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七夕にあてて。
ツイッターで呟いたネタを突発的に。
武田の七夕的日常です。










・戦国
・真田主従
・武田軍の七夕的日常






【真田主従】雨降り槍降り




武田では毎年七月七日に執り行われる行事がある。
それは大将である信玄の号令で始まる。

「これより、武田式七夕を執り行う!」





七夕と言えば勿論あれだ。
笹の葉に願い事を書いた短冊を飾ると言う昔からの習わし。
しかしそれに武田式がつくと一気に体育会系になる。

武田式七夕のルールは簡単。
国で最も大きく、また流れも速い川を泳いで渡りきれば挑戦は成功ととなる。
天の川を挟んだ織姫と彦星の昔話を元にして考え出されたらしいが、泳いで渡るのなら年に一度である必要性がないのではと佐助がこっそり思ったのは秘密である。

ともあれそう言った形式に則り執り行われるこの行事。
成功したものには当然ながら褒美がある。
金一封とお館様からの熱い拳だ。
前者はともかく後者はそんなの喜ぶのはうちの旦那くらいだろうと思っていたが、意外や意外。
喜び勇んで希望する参加者は途絶えた事はない。
流石熱血武田軍と言うところか。
佐助にしてはとても信じられないが、まあ本人達が望んでいるならそれもいいかと傍観している。

そう、これに関して佐助は傍観者であった。
普段であれば武田軍の中核として行事ごとには悉く引っ張り出される佐助であるが、こと武田式七夕に関しては何とかそれを免れている。

一つは警護と大会運営の点から。
川を渡れば成功と言うと簡単そうに聞こえるが、舞台となっている川は甲斐国一番の広い川だ。
おまけに信玄が治水を常々考えているだけあり水嵩も多く流れも速い。
その難易度はこれまで成功者無しと言う実績が物語っていた。
つまり、途中で辞退したもの、流された者を回収する役目があり、それを武田及び真田の忍達が担っている。
佐助はその総監督と言う事で指示を出す立場にあった。

そしてもう一つは変な所だけ元となった言い伝えを忠実にしたこの催しは、対岸に対となる相手を置きその者の元へ向かって泳ぐと言う決まりがある。
基本的には家族や恋人、仲間などが選ばれるが、幸村に対を頼まれた佐助は対岸で幸村が泳ぎ切るのを見守り応援すると言う役割が課せられていた。

と言う事で今年も佐助は対岸にて遥か遠くで着物を脱ぎ捨てている幸村を見守っていた。
過去参加者の中では最も進んでいるもののそれでもまだ成功に至っていない幸村は、今年こそはと鼻息も荒く準備運動をしているようだ。



そして信玄の号令と、まるで合戦かと言いたくなるようなほら貝の音でいよいよ武田式七夕が幕を開けた。
皆が一斉に川に飛び込み水しぶきがあがる。
その冷たさに初参加と思われるものが即座に岸に出戻るのは毎年恒例の事で。
悲鳴をあげながら岸に上がる若者達を皆は微笑ましく見守った。
文月とは言え信濃は日の本の内ではまだそう気温が高くなく、特に山からの水が流れ込むこの川の水温は水遊びをするには些か適していないのだ。
それを知っている者達は皆声援を受けながら黙々と泳いでいく。
しかし、まだ明けきらぬ梅雨の雨水で嵩を更に増している川は、四分の一も過ぎれば次々と脱落者が出て来る。
佐助ら忍隊も次第に忙しくなってくる。

対象を冷静に救援回収に向かわせながら、しかし佐助が見ているのは幸村だけだった。
まあ、対ですし、応援しなきゃいけない立場だし。
誰にともなく心内で呟きながら四分の三程度まで来た幸村を、記録更新を褒め称えながら待っている。
若干疲労は見えるもののまだ泳ぐ身体は崩れていない。
これは本当に今年は成功しちゃうかも?
金一封と、そして何より幸村の喜ぶ姿を思い浮かべ佐助はひそりと期待に胸を膨らませた。
――が。
そんな風に佐助が考えていた矢先、それを阻むかの様に上流から流木が流れて来るのを佐助は見つけてしまった。
ぶつかれば命も危うい、と言う様な大きさではないが、確実に体制を崩すであろう程のそれが何とも嫌な事に幸村の進んでいる方角へと丁度狙ったかのように流れていく。

「旦那、横!横!!」

佐助は慌てて叫んだが泳ぐのに夢中の幸村には聞こえていない様だった。
それはそうだ。
夢中でなければ佐助が声を掛けずとも幸村なら己に向かう障害物など気付いていた筈だ。
斯くして予見した通りそれは幸村に直撃した。
幸村は思わぬ事態に息継ぎに失敗し、水を飲んだのか体制を崩して水面の下に沈んだ。

「旦那!!」

チッ、と短く舌打ちした佐助は烏を呼び出し幸村の元へと自ら向かう。
おお、と周りから歓声があがったが、そんなのを気にしている余裕はなかった。
そして川の中央でもがく様に水面を叩く手を引っ張り上げてそのまま対岸まで幸村を運ぶ。

「さ…なっ、にが…」
「流木にぶつかったんだよ。ほら、ゆっくり息して」

幸い、幸村は少し水を飲んだだけらしく咽ながらもしっかりと会話は出来る様だった。
それに安堵して、背中を擦りながら幸村の呼吸が落ち着くのを待っていると、急に二人のいる場所に影が差す。
見上げれば信玄がそこにおり、流石に愛弟子の事故に心配で様子を見に来たのかと思ったが。

「佐助!幸村!失格じゃあああ!!!」

精進が足りぬわと声を上げる師と項垂れる弟に佐助は呆れて溜息を吐いたのだった。











武田式七夕、今年も成功者無し。
但し、幸村は副将のお館様からの拳だけ貰えた模様。
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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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