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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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前にツイッタで吐き出したネタです。
元々書きたかったのは後半部分でした。
いつも以上に好き勝手に書き散らかしているのでかなり読み辛いかと・・・(汗)
あと、基準が分からなかったのですが、グロっぽい描写もありますので苦手な方はご注意下さい。











・戦国~
・佐幸
・微グロ










世界が壊れる音がした・・・





【繰糸の先】





お互い、初めから生き残る事は考えていなかった。
大阪、夏の陣。
主立った将は既に亡く、寄り集まった浪人達が、堀すら失った最後の城での攻防戦。
守るは性にあらずと最後の特攻をかけた真田隊の、数は僅か三千で。
対する徳川は十五万。
負ける気で挑む訳ではないけれど、それと現実を見る事は別だ。
状況と戦力を鑑みれば、西が東に勝つ事はほぼ無いに等しいと。
それは誰の目から見ても明らかだった。
ならば後はどれだけ東方の将を討ち取れるか。
出来れば総大将である家康を。
幸村が望むのはそれだけで。
その忍である佐助が望むのは、出来る限り幸村を長く生かす事だ。
それ以外にはない。
その気迫が相手方を慄かせたのか、真田隊は己らを遥かに上回る数の松平隊を撃破し徳川本隊まで差し迫りはしたものの、あと一歩で届かず、本体を後退させるに留まり、その過程で幸村は銃弾を受けて負傷した。
腹に命中したその傷は深く、即死には至らなかったものの出血は止まらない。
患部もすがらもきつく縛っても生を運ぶその赤を止める事は叶わず。
それが致命傷である事は確実だった。



「さ・・・すけ・・・」

冷たくなっていく身体とは裏腹に、熱い息を一つ吐き出した主が小さく忍の名を呼ぶ。
その声は喘鳴に紛れて聞き取り辛い。
しかし、佐助にはしっかりと届いた。
佐助が幸村の声を聞き違える事はない。
否、音とさえならずとも幸村の言葉ならば佐助は聞き逃しはしなかった。

「はいよ」

なるべくいつもの調子に聞こえるよう、軽く返事をすると幸村が僅かに笑う。
本当は喋らせない方が良いのだろうが、きっと言っても聞かないだろう。

「俺は・・・ここまでの、ようだ・・・もう、腕もよう上がらぬ・・・」
「・・・うん」
「徳川殿に、いま一歩・・・届かなかったこと、は、口惜しく思うが・・・」
「あんたは、よくやったよ・・・」

実際、地方の一豪族の次男坊でしかなかった主が、城を任され、国を任され、天下二分の大戦で大局を任されるまでに至ったのだ。
甘ったれた子供の頃からずっと見守って来た佐助にとっては感慨深い成長ぶりだ。
言うと滅多になく佐助に褒められた事に驚いたのか、幸村は一度目を大きく開き、それから閉じる。
そして口元に笑みを浮かべ、続ける。

「悔いは、ない・・・だが、佐助。お前は・・・まだ、動ける、な・・・?」

満足そうに。
本当に悔いの残らぬ顔で。
聞くから、佐助は嫌な予感を先んじて封じる。

「ここまできて、お前は逃げろとかはやめてよ。そんなの、する訳がないんだから」

もっと前の段階で、幸村も共にと言うならばともかく。
ここで瀕死の主を置いて逃げるなどと言う選択肢は佐助にとっては有り得ない。
まさかとは思うが先手を取れば、幸村は馬鹿者と言って笑った。

「今更そんな事を言う程、俺は、人でなしでは、ない、ぞ・・・」

幸村は己の忍達が既に己以外の元にはいられない事を知っていた。
心を持った忍など、他ではもう仕える事など出来ない。
分かっていて、それでも望んでそうさせてしまったのは紛れもない自分で。
だから責任は取るつもりだ。
九度山を降りる夜に最後まで共にと言ってくれた佐助を含む忍達の思いを、幸村は裏切るつもりはない。
そうではなく、と幸村は言う。

「まだ、身体が動くのであれ、ば・・・己が力、真田忍隊の長たる猿飛佐助の力・・・存分に見せつけて参れ」

まだ東軍兵も将も残っている。
自分はもう動けないけれど、その替わりに。

「佐助・・・」

幸村が名を呼んだ。
指先がぴくりと動く。
きっと腕を持ち上げたいのだろうと思ってその手を取ると、それは正しかったのだろう。
幸村が微笑む。
そのまま己の頬に冷たくなった手を当てると、僅かに動いた指先が力無く、しかし愛し気に数度頬を撫でた。

「お前は、俺には過ぎた忍であった、な・・・」

そんな事は無い、と。
言いたいけれど言葉にはならなかった。

「お前ほどの忍を、俺は・・・他に知らぬ。お前は俺の誇りだ・・・」

喉が詰まる。
返す言葉は、無い。
ただ一言も、一音たりとも聞き逃す事の無いよう、耳を澄ます。

「故に、その力、最後まで敵方に見せつけて来よ」

己の忍がどれ程凄いか。
見せびらかさせろと笑う主は頑是ない子供のよう。
そう言えば、子供の頃にも彼方此方連れ回されては周囲に自分の忍だと触れ回られたものだっけと佐助は過ぎし日を思い返した。
家臣にも城下にも顔を知られてしまい、忍ぶのが仕事の自分としてはよく頭を悩ませたものだ。
元服してもその癖は変わらず。
その頃には己ももう諦めてはいたけれど。
この人、こういう所は変わらないなぁ、と。
思えば先とは正反対の意味で感慨を覚える。

「そうだね。あんたの忍の力、見せつけてやりますよ」

言葉には出来ないけれど、自分の方こそ幸村は誇りであった。
否、違う。
己が幸村の忍である事が誇りであったのだ。
“あんたの忍”と言える事がどれだけ己に歓喜を齎すか、きっとこの人は知りもしないのだろう。
己が力を示す事が主の名を更に高めせしめんとするならば、否やはないと佐助は立ち上がった。
あぁ、けれど。
佐助は思い出して振り返る。

「ちゃんと俺様が戻るまで待ってて下さいよ。勝手にここ離れてどっか行ったりしないでよね」

まさかその傷で動いたりはしないだろうけれど、出来ないだろうけれど、念の為。
子供に留守居を言いつけるかのような口調で念を押せば、幸村は分かっていると素直に頷く。
だからそれを信用して。
戦場からは離れた山奥の小さな崩れた廃寺の、そこはとても分かり難い場所であるが――逃げる為に態とそう言う所を選んだのだから仕方ない――。
忍の自分が場所を忘れる事は無いから、幸村がここを動かなければ平気だろうと決めつけ。
佐助は一人戦場へと駆け戻った。
真田忍隊が長、猿飛佐助、いざ、忍参る。
俺様に倒されたい奴寄っといで、なんて。
態と声高らかに名乗りを上げてみたりして。
一介の忍でしかない自分が、だ。
しかし、事ある毎に、敵にも味方にも己を腹心と触れ回ってくれた主のおかげで名の売れまくった自分はこうすれば敵が群がる。
蹴散らせば力を見せつけるに手っ取り早いのだから、利用しない手は無いだろう。
出来得る限り多くの敵将を。
叶うのならば徳川や本多あたりでもと。
佐助は愛器の鎖をじゃらりと遊ばせ、戦場を駆った。



そうしてどれだけ敵方の命を狩ったか。
徳川本多とはいかないまでも、片手で足りない徳川の将を討ち取り、数え切れない兵を屠って。
その影を見るだけで畏怖し雑兵が逃げ惑うようになった頃に、佐助は漸く戦場を後にした。
二つあるものは一つでも事足りる。
それより戦果をと、片耳と片腕を失って。
脚はまだ共に残っていたけれど、幸村の元に戻るのに必要だから残した。
目も、おかえりと笑ってくれる主の笑顔を見なくては。
片方でも見れない事はないけれど、何処かの忌々しい竜と同じになるのが嫌だったからそこは死守した。
影に潜って後を追わせず。
主を待たせる廃寺の近くに這い出て忍び寄る。
あぁ、やっと終わった、戻ったのだと安堵にも似た思いで足を踏み入れ。
しかしその気配の違いに佐助はハッとする。
元より彼方此方壁も扉も崩れていたけれど、離れた時から明らかに人の手の加わったような不穏な空気。
まさか、そんなと焦って踏み入り、その中が伽藍堂である事に呆然とした。

「だん、な・・・?」

無意識の呼びかけは、昔からの呼び慣れたものだった。
もう一国の将でもないのだからと称を捨て、それでも自分の主を誇る意味でもこの呼び名は変わらなかった。
幸村も、大将と呼ばれるよりもこちらの呼び名を好む様で、戻してからは酷く嬉しそうにしていたものだ。
けれども今、そんな呼びかけに返る言葉は無い。
板張りの床には一面に土足の跡と、散らばる血で固まった泥。
そこに無い主の姿は己の意志で消えたのではなく、何者かの手によって連れ出されたのである事は火を見るよりも明らかだった。
直ぐ様踵を返して佐助は外を探る。
どうして主の傍を離れたりしたのか。
影の一人もつけず。
きっと己も相当に極限の状態で、冷静な判断を下せていなかったのだ。
確かにここは人も立ち入らぬ山奥で、誰かに見つかる事は無かったかもしれないけれど。
あくまでそれは常の時であれば、だ。
徳川を追い詰めた真田幸村を追って探して分け入れば、見つからない事は無いというのに。
後悔ばかりが胸を突いて、当所も無く佐助は幸村の姿を探す。
大声で名を呼んで。
敵が傍にいれば直ぐ様見つかっただろうけれど、今更そんなのは関係ない。
寧ろそれで幸村を連れ去った輩が戻ってくれば僥倖だと思った。
そう思って、探し続けて。
残念ながらその思惑は外れたけれど。
探していた人はややもせずに見つかった。
廃寺から下に向かう山奥の木々の中。
ぽつんと茂みの前に横たわる赤と白の、白い部分が殆ど見えなくなった汚れた装束。

「だ・・・」

ひゅっ、と息が詰まって言葉は続かなかった。
仰向けの、上半身が茂みに隠されたそれに恐る恐る近づいて、脇にそっと跪く。
びちゃりと水音がして足元が滑る。
彼の身体は赤い泥濘に沈んでいた。
傷口が開いたのだろうか。
あんなにもきつく結んだと言うのに。
じわじわと佐助の装束にも染み込んで濡れるのにも構わず、へたりと上に座り込む。
残った片手を地に付くと、爪先まで赤く染まった。

「旦那・・・だ・・・な・・・」

汚れたままの手で佐助は倒れて動かない身体を揺さぶった。
ガサガサと茂みが音を立てる。
それ以外の音は返らない。
しかし、それでも佐助は言葉をかけ続けた。

「遅くなって、ごめんね・・・ほら、もう戻ったから・・・」

旦那も戻ろう?
いつまでもこんな所にいないでさ。
佐助は幸村に呼びかけた。
どこか人のいない静かな場所でゆっくりと共に最後の時を過ごそう。
佐助は思い描く。
何処が良いだろうか。
やはり二人で長い時を過ごした上田の地か。
城は当然の如く既にほかの将の手に渡っているが、国端の山奥ぐらいならばきっと大丈夫だろう。

「あんたの言った通り、目いっぱい暴れて来たんだから・・・」

褒めてよね、と厚かましくも。
けれどきっと幸村は望む通りの言葉をくれるだろう。
流石俺の忍、と。

「ねぇ、旦那・・・」

いつまでも返らない応えに焦れて抱き起こそうと背を抱くと、肩が茂みに掛かって木が揺れる。
耳障りな音。
邪魔だなぁと枝を押しのけ、佐助はそのまま幸村の身体を起こさせた。
そんなに力を込めたつもりはなかった。
ただ、普通に起こしただけ。
しかしその力は思いもかけず勢いを余らせ、ガクンと身体が前に倒れた。
その軽さ。
人の頭がとても重いのだと言う事は昔から知っていた。
忍として人体の造りは徹底的に仕込まれたし、その昔に弁丸を抱き上げた際にもこてんと預けられたそれは佐助の肩に温かく重かった。
歩き始めたばかりの頃は、上を見上げた際にその重さに弁丸が後ろに倒れそうになるのを慌てて支えたりもしたものだ
成長してからも怪我の手当てや稀に病に罹って看病する際、こんな風に背を押して抱き起こせば
 頭だけ重くて首から後ろに反ったままだった――のに。
それが、今は――無い。
丸くて重くて美しくも可愛らしい主の顔の、 く び が ――。

「――ッ」

軽さに勢いよく前に倒れたそれは、辺りに溜っていた血を撒き散らせて佐助の頬にもビタビタと当たる。
暫く時間が経つのか、もう新しく噴き出す様子は無かったけれど。
剥き出しになった赤い肉と白い骨。
そっと指を伸ばして触れたそこはまだ僅かに温かかった。
その温もりを逃さぬようにぎゅうと掻き抱く。
元よりお互い生き残る事は考えていなかった。
場合によっては討ち取られる事も覚悟していた。
しかしそれは、戦場で、闘いの過程での事だと思っていた。
まさか、こんな・・・
戦場でも何でもない只場所で、動けなくなった上でこんな形でなんて。
あんまりではないか。
あぁ、と。
主の亡骸を抱いた己の喉から漏れるのは獣のような唸り声だった。
首を斬られる前、主はどんな思いだったのだろうか。
きっと残る力の限りで抵抗したのだろう。
装束は乱れ、今は血溜りに落ちて見えない手も、指先は爪が剥がれ落ちているようだった。
ここに至るまでの地面には、彼方此方に十本の線があった。
引きずられて、それでもこの場を離れまいと地面に噛り付いたのだろうとは直ぐに分かった。
そうして最後には、焦れて頭だけをと切り離され奪われた。
武人として生きる幸村には、もしかしたらそんな風に抵抗する事は恥と感じる事だったかも知れない。
彼は死を潔しとする人だ。
それでも連れて行かれまいとしたのは佐助を待っていたから。
そんな目に遭わせた自分が不甲斐ない。

山間に陽が落ちて、辺りが徐々に暗闇に包まれ出す。
遥か遠くに城が燃える炎の光源だけが赤々と。
どこか不気味に平地の戦場までをも照らしていた。
その光と篝火に照らされながら、東軍の兵達は勝利を告げる勝鬨を上げて天下泰平だ徳川の世だと騒いでいたが、佐助にはもはやその音は届かない聞こえない。
既に光を失い闇の中では五感は麻痺し、己が人の形をしているのかさえ分からなかった。
けれど、姿形などもうどうでもいい。
例え怨念の塊と成り果てようとも。
ただ、取り戻さなければと。
迎えに行かなければと。
思うのはそれだけだ。
広がる闇を纏い、佐助はふらりと木々の合間を歩みだす。
主の身体は大切に抱いて。
もうこれ以上奪われないようにと。
ゆらり揺れる影は幽鬼の様で、見た者は皆佐助を鬼だ化け物だと呼んで悲鳴を上げた。
もう音も届かないかと思われた闇の中だけれど、その叫びだけは何故かよく聞こえて。
紅蓮の鬼と呼ばれた主の影にはぴったりの呼び名かも知れないと、佐助は薄暗く笑う。
歩みは止まらない。
主の首を取り返すまでは、決して。

彷徨う佐助の記憶はそこで途切れて後の事は知るべくもない。










































時は移り、現代の話である。



真田幸村は落ちていた眠りの縁からゆっくりと意識を浮上させ、ぼんやりと重たい瞼を上げた。
辺りは暗く、夜明けの気配はまだ遠い。
何故こんな時間に目が覚めたのだろうと不思議に思い、身動こうとして出来ない息苦しさにその原因を悟る。
背後から絡みつくように己を拘束する人の腕。
触れれば更にぎゅうと抱きしめられて痛い程。

「佐助・・・?」

幸村は顔だけを振り返らせて、己を抱く恋人の名を呼んだ。
どうやらこちらも起きているらしい。
佐助が幸村をその腕に抱いて眠るのはいつもの事だが、こんな風に縋るように抱き締められるのは稀な事で。
それは佐助の気持ちが不安定になっている時だ。
原因は様々で、そうなるのは圧倒的に夏が多いが秋冬春も皆無ではない。
  
「何だ、眠れぬのか?」
「ん・・・」

尋ねると、佐助はあいまいな返事だけを寄越してまたぎゅうと幸村を抱き締めた。
首筋に顔を埋め、ぐりぐりと擦り付けてくる。
くすぐったさに肩を竦めればそれを嫌がっていると取ったのか、咎めるように首筋に歯を立てられた。
そしてそのまま軽く食まれる。

「・・・んっ」

繰り返される柔らかな愛撫に、思わず鼻にかかったような声が零れて恥ずかしい。
しかし、今のところ性的な気配は 見えないが、意図が何であれ弱い個所に触れられれば徐々に腰に重ったるい熱が溜っていくのは致し方の無い事である。

「さ、すけ・・・擽ったい・・・!」

本当はそれだけではないけれど。
刺激にぞくぞくと背筋を反らし、止めるよう訴えるが佐助は聞く様子を見せなかった。
寧ろ酷くなったように角度を変えては至る所に口付けようとしてくる。

「あっ、お前・・・また・・・!」

そればかりか、その内強く吸われる気配に幸村は焦った声を上げた。
今のは絶対に痕が付いた筈だ。
服で隠れない所は止めてくれといつも言っているのに。
佐助は聞いてくれた試しがない。
せめて肩や腕ならばまだ誤魔化しようもあるのだが、首ではどうしようもない。
佐助とてそれは分かっているだろうに、何故か他のどの場所よりも首にばかり固執する。
――否、何故か、ではない。
理由は何となくなら分かっている。
恐らく前世の幸村の最期に起因しているのだろう。
首を斬られ奪われ死んだ幸村の・・・
佐助は前世の事は覚えていない。
正確には人や大まかな関係くらいならば覚えているようだが、具体的な行動や出来事までは覚えていないようだった。
幸村との事は他に比べれば覚えている事柄は多いようだが、それでもどれだけの時をどんなふうに過ごしたか。
その記憶は断片的なものらしい。
周囲にいる前世に関わりある人達も、皆記憶については有無もその程度も様々だ。
今生の如く事細かに記憶している者もいれば、全く覚えていない者もいる。
幸村は前者で、佐助は後者からの幸村に出会ってから徐々に思い出して行ったタイプであった――付け加えて言うならば、幸村と佐助の出会いは中学生の時で、佐助が前世を思い出したのは出会って暫くしての事だった――。
そんな佐助は当然幸村の最期も覚えてはいない。
だと言うのに、無意識のうちにこんな行動を取る様子が憐れで哀しい。
きれいさっぱり忘れてしまえばいいのに。
忘れていいのに。
それだけ、あの出来事は佐助の心に大きな傷を残したと言うのならば、申し訳なさが先に立つ。
となれば、困った佐助の行動も本気で止める事など出来よう筈も無く。
咎める言葉は形だけで、溜息と共に掻き消えるばかりだ。

今日もまた、諦めの境地で幸村は肩の力を抜く。
そうする以外に何が出来るだろうか。
腕を伸ばして頭を撫ぜ。
すると安堵したようにほぅと深く息を吐くから何だか堪らなくなってしまう。
もう、本当に、仕方のない。
こうなってしまってはもう幸村に勝ち目はなく。
後はなるに任せるだけだ。
明日からかわれた時の言い訳と、妙な気分になってしまった時の責任は全て佐助に押し付けてしまおう。
そう決めて、幸村は佐助の腕の中でそっと身体を寄せた。















キスマークについては佐助は言い訳はしないし(認めて開き直る)、周りもげんなりして何も聞かないと思う。
責任は勿論喜んで取ります。

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早和
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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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