気付いた弁丸は頷き、漸く笑みを浮かべてくれる。
ならば後はと佐助は弁丸の背を抱く腕に力を込め。
「後は気が済むまで泣いてすっきりしちゃいな」
言えばしがみ付いて堰を切ったかの様に声を上げて泣き始める。
何度も何度も名前を呼ぶからその度に。
「うん、うん・・・悔しかったね・・・」
背を撫で慰め続ければ、やがて泣き声は小さくしゃくりあげるだけになりその内それも収まった。
そんな風に声が止んだ頃、彼はひょっこり現れた。
「小倅殿は寝たかな?」
「ええ。泣き疲れて寝ちゃいましたよ」
丁度すぎるタイミングに溜息を吐かずにはいられない。
そもそも彼は。
「殿、全部知ってたんじゃないですか?」
疑いの目でじとりと見遣れば彼は悪びれもせずにまあねと頷いた。
「じゃあ何で・・・」
「儂が出れば必然的に領主としてになっちまうからねぇ」
己は弁丸の父だが民にとっては上田の領主だ。
出て行けばどうしたってその肩書きは表に出てしまい、権力を振りかざしての解決は弁丸は望んでないと思われた。
また昌幸自身も弁丸の為にならないと。
だから自分が出る訳にはいかなかったと彼は言い。
「ああ言う人間も世の中にはいるんだって、小倅殿も勉強になったろう」
相変わらず厳しいお人だと佐助は言葉を飲み込んだ。
とは言え、先程も言ったが昌幸とて弁丸の父だ。
自分も可愛い息子を泣かされ腸は煮えくり返ってるんだよと佐助に言う。
「主思いの忍が独自で復讐するなら止められないぐらいにはねぇ」
そしてぽんと佐助の肩を叩く男に佐助は本当にこの人は、とひそりと思う。
(この、タヌキ親父!)
山を背後に臨む国境の小さな町で、男は荷を解いていた。
ずっと背負っていたそれらは道中で壊れたりしていないだろうか。
確認しながら広げた茣蓙の上に並べていく。
何しろここまでかなり険しい山を越えて来たので。
久し振りの商いだと並べ終え、ふうと息を一つ吐く。
ここは上田から三つ程離れ、更に途中で山を一つ越えた先の町だった。
普段は移動しても隣町程度なのだけれど、大きな仕事をした後だったので今回は足が付かない様にと念の為かなりの距離を移動した。
そう、前回はいい仕事だったと男は思いに耽る。
まさか子供があんな大金を持っていようとは。
商品の弁償と謳い出させた懐の金子袋には銭がパンパンに入っていた。
子供には南蛮渡来の香炉で高価なものなのだと言って騙したが、実際にはちょっと派手な彫り物がされているだけで何の値打ちも無いその辺のがらくたと同等の物だ。
二つ三つ買ってもお釣りがくる。
全く、女子供は騙しやすくていいねと香炉を掲げて眺めていると。
「いい品だね」
声を掛けられ男は我に返った。
ふと見上げると正面には若い男が立っている。
並ぶ品から店に男が立ち寄るのは非常に珍しく。
しかも笠を被って旅人だろうか。
顔が影になって見づらいけれど妙に雰囲気が・・・
ぼんやり見上げていると若い男は更に言った。
「見せて貰っても?」
「あ、勿論です!どうぞどうぞ・・・」
慌てて男は香炉を渡す。
男相手にどこまで騙せるかは分からないが、多少高く売りつけるだけでも十分だ。
何せ今は暫く困らない程度には持ちあわせているので。
綺麗な細工だと若い男は周りの彫り物を眺めながら言った。
贈り物に良さそうだと言うので男は賺さず頷き返す。
「でしょう!?先日も大事な相手に送りたいと買い求めた方がいるぐらい・・・」
言うと若い男の纏う雰囲気が急に変わった。
「それって小さな子供じゃなかった?」
「へ?何で知って・・・」
にたり、笑んで、告げる。
「あぁ、あぁ・・・やっと見つけた・・・ずっと探してたんだぜ・・・?」
うちの弁丸様を泣かせたやつ・・・
あんたかよと追い詰められ壁に押さえつけられ男は息を飲んだ。
「な、何の事・・・」
「しらを切っても無駄だよ。これを持ってるのが何よりの証拠だ」
通りの側に笠を傾け、それに隠れる様に首を絞めて男は目の前に小さな袋を掲げて見せた。
いつの間にか探られてた懐の小袋は、先日のかもからせしめた金子袋だ。
「六文銭の柄に俺様が糸で縫い付けた名前。俺様の主の持ち物を、な~んであんたが持ってるのかな?」
袋の柄を男はただの銭の柄かと思っていたが違っていた。
綺麗に並んだそれは六つだけ。
それだけなら分からないが、それを手に入れた上田と言う地と六文銭。
おまけに袋の裏に小さく縫われていた“弁丸”の名前。
まさか、あの子供は・・・
男はハッと息を飲む。
「まあ、今更気付いても遅いけどね・・・」
告げる男の声は恐ろしいぐらいに冷たい物だった。
闇が身体を這い上る。
いや己が闇に沈んでいるのか?
もはやどちらか分からない。
「ひ、た、助け・・・」
男が上げた悲鳴は闇に呑まれ、やがては声のみならずその存在ごと沈み消えていったのだった。
とぷんとやみが完全に男を飲み込み消え去ったのを見て佐助はやっと終わったと息を吐いた。
パンパンと手を叩いて埃を払う。
すると不意に背後から声がかかった。
「終わったのか」
「あぁ、うん。終わったよ。悪いね、騒がせて」
振り返り答えた先は金色の髪を靡かせる美しいくのいちだ。
佐助同様主に心酔する彼女は佐助の言葉に否定もせず全くだと頷き憤って見せた。
「謙信様の治める地で面倒を起こすなんて、お前は・・・」
「よいのです、かすが・・・あくじをはたらくおとこがこのちにあしをふみいれたというならわたくしたちもだまってはおれません・・・」
そんな彼女を止めたのは件の主だ。
まあ確かに自領に入り込んだ悪人を排除したのだから向こう側にも利はあると言うものだ。
それにとこの地の領主は続ける。
「しかもそのおとこがおさなきとらをおとしめたというのであれば、わたくしにとってもゆゆしきこと・・・」
「謙信様・・・その様な勿体無いお言葉・・・!」
「何でお前が勿体無さがるんだよ・・・」
二人の会話。
口を挟むべきではないと思いつつ、己が主への言葉を何故か受け取るかすがに思わず突っ込みを入れればやはりと言うか何と言うか、目を吊り上げた彼女に怒鳴られた。
「煩い!男の情報をやっただけ感謝するんだな!」
「へいへい。それについてはほんと感謝してますって」
あの日、早々に上田を離れ男が越後の方面に向かったと言う情報を聞いた佐助が直ぐに協力を願い出たのがかすがだった。
佐助としては自ら他国だろうが何だろうが這いまわって探し出してやりたいところであったが未だ落ち込む弁丸を一人放っておく訳にもいかず。
悩んだ末に出した答えがかすがの協力だった。
上杉の領主である謙信も弁丸の事は存外可愛がっている様で、頼めば直ぐに了承してくれた。
おかげで佐助は自国で弁丸様を慰めつつ、早急に彼を泣かせた輩を見つける事が出来た訳で。
ほんと、さっさと消したかったから助かったとにたりと笑む佐助に再びかすがの怒鳴り声が響いた。
「謙信様のお傍で嫌な気を撒き散らすな!」
「おっと失礼」
直ぐに気は散らしたが、しかし流石軍神と呼ばれ彼の武田信玄とやり合う御仁は佐助の闇の気配だけでは特段気にもならない様で。
「ふふっ・・・そなたはほんとうにおさなきとらをたいせつにしているのですね・・・」
微笑ましいと、改めて言われた言葉は妙に照れくさくて佐助は思わず視線を逸らす。
「あー・・・まあ・・・えーと、じゃあ、目的は達したんで俺様はこれで退散しますよ」
お騒がせしましたと頭を一つ下げれば謙信は頷き。
「こんどはふたりでおいでなさい・・・おいしいかんみをよういしておきましょう・・・」
そんな事を言うので。
一応敵国になるんじゃなかったっけと思いながらも佐助も分かりましたと頷いてから今度こそ闇に消えた。
そうして戻った上田でいつもの様に弁丸に迎えられ、越後へのお使いのついでにこれを預かったのだと件の袋を渡した時の弁丸の喜びようはなかった。
お金はもう諦めていたものの、どうしても袋が諦めきれず佐助に頼み城下に連れていってもらった際にはこっそり男を探していたぐらいだと聞いて佐助は驚く。
キョロキョロと辺りを見廻し男を探しているのだろうことは予想していたが、まさかこの袋が目的だったとは。
佐助が名前を入れてくれた物だから、大切だったので嬉しいと抱き締める弁丸は、一通り喜んだ後に当然の疑問をぶつけてきた。
どうして佐助がこれを持っているのか、誰から預かったのかと。
「あぁ、なんか越後で悪い商売してた男が捕まったらしくてね。そいつが持ってたらしいんだけど・・・」
弁丸の疑問を予め予測していた佐助は考えてあった物語を語る。
「そいつの荷物が領主の軍神の所にいってね、六文銭に弁丸様の名前まで入ってたからって、知らせてくれたんだよ」
「何と!上杉殿が・・・!これは、後日お礼に行かねば!」
満面の笑顔で意気込む弁丸に、これは思いの外早く約束は果たされそうだなと佐助は笑う。
――と、のんびり思っていたら。
「今度こそ一人で立派に果たして見せるぞ!」
まさかの越後行きをはじめてのおつかいのリベンジにとしようとするので。
「いや、いきなり距離伸びすぎでしょ!」
幾らなんでも越後までなんて無理無理大人だって厳しいし大人になってもさせられないからと佐助は大慌てで止める事となり。
何とか諦めさせるべく、後日早々に近場の城下で済ませてしまおうとひとりでのおつかいの再挑戦が実行される事となったのだった。
勿論、遠くから忍の見守り付きで。
昌幸は甘すぎないかと苦笑していたが、その割に家族皆でと弁丸が笑顔で団子を買って帰ってきた時には異様に喜び弁丸を褒め称えていたので佐助は何だかなぁと天を仰いだ。
団子は当然の如く数には佐助の分も含まれていて、それにちょっと泣きそうになった事は秘密である。
終
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プロフィール
HN:
早和
性別:
非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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