愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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明日、甲子園に旅立ちます!
台風に向かって行ってきます!!(笑)
その前にちょこっと置いて行くぶつは、偉い時間がかかった割に思ったのとは何だか違う方向へ走ってしまったものとなりました^^;
・佐幸
・戦国
・破廉恥手前
【初春の】
夏も半ばを過ぎ、気の早い秋虫の鳴き声が時折庭に響くだけの静かな夜。
主の閨を訪れた佐助は、表向きは平然と主の正面に座りながらも内心酷く浮かれていた。
表情が無表情なのは意識してそう務めているからだ。
そうしていなければ自然と口元が緩んで今にも笑い出してしまいそうだ。
しかし、その努力ももう暫くもすれば水泡に帰すであろう事は佐助も分かっていた。
だって、目の前に座る幸村が可愛くて仕方が無い。
緊張して己の寝所で何故か礼儀正しく正座をしている幸村が。
きょろきょろと視線を彷徨わせ、時折佐助の様子を伺っては目が合って慌てて下を向く幸村が。
今でさえこのような心境なのだ。
いざことが始まってしまえば表情を取り繕う事など不可能だろう。
そう。
ことが始まってしまえば。
何故佐助が浮かれているかと言えば、その言葉の示す通り二人はこれから初めて褥を共にしようとしているのだった。
主従であった二人が恋仲となったのは、もう半年以上も前の事だった。
言い出したのは幸村の方。
しかし、晩熟な幸村が動けたのはそこまでだったようで、その後の関係は遅々として進まず。
まず手を繋ぐだけで数日を要すると言う有様であった。
何とかそこまでたどり着き、それから抱き締めるまでに一月。
接吻までに更に一月以上。
破廉恥の大声や、時折繰り出される拳を受けながら少しずつ慣らして進んだこれまでの日々は、佐助としては涙失くしては語れない。
そんな日々を乗り越えて今、漸くここまで至る事が出来たのだ。
浮かれるなと言う方が無理な話だ。
しかし、そんな佐助とは対照的に、幸村の方は先ほどから緊張しきりで。
前述の通り閨で正座のままきょどきょどと忙しない動きを繰り返している。
まあ、ただでさえ苦手な事柄の、幼少の頃からずっと傍で見守ってきた佐助は知っているが、幸村には本当に全く初めての経験なのだ。
そりゃあ、緊張もするだろう。
「旦那」
今にも泣き出してしまいそうな表情に流石に申し訳なさが湧いてきて。
少しでも緊張を和らげようと呼びかけた佐助であったが余り効果はなかったらしく、幸村はその声にすら大仰に反応して肩を震わせた。
否、震えると言うより飛び上ると言った方が近いかもしれない。
何だか可哀想な程だった。
「そんな緊張しないで・・・ってのは無理かもしんないけど、怖がらないでよ」
苦笑して告げると、幸村は上ずった声で答える。
「こ、怖がって、など・・・!」
「手、震えてるよ?」
「こ、これは・・・っ!武者震い、だ・・・!」
そんな訳が無いのに。
あくまでそうと言い張る幸村に、佐助は仕方ないなと手を伸ばした。
強く握り過ぎて膝の上で白くなっている拳を、上からそっと己の手のひらで包み込む。
そして、手を繋ぐようにしてその指を開かせる。
いつもは温かな手が、今は佐助と同じかそれ以上に冷たくなっていた。
緊張している証だ。
暖めるように両手を握って、こわばりを解かせるためにまた緩める。
それを何度か繰り返していると、幸村の指先にも熱が戻り、手の力も緩んでくる。
連動するように肩の強張り解けて行くのが見て取れて佐助は安堵した。
怖がらせるのは本意ではないし、トラウマにでもなったらこの先がまた大変だ。
「大丈夫。力抜いて、俺様に任せてくれればいいから」
「うむ・・・」
「初めてでもちゃんと気持ち良くしてあげるし」
額や頬に触れるだけの口付けを落としながら、佐助は緊張を解す為の言葉をかけ続ける。
しかし、途中で不意に幸村の顔が強張ったのに、おや、と思わず動きを止める。
何か変な事を言っただろうか。
「どうかした?」
一度顔を離して覗き込むと、幸村はふいと視線を逸らした。
先ほどと同じ仕草だが、今回のは緊張とは少し違うような感じがした。
緊張と言うよりは、常日頃の喧嘩をした時の態度に似ている。
唇を尖らせたその表情も。
佐助の勘が正しければ、こういう時は幸村の方から話し出すのを待った方がいい。
長年の付き合いで熟知している佐助は、その経験に基づいて幸村の出方を待っていると、暫くの後、幸村が観念したようにぽつりと告げる。
「お前は・・・随分と慣れているのだな」
零れた言葉に佐助は思わず目を瞬かせた。
慣れている、とは閨事に関しての事だろうか。
今この状況では、十中八九そうだろう。
閨事に慣れている?
「そりゃ、まあ・・・」
それはそうだ。
何しろ自分は。
「俺様忍よ?」
いくら本業が戦忍だからとて諜報を全く行わない訳がないし、何より修行の一環に房術は既に含まれている。
閨事に慣れていない忍など皆無と言っていいだろう。
あの軍神一筋のかすがとて例外ではないくらいだ。
「そりゃあもう、女も男も経験も技術も知識も豊富で、初めての時は完全に勃たせない方が痛くないとか・・・」
「そ、そう言う事は言わんでいい!」
軽い口調で態とあからさまな言葉を使うと、幸村は真っ赤になって叫ぶ。
しかし、その後はまた俯いて顔を背けてしまう。
機嫌は直っていないらしい。
まあ、幸村はこう言う事が苦手で潔癖な所があるので不特定多数ととなると不快感があるのかも知れないが。
「仕方ないじゃない。お仕事だし。それに、旦那に痛い思いさせるよりはいいと思うんだけどねぇ」
初めて同士って大変だしね。
へらりと笑って言うと、幸村がキッと睨み付けて来る。
それは、佐助が自分の思いを理解してくれない事に対する苛立ちと、もう一つ。
「侮るな!俺は、お前の仕事についてをとやかく言うつもりは無い!何をしようが、忍としてのお前を誇りに思う気持ちは変わらぬ!」
誇りなどと、大袈裟な。
思いはしても、それは言葉にはならない。
「だから、そんなおかしな顔で笑うな!」
もう一つは、佐助が心の底で感じた己への嫌悪感。
それを察しての事だ。
相変わらず妙な所だけは鋭いよなと感心してしまう。
「おかしな顔って・・・そこそこの男前を捕まえて失礼しちゃうね」
「そこそこではないだろう。佐助は男前だぞ?」
「いや、まあ・・・旦那には負けますよ」
色んな意味で、と。
大きく息を一つ吐いて、佐助はずれた話を元に戻す。
「でも、じゃあ何拗ねてたのさ。おかげで旦那を気持ち良く出来るなら万々歳じゃない?」
「そ、れは・・・っ!」
幸村は言いにくそうにまた俯いてしまったが、佐助が根気よく待っていると、少し逡巡した後に今度は素直に言ってくれた。
その本心は。
「仕事を責める気はないが、好いた者が他の者とと言われれば拗ねたくもなるに決まっておろう」
佐助は再度目を瞬かせた。
幸村が言う、それは所謂悋気と言うものだ。
まさか幸村がそんな事を言うとは。
そんなの想像もしていなかった。
呆然としていると、それにまた機嫌を損ねたらしい幸村が察しの悪い忍だと貶すのだが、今更そんな憎まれ口を叩かれたところで可愛いとしか思えない。
(あ、だめだ・・・)
その瞬間、佐助は頭のどこかで己のそんな声を聞いた気がした。
何がとははっきり言えないが、とにかくダメだと思った。
そして、思った時には既に遅く、身体は咄嗟に動いていた。
衝動的に幸村の腕を引き、褥の上に押し倒す。
褥と言っても床よりはましと言った程度の硬さだ。
衝撃に幸村が顔を顰めたが、その時は背を支えてやらなければと思う事すら出来なかった。
「さ、すけ・・・?」
豹変した佐助の様子に、幸村が恐る恐ると言った様子で呼びかける。
しかし、その僅かに怯えを含んだ瞳すら、今は衝動を煽るものでしかない。
呼びかけに答えぬまま、佐助は幸村に覆いかぶさり口付ける。
そして、呼びかける為に唇が薄く開いていたのをこれ幸いにと舌を忍び込ませて口内を探る。
今ではもう慣れたのか接吻を嫌がる事も無く、また照れる事も少なくなった幸村であったが、いきなりこんな風に噛み付かれるようにされるのは初めてで驚いたのであろう。
ぎゅっと目を閉じ、僅かに震える指で佐助の装束を縋るように掴んだ。
「ん、う・・・」
舌で触れる口内は温かくて柔らかかった。
今更ながら、そこも身体の内側なのだと実感する。
そう、同じ身体の内側の。
思えば堪らなくて、佐助はまるで似せるように丸めて尖らせた舌を口腔に出して入れてと繰り返した。
「ふっ・・・んむっ、く、ふ・・・」
それが疑似行為だなどと幸村は分かっていないであろうが、それでも唇や舌、粘膜を軽く擦られる感覚に背を震わせて喘ぐ。
互いの唾液が混じり合ってたてる濡れた音すら行為のそれに聞こえて、益々佐助の頭は沸騰した。
「はっ・・・さ、ふ・・・」
薄く目を開き、必死に名を呼ぼうとするが舌がもつれて呼びきれていないのがまた可愛い。
堪らなくて思わず軽く唇を噛むと、幸村はビクンと跳ね上がり、また目を閉じてしまった。
同時に瞳から涙がすっと零れて、こめかみを伝って敷布に落ちる。
眼尻に残ったそれを親指で拭って、そのまま指を滑らせて耳殻を揉むと、気持ちがいいのか擽ったいのか、はぁと幸村が熱い息を零すので、その吐息すら飲み込むように佐助は唇すべてを己のもので覆ってしまった。
まるで、本当に幸村を食べているようだとぼんやりと思った。
「ん、むぅ・・・」
体中を血が駆け巡ってドクドクと煩い。
顔が熱くて頭がぼーっとして、同時に腰にも重ったるい熱が蟠る。
この感覚は良く知るもので、しかし初めてのものでもある。
「ん、う・・・んんっ!」
幸村が苦し気に呻いている。
まだまだ息継ぎが下手くそで、何度言っても鼻で呼吸するのを忘れる人だから少し離してやらなければと思うのに、行動が思考を裏切る。
離したくない。
触れたい。
舐めたい。
食べてしまいたい。
衝動に駆られた佐助の手が、帯も解かぬ幸村の寝衣を強引に襟から開こうとした――瞬間。
「んーっ!!」
ドンっ、と息がつまる程の強い力で胸を叩かれて佐助はハッと我に返る。
そしてその一瞬の佐助が呆けた隙に幸村は佐助の身体を剥がしにかかり、両腕で強く押されて佐助は漸く幸村から離れた。
唾液がつっと二人の間を繋ぎ、やがて切れて幸村の首筋に落ちる。
「げほっ!こ、殺す気、か・・・っ!」
咽ながら幸村が訴えるのを佐助はぼんやりと聞いていた。
殺す気、など。
そんな事ある訳がないのに。
しかし、佐助は黙ったまま反論しない。
そう弁明するだけの余裕が今の佐助には無かった。
佐助は混乱していた。
自分は今、何をしていた?
何を考えていた?
否、何も考えずに夢中で幸村に口付けて。
おまけに、下肢で痛む程に熱を持つ正直な身体の反応。
自覚した途端に急激に羞恥に襲われ、佐助はさっと頬に血を昇らせた。
そして思わず幸村を抱き起こす。
まずい。
このままこの場にいたら、絶対に色々まずい事になる。
何がと問われたら色々としか言いようがないのだが、とにかくそれは確信であった。
佐助は開こうとしていた合わせを慌てて戻して着崩れた幸村の寝衣を整える。
「・・・佐助?」
突然の佐助の変異に幸村が声を掛けるが、佐助は答えられなかった。
とにかく、一刻も早くこの場を離れたかった。
「じゃあ、旦那。今夜はここまでね!」
「お、おい?」
「続きはまた今度って事で!」
佐助、と呼ばれた声を今ばかりは無視をして佐助は庭に飛ぶ。
そしてそのまま一目散に庭を駆け抜ける。
その名に相応しき俊足でどれだけ走ったか。
そうしてたどり着いた人気の無い裏山まで来て漸く止まり、近くの樹の上でしゃがみ込む。
(ああぁ~・・・くそっ!)
佐助は頭を抱えて悪態をつく。
その相手は自分自身だ。
何が慣れているだ。
何が経験豊富だ。
(キスだけで完勃ちとか、有り得ねぇ!)
筆下ろしも間もないそこらの餓鬼でもあるまい。
忍の、それも手練れの自分が。
その筋の遊女や女忍相手にだってこんな風になった事なんてなかったのに。
否、そも他人と幸村を同じと考えた方が間違いだったのか。
まかせておけなんて大言を吐いておいて情けない。
こんな無様で、明日幸村とどんな顔をして会えばいいのか。
幸村も、詳しい事情は察せずとも佐助の態度がおかしいとは思っている筈だ。
何て説明すればいい?
あんたに欲情して堪らなくて、我を忘れそうだったから逃げ出しました、と?
流石にそれは佐助の矜持として無理な話だ。
せめて任せておけとか、あんな事を言わなければ良かったのに。
今更後悔したところで後の祭りだ。
(あぁ、もう、どうするか・・・)
身体も頭も火照ったままで、良い考えなど一向に浮かばない。
精神的な面でも身体的な面でも佐助は立ち上がる事が出来ず、その場で一夜を明かす事となるのだった。
終
初夜の豆知識ツイートを見て堪らず書きました。
初々しい感じが書きたかったのですが、出来上がってみれば佐助さんがへたれっぽくなってしまいました。
もうちょっと格好いい佐助さんを書けるようになりたいです。
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早和
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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