愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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結婚式に出席して以来久しく会っていなかった友人の家に遊びに行ったのですが、久しぶりに会ったら子供もお腹に居て幸せそうで。
こっちまで幸せな気持ちになっちゃいました!(*´ω`)~*
おかげで帰り道は佐女幸で幸せ家族計画余裕でした!(笑)
女幸ちゃんだと、佐助が過保護に拍車がかかるのがいいと思います。
そんで、大事過ぎてヘタレになるのとかいいですね!
・佐幸
・現代
・女体化
【幸せの降る場所】
その事を告げた時、彼はとても変な顔をした。
無表情の中に困惑と悲哀を足したような、そんな表情。
よく見れば目は不安定に揺れ、口元が引き攣っているのを抑えているのか頬が僅かに痙攣している。
明らかに喜んではいないその様子に幸村はむっと口をへの字に曲げた。
「嫌か」
「いや、別に、嫌って訳じゃ・・・」
「お前は肝心な所で嘘が下手になったな」
告げると、目の前の男は気まずげにふいと横を向く。
あれ程鮮やかに嘘や建前を駆使して敵や味方をも欺いていた男がこんな風にあからさまに視線を逸らすなんて。
昔からは考えられない事だなと幸村はぼんやりと考えた。
尤も、それを本人に言えば、昔っからあんたにだけはどうも嘘は吐き通せない事の方が多かったけどね、と否定された所だろうが。
「佐助」
幸村は男の名を呼ぶ。
近づいて、正面に立って顔を見上げる。
じっと見ていると、名を呼ばれた佐助は逡巡の後に漸く幸村を見返して尋ねた。
「・・・嘘じゃ、ないんだ」
「このような嘘、申す筈がなかろう!」
問い掛けに少々憤慨して答える。
嘘でからかったり試したりしているのだと思われたのならば心外だ。
そのまま幸村が佐助の手を取って引き寄せると、手の行く末に気付いた佐助が反射的に引こうとする。
しかしそれを許さずに力づくで引き寄せる。
腹部に手の平を当てさせ、幸村はもう一度言葉を繰り返した。
「ここに、お前のややがおる」
先のやり取りをなぞる様に、佐助がまた変な顔をした。
主従は三世と言う言葉があるが、戦国の世にその関係であった真田幸村と猿飛佐助は生まれ変わってもそれに近しく。
やはり常に傍らにお互いがいると言うような、そんな関係になっていた。
とは言っても世は変わったので、立場は幸村は国内ではそれなりに有名な企業の社長令嬢で、佐助はその社の役員だ。
戦も無いので佐助の仕事は社の運営、経営を助ける事だが、社長自らの特命として幸村の面倒を
見る事も任されているので、佐助が心血を注いでいるのはどちらかと言えば後者である。
一応護衛も兼ねてはいるのだが、幸村自身が相当強いので今の所そのような事態に陥った事は一度も無い。
精々街中で声を掛けて来る変な虫を追い払ったぐらいである。
やはり、社長令嬢とは言え柔道、空手、剣道、諸々武道の有段者を拐かそうとする輩は然う然ういないようで、その点に関しては佐助も幸村の家族も安心した次第だ。
ところで、ここで一つ重要な言葉があるのだが。
幸村を表す言葉である“社長令嬢”。
それの指し示す通り、幸村は今生では女性に生まれ変わっていた。
あれ程女子に対し破廉恥破廉恥と騒がしかった幸村が、まさか自分が女子になろうとは。
周囲は皮肉だどんでん返しだと驚き笑い、暫くは興味本位で見に来る輩が多かった。
しかし、肝心の幸村本人と言えば余り気にはしていないようで。
と言うより頓着していないと言う方が正しいか。
変わらず武道に励み、極め、師である信玄と殴り合いをし。
洋服はズボンを多く着用し、上は男の目を釘付けにするような薄着で平気で出かけようとする。
寧ろ笑った周囲の方がその差を意識してもう少し気にしろと窘める程だ。
そんな男勝りの幸村だが顔はやはり変わらずとてつもなく整って可愛らしいので、前述のように変な虫が寄り付かぬようにと過保護な父兄たっての願いでかなり早い時期から佐助が婚約者として定められ、それもまた前世からとは変わった事と言えた。
そんな婚約者同士である二人なので、子供が出来たとしても関係を考えれば何らおかしい事は無い。
婚前交渉も当たり前の風潮にある今の世だ。
しかも二人は家族承認の下で同棲をしていたりするので尚更だ。
潔癖なきらえのある幸村は少し眉を潜めそうだと思う者も多いが、実は中々手を出そうとしない佐助に痺れを切らして先に仕掛けたのは幸村の方だったりする。
去年のクリスマスの夜に部屋で夜這った佐助に馬乗りになってキスをして、観念しろと先をせがんだのだ。
そうして漸く身も心も夫婦に近しい関係になった二人だが、それからも行為に至ったのは数える程度の回数で。
何を拘っているのか知らないが、佐助は余り性的な意味での触れ合いをしてこない。
その数回の行為もほぼ全て幸村から誘ったものだ。
数少ないそれで子供が出来るとは思っていなかったのか、固まったまま言葉も無い佐助に幸村も思う所があり、押さえていた手を離すと一歩下がって言った。
「そんなに嫌なのなら・・・別に、良い」
離された佐助の手がだらりと身体の脇に落ちる。
「責任を取れと言いたい訳ではないしな」
婚約に対して何の文句も無く受け入れてくれていたから、てっきり今生でも自分に気持ちをもってくれているものとばかり思っていたが。
もしそれがただ命令されたからと言うだけであったのなら幸村もそれ以上を求めるつもりはなかった。
子供の遊びで、大人になれば気が変わると思って婚約を了承したが、子供が出来て急にそれが現実味を帯び尻込んだと言う事もあるだろう。
何しろ、佐助との婚約を望んだのは幸村が最初だが、話を進めたのは父と兄だ。
あの二人に言われて佐助が即座に断れるとも思えない。
「父上達には某から言っておくから、案ずるな。他に好いた者がいるなら・・・」
「そんなの、いる訳・・・」
無いと佐助は言うが、幸村は知っている。
確かに佐助は他人に興味を持たない性質のようだが、前世でも今生でも一人だけ、幸村以外に同じように愛情を持って接する者がいる事を。
そう、かすがだ。
美しく純粋な彼女は昔から佐助の心を掴んで離さない。
そして、それこそ皮肉な事に、女性に生まれ変わった事で幸村は彼女の美しさを改めて認識した。
容姿だけではない。
立ち振る舞いも、慕う人の為に美しくあろうとするその姿勢も、かすがは美しいと思う。
羨んでも幸村には真似できない事だ。
「昔は、国が違った故難しかったかも知れぬが、今はそんな括りも無い。」
かすがを選んでもいいのだ、と幸村は言った。
幸村は佐助がとても好きだが、無理強いをしたい訳ではないのだ。
佐助がかすがを選んだら勿論悲しいけれど。
今なら、佐助の、好いた男の子供を産んで立派に育てると言う目標が出来た今なら大丈夫なような気がした。
よく母は強しと言う言葉を聞くが、こう言う事だろうかと考える。
周囲は片親など余りいい顔はしないかも知れないが、それからも護ってみせると言う気概はある。
そう言えば、この事も父と兄にはちゃんと言っておかねばなるまい。
子が出来たのは自分の方が望んだからだと。
そこまで幸村が考えていると、佐助が逆に幸村の手を取って首を振った。
「俺様が、あんた以外を選ぶ訳がないじゃない・・・」
しかし、そうは言うが相変わらず俯いたままで幸村を見ようとしない。
妊娠に困惑をしているのは幸村の勘違いなどではないだろう。
「ならば何が不満だ!?子が出来たのが嫌か!?」
「不満なんて・・・!」
「だが、喜んではおらぬだろう!」
はっきりしない佐助の態度に少々苛立って、両頬を掴んで少々強引に目を合わさせて幸村は問い詰める。
グキ、とかなり激しい音がしてもそんな事には構っていられないと無視をしたが、顔を合わせてみれば佐助も痛みなど気にしていられるような状態ではないようで。
何だか泣き出しそうな情けない顔をしていたので、怒りを削がれて幸村は押さえる手の力を緩めた。
替わりにそっと指先で頬を撫でる。
「嫌なんかじゃ、ないよ。それに、あんたを捨ててかすがと付き合うなんて事も絶対ない」
かすがの事は確かに大切だがそれは純粋に綺麗なものを見守るような心境で、恋情の類ではないのだと佐助は言った。
それには少し安堵したが、まだ肝心の問いの答えを貰っていない。
そのままひたと視線を合わせて待つと、佐助は観念したように零した。
「わかんないんだよ・・・どうしたらいいか・・・家族なんて、そんなの知らないし・・・」
忍の殆どに親はいない。
佐助も当然そうで、物心ついた時には既に身寄りも無く一人忍の里にいた。
潜入時に真似事で夫婦を演じたりする事はあるが、道具である彼らは基本的には所帯ももたずに一生を終えるので妻も子供も縁が無い。
佐助にとって家族とは、幸村と父と兄や、或いは信玄など。
遠くから眺めるだけの、自分の範囲外のものでしかなかったのだ。
一部からは幸村の母親の様だなどと言われていた事は知っていたが、それはあくまで幸村の面倒を見ていた結果そう見えたと言うだけで佐助にその意図も意識も無い。
幸村との婚約は恋仲の延長のような気がしていたから、急に子供が、家族が出来たなどと言われてもどうしたらいいのか分からないのだと佐助は言った。
「それに、それにさ・・・俺様の子供とか、ちゃんとした人間になれるのかな?血が繋がってるって、事だろ?歪んで、俺様みたいに人殺しになったりとか・・・」
「今生では人など殺してないであろう・・・」
「前世では沢山殺したよ。数え切れないくらいに。そんな奴がさ、父親とか・・・幸せになんかなれないだろ!?てか、あんただって・・・!」
やっぱり手を出すんじゃなかった、と。
佐助は空いた片手で髪を掻き毟る。
それを見て、あぁそう言う事だったのかと幸村は全てに合点がいった気がした。
同時に、打ちひしがれる佐助を馬鹿だなぁと思う。
馬鹿で、悲しく、可哀想で――愛おしい。
「佐助」
幸村は一つ呼吸を整え、凛とした声で佐助の名を呼ばわった。
掻き毟った所為でぼさぼさになった髪を耳に掛けて整え、そのまま顔を引き寄せ額と額を合わせる。
「お前が何を心配しているかは知らぬが、俺はお前と一緒になれて幸せだぞ?」
近くなった視線を合わせてにこりと笑う。
それでもまだ眉根を寄せたままの佐助に、まだ伝わらないのだろうかと思う。
己がどれだけ幸せか。
男の真田幸村として生きた記憶を持ちながら女性として生まれ変わった己は、周りから窘められる程に何も変わらなかったけれど。
それでも女性に生まれて良かったと思えた事が二つほどあった。
それは、佐助と夫婦となれる事と、もう一つが子を成せる体になった事だ。
元より従者としては手に入れていた彼を、夫婦になれば一人の人間としても手に入れる事が出来る。
そして、子を成せれば佐助の血を引くものを後世に残す事が出来るのだ。
他ならぬ自分が。
男として生まれ生きた前世に不満があった訳ではないが、女となった現世ではこんなに嬉しい事はないと思ったのだ。
「人を殺したと言うなら、俺とて同じだ」
「違う!旦那は・・・」
「人殺しに正も悪も無い。場所が何処であれ、方法がどんなものであれ、事実は同じだ」
佐助はよく、自分の忍としてのえげつない方法を疎んじているようだが、殺された者や残された者ににしてみれば場所や方法などに大して違いは無いだろう。
暗殺をする忍も、戦場で首を討ち取る武将も突き詰めれば行為は同じだ。
「だが、その罪を地獄とやらで償い終わったから、こうして生まれ変わったのだろう?ならばいつまでもそんな事を気に病むな!」
きっぱりと言い捨てると、拘っていた事をそんな事呼ばわりされたのが衝撃だったのか、佐助はポカンとした顔で幸村を見た。
珍しい間抜けな顔だなと思うが、先の泣きそうな表情よりは余程いい。
幸村は構わず続ける。
「いい親になる自信など、俺にもないぞ。何しろ自分の子と言うのは初めてだからな」
前世の幸村は結局最期まで妻を娶る事も、側室を迎える事もないままただ戦いの果てに討ち死にをした。
家族を知らない訳ではないが、己の子と言うのは初めてだ。
おまけに今度は性別まで変わって。
更に幸村は母親を生まれて間もないうちに亡くしているので母親と言う者は佐助同様縁遠いものだ。
「自信はない!だが、お前の子と思えば愛しいし、産んで大切にしたいと思うのだぞ?」
ダメかと問うと、佐助は額を合わせたまま首を振る。
また落ちた髪が頬を擽るのに、幸村はふふっと笑いを零した。
「なあ、佐助。主従ならば一方的に支えられることも多くて仕方なしと分かっているが、夫婦とは互いに助け合うものなのだろう?」
ならば双方に自信がなくとも、お互い支え合えば何とかなるだろう。
寧ろそうでありたいと幸村は望むのだ。
自分も佐助に何か与えられる者になりたいと。
言えば、佐助はそうだねと言って泣き笑いのような表情を浮かべる。
少しは気持ちが伝わったのだろうか。
漸く見られたその顔が幸村は嬉しくて、ついと踵を上げると間近の唇に口付けたのだった。
そうして間近に顔を見合わせたまま笑い合っていた二人であったが、やがて佐助が意を決したように今度は自ら手を伸ばしてそっと幸村の腹部に触れてきた。
まだ殆ど膨れはないが、ここに赤子がいるのだと思えば何とも感慨深いようで。
何度か撫でるようにそこを往復するのが少しこそばゆかった。
「まだ一月経っていないから変わらぬだろう?」
「そうね・・・てか、気付くの早かったんだ?」
佐助が尋ねる。
人にもよるのだろうが、大体妊娠に気づくのは1月くらいが多いようだ。
幸村は特にそう言った事には鈍そうだし、もっと気付くのは遅いタイプと佐助は思っていたらしい。
失礼な話なのだが。
「ここ数日、妙に身体が怠くてな・・・それで・・・」
加えて月のものも少し遅れていたので念の為にと検査薬を買ってみた。
元々健康的な幸村はこれまで月のものもほぼ定期が崩れた事はなかった。
その為もしかしてと言う気持ちだったのだが、実際検査してみたら陽性だったと言うのが発覚が速かった理由である。
しかし、その理由を聞いた佐助は何故だか急に蒼白になった。
「具合・・・悪かったの・・・?」
「ん?あ、ああ、少しな。と言ってもちょっと熱っぽい程度で・・・」
「熱!?熱あるのに何であんたそんなに薄着してんの!?」
てか、何で俺様気付かなかったんだと佐助は先ほどとは違う様子で打ちひしがれ始めた。
その態度の急変に幸村は戸惑うしかない。
薄着と言うのも、確かにブラウス一枚と言うのはこの時期にしてはそう言うかも知れないが、室内なのだから構わないだろうと思うのだ。
思うのだが佐助は納得しなかったようで、自分の羽織っていたカーディガンを慌てて着せて、それでも足りないと思ったのか何処からか半纏を持ち出して幸村に被せる。
微熱の上に元の平熱が高い幸村にはかなり暑いのだが、脱ぐことを断固として佐助は認めようとはしなかった。
「佐助、これは・・・」
「暑くても脱いじゃだめだからね!てか、今日もう用事ないなら寝てなさい!」
「いや、だが、父上や兄上にも報告を・・・」
「それは体調が良くなってからでいいでしょ」
「体調って・・・風邪や病気ではないのだから・・・」
こんなやり取りを暫く繰り返したが、どんなに言っても聞こうとしないので幸村は今日のところはと諦める事にした。
祝い事なので早くに報告した方がいいかと思ったが、一日くらい遅れたところでそう変わりはすまい。
それよりも、この佐助の変わり様と言うか慌て様が嬉しいやら面映ゆいやらで。
こんな珍しい事は滅多にあるまいと、幸村は堪能する事にしたのだった。
そんな日々が十月十日続き、更に赤ん坊が生まれた後も延々続く事を幸村はまだ知りもしない。
終
幸村(19歳)・・・短大生。もうすぐの2月の二十歳の誕生日に入籍、卒業式後に結婚式を予定していた。が、妊娠発覚で予定が早まるかも知れない。
佐助(26歳)・・・信玄、昌幸父、信幸兄に反対されないのは有難いが、温かい目で見られるのがどうにも照れくさい。
こんな感じでした。
クリスマスの話もその内書けたらいいな。
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プロフィール
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早和
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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