愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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仔猫のワルツの続きを書いていたのですが、途中で無性に女幸ちゃんが書きたくなりました。
偶にこういう衝動が訪れますww
普通の佐幸も勿論好きですが、女幸ちゃんだと(現代なら尚更)結婚できるのがいいなと思います。
あと、佐助さんは幸村が女の子だったら今以上に過保護になりそうなので、それを想像するのが凄く楽しいです!!
・佐幸
・現代
・女体化
【クロスロード】
時は現代、平成。
人工物で出来たビル群の合間から、昔よりはるかに見える数を減らした星を見上げ男は溜息を吐いた。
また見つける事が出来なかった、と。
人ひとりを見つける事がこんなにも難しいとは、過去の自分は考えもしなかった。
時代が変わり文明が発達して、便利な世の中になる一方で比例するように人や情報が氾濫して本当に必要なものが見つけづらくなってしまった。
天下一の忍と言わせしめた己が何と情けない。
そう己を称してくれた人を思い出して、佐助はまた溜息を零した。
男は名を猿飛佐助と言う。
一般的な家庭に生まれ、学校に通い、卒業をして、今は会社に勤める傍目にはごく普通の一般人だ。
しかし、実際には彼は他とは少し違っていた。
前世の、過去に戦国時代を生き抜いた頃の記憶を、彼は持っているのだ。
前世の記憶など夢物語と言われればそれまでだったかも知れないが、周りに同じような、しかもその前世で縁のあった人物たちに幾人か会ったので、それは勘違いなどではないと実証されていた。
己は猿飛佐助。
紛れも無く、戦国の世を忍として生きた人間だった。
そしてその佐助が前世で仕えていたのは真田幸村と言う人物だった。
彼は佐助が唯一の主と定めた無二の人だ。
替わりなどいない。
失えば気が狂うかも知れない程の存在。
死んでも守ると決めていた。
故に、生涯この人以外に仕える気も無かった。
その証に、武田が傾いた際にも幸村が残ると決めた以上は佐助も枯れた山でも下りる気はないと。
里の呼び戻しの命にも応じず、佐助は傍にあり続けた。
死ぬ間際には、来世でもきっとこの人に仕えようと思った。
そんなお人だ。
主従は三世等とも言うから、 それも叶う筈だと信じて疑わなかったあの時代。
だから佐助は、きっと生まれ変わったら当たり前のように幸村は傍にいるのだろうと思っていた。
しかし、現実はそう甘いものではなかったらしく、今、佐助の傍に真田幸村はいなかった。
前世で自分たちが出会った年になっても現れない。
その事実は、何よりも佐助を打ちのめした。
それでも、周りに知った顔を見つけた事できっとこの世のどこかにはいるのだろうと佐助は探し続けた。
以前と同じ年の差ぐらいの子らで、 幸村ならば絶対に現世でも武道を嗜んでいるだろうと部や大会は徹底的に見に行ったし、他のスポーツの大会も探った。
それでも見つからない時は、基本はそんな風に今でいう体育会系のお人だったが、一応武家の跡取りとして文武両道と 教養も叩き込まれていたから、そちらの方面も探してみた。
けれどやはり何処にもいない。
ひょっとして死んだ時期が同じぐらいだからかと自分と同年代も探してみたけれど結果は変わらず。
そうして気付けば20年近く。
佐助は過去で己が死んだのと近い歳にまでなっていた。
範囲を広めて、休日には遠方にまで赴いて探した。
縁のある地は何処へでも。
上田や松本をはじめとする長野に山梨、新潟、宮城、大阪。
果ては鹿児島まで行ってみたが収穫は無い。
何処まで探せばいい?
もっと下の年頃か、将又上か。
すがらに出会った人物たちは、皆同じような年代で生まれてきているのに?
どうして見つからないのだろう。
本当に幸村は今の世にいるのだろうか。
打ちのめされる度に焦燥が胸を突いて衝動に頭を掻き毟りたくなった。
(もういっそ、この生での再会は諦めて次に向かった方がいいのかな・・・)
大して物は入っていないのに、やたらと重く感じる小さな旅行鞄の持ち手を握り締めて佐助は思う。
何となく人の流れに沿って動かしていた足が、信号で止まる。
それはまるで、今の佐助の心境を表しているかのようだった。
立ち止まってしまえば、すべて終わってしまうのに。
次に向かうと言うのは彼の存在を吹っ切って、今の所為を生きていく――と言う意味では決してない。
佐助にとって幸村を諦めると言う事は断じて有り得ない。
考えもしない事柄だ。
つまりは、己の今生を終わりにすると言う物騒な意味の言葉であるのだが、佐助にとってはそれは冗談でも何でもなくて、至って本気の言葉だ。
幸村がいないのであれば、佐助は生きていく意味も価値も己に見出すことが出来ないのだ。
失えば気が狂うと言ったのは比喩ではない。
ただの事実であった。
信じていた。
きっとまた以前のような日々が過ごせるようになるのだろうと。
何の根拠もないのに。
ただ、そんな日々だけを夢見て今まできたけれど。
(でも、もう限界だ・・・)
信号が青になったのか、周囲の空気が動き始める。
しかし、佐助は立ち止まったまま動くことが出来ずにいた。
脇を不審げな目の人たちが通り過ぎていく。
明らかに邪魔だと言う視線を寄越す人もいたけれど佐助は気にならなかった。
他人などどうでもいい。
全てが心を素通りしていくかのようだった。
――が。
そんな中、向かいからこちらに歩いて来る人物だけが佐助の目に留まった。
信号が点滅し始めているからか、慌てたように小走りに駆けて来る人がいる。
染めたものではない、こげ茶の髪を後ろ髪だけ一房長く伸ばして。
走るたびに左右に揺れるそれを、まるで尻尾の様だと思った感覚が懐かしかった。
すっと通った整った顔に、しかし目だけは幼いように大きくて。
それが佐助を見上げる。
瞬間、切り替わった信号がその人の後ろで赤に光って。
佐助の中で想いが溢れ出る。
彼だ。
真田幸村だ。
こんな所で。
しかし、やっと見つけたと佐助は呆然とした。
そんな意識のまま、彼を昔のように呼ばおうとしたのだが。
「――だ・・・っ」
掠れる声を絞り出そうとしたのに。
それが全て音となる前に、その人は佐助から視線を逸らして脇をすっと通り過ぎてしまった。
まるで、辺りの他人と同じように。
佐助の中で、込み上げた熱いものが一瞬にして凍りつく。
何だ、今のは。
あれは幸村ではなかったのか?
ただのよく似た人物だったのだろうか。
しかし、目が合ったあの瞬間、込み上げた己の感情は、紛れも無くあれが幸村であると言っていた。
ならば、今の反応は?
佐助は混乱していた。
もしかして、覚えていないのか。
自分が出会ったのが皆記憶のある人物だったから考えもしていなかったが、全員が全員前世の記憶を有している保障など言われてみれば何処にも無かった。
寧ろ覚えている方が少数だろう。
幸村も忘れてしまったのだろうか。
己の事を。
あの、共に過ごした日々を。
思えば佐助は足元が崩れるような感覚に陥る。
否、それよりも足元から闇に沈んでいくと言う方が正しいか。
呼吸の仕方も分からなくなる。
ひゅっと喉が空を切る。
信じていた。
きっとまた以前のような日々が過ごせるようになるのだろうと。
何の根拠もないのに。
もう、終わりだと思った。
今度こそ。
もう幸村を探すと言う目的すら自分は失ってしまった。
途方もない虚脱感に何も考えられなくなって、身体がふらりと前方に傾く。
車の行き交う道路に向かって。
余程酷い形相だったのか、隣の人がぎょっとしたような表情になり何か口を開いたようだったが佐助にはその音は聞き取れない。
駅近くの車通りの多いこの道路は、幅も大きいからか皆かなりのスピードを出して目の前を横切っていく。
前髪が煽られてぶわりと後ろに流れる。
そして、足がまた一歩進み、道路上の白線を踏もうかと言う時だった。
瞬間。
「貴殿っ!」
耳を鈴が鳴るような声が通り抜けて、頭の中にワンと響いた。
同時に身体がガクンと後ろに引っ張られる。
「交差点でそのようにぼんやりとしては車に轢かれますぞ!」
引かれた腕が、熱い。
そこから全身に熱が生じる。
まるで急に傍で火を焚かれたよう。
暗闇から一気に覚めるような心地で、佐助は後ろを振り返った。
そこには先ほどすれ違った筈の、見慣れた人が立っている。
「だん、な・・・」
あぁ、と佐助は無性に泣きたいような気持ちになった。
自分の様子がおかしいからと、戻ってきてくれたのだろうか。
記憶も無いのに。
知らない人の為に。
そんな所は変わっていないのにどうして、と思わず佐助は目を瞑る。
どうして覚えていないのか。
しかしその耳に、驚くべき言葉が突き刺さる。
「何だ。お前、覚えているのか?」
――・・・。
一瞬、頭が真っ白になった。
覚えている?
何を?
前世を?
今生では幸村とは今が初対面だ。
「ならば先に申せ!」
だとしたら、覚えていると言うのはそれしか無いのではないか。
「目が合っても素知らぬ顔でぼんやりしておるから、てっきり・・・」
つまりは幸村にも記憶が――
「お前は覚えていないのかと思っ・・・」
(――あるっ!?)
思った瞬間、佐助は幸村の言葉も遮るようにその身体を抱き締めていた。
一瞬、周りがざわついたようにも聞こえたが、関係ない。
幸村が何やら腕の中で騒いでいる事すら今の佐助には関係がなかった。
「旦那、旦那っ・・・」
ただ只管に名前を呼んで、佐助は腕の中のその存在を確かめる。
「旦那、会いたかった・・・」
腕の中で上昇する体温が心地いい。
「やっと見つけた・・・」
絞り出すように告げれば、観念したのか幸村は佐助の胸に顔を埋めるようにして大人しくなる。
小さな手が服を掴み、小さく俺もだ、と声が聞こえる。
それだけで、これまでの空虚が全て満たされる様で。
己は随分と単純だと佐助は抱き締める腕に力を込めながら思った。
けれどそれもどうでもいい。
そうして暫く抱き合って。
ほぅ、と息を深く吐き出すと、幸村が我に返ったように腕の中で暴れ出す。
「と言うか、そろそろ離さぬか!ここは公道だぞ!」
「やだ。恥ずかしいなら俺様に隠れてれば旦那は見えないよ。・・・てか、旦那随分小さくなってない?」
「あ?あぁ、まぁ、一応女子の身体だからな。どうしても体格が男よりは小さいようだ」
日々鍛えてはいるのだが、と言われて改めて幸村を見て佐助は漸く気付いた。
確かに、腕の中の幸村は女の子であった。
まだ未成熟のようだが身体は丸みを帯びてどことなく頼りないような。
白と赤のワンピースから見える身体のラインも昔よりもはるかに細いものだった。
先ほど声が鈴が鳴るようだと感じたのも、それが女性の高く軽やかなものだったからだろう。
幸村だと言うだけで性別を気にしていなかったから先程は全く気付かなかったが。
そして、思えば幸村の存在を探している時もずっと同性ばかりを探していたと気付く。
まさか女性になっていたとは思いもしなかったから。
どうりで見つからなかった訳だと今までの苦労を思えば脱力してしまいそうになる。
まぁ、それも見つかった今となってはどうでもいい事だが。
寧ろ。
「男女なら、別に抱き合ってても変じゃないでしょ」
「そ、そういう問題ではない!人の目のある所で破廉恥だと申しておるのだ!」
「なら、人目が無い所ならいいんだ?」
尋ねると、幸村はボンっと沸騰したように赤くなる。
こう言う所は男でも女でも変わらないのだなと思うと笑いが込み上げて来た。
幸村は返す言葉がないようで、下から恨みがまし気に佐助を睨み上げていた。
赤い顔で女の子となった今ではそんな表情は何の迫力もないのだが。
再会したばかりなのに機嫌を余り損ねても勿体無いと佐助は苦笑してごめんと謝った。
「まぁ、それは冗談だけど。確かにここじゃゆっくり話も出来ないから移動しようか」
何処か店に入ってもいいし、自分の家もここからならばそう遠くない。
どうするかと幸村に問えば、直ぐ様佐助の家が良いと言う答えが返ってくる。
その理由がまた。
「久しぶりにお前の作ったものが食べたい!」
そんなものだったから、佐助は溢れ出そうになる喜びを抑えるのに必死だ。
またこの人の傍で、この人の為に何かが出来るのが嬉しい。
「了解。んじゃ、行きましょうかね」
丁度信号が変わった所で二人は漸く身体を離し、しかし温もりが惜しくて手は繋いだままで歩き出す。
「旦那、何食べたい?」
「団子がいい!」
「それはおやつでしょ。俺様が今言ってるのは食事の話」
「んー・・・ならば肉だな!」
「じゃあ、ちょっとスーパー寄って行こうか」
主従と言う括りが無くなった今の世で、代わりに夫婦と呼ばれるような会話をしながら二人は肩を並べて歩く。
それが佐助の望む通り毎日のように続く事となり。
また、二人の関係も実際そう呼ばれるものとなるのは、もう暫く先の話であった。
終
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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