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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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佐幸の小ネタです。
クロスロードの元となってたものなのですが・・・
書き上げてみると、こっちの方がすっきりしている上に小ネタと言うには長くて。
結論。
こっちで良かったかなと思わなくもないwww
















猿飛佐助は駅前の横断歩道で立ち尽くしていた。
否、今正面にある信号は赤なのでそれは決して間違っている訳ではないのだが。
そうとは違う意味で佐助はその場から一歩も動く事が出来ずにいた。
何故なら、道路を挟んで向かい側。
同じように信号待ちをしている人の群れの中に、ずっと探し求め続けていた人を見つけたからだ。

夢物語の様だと思われるかも知れないが、佐助には前世の記憶があった。
そしてその世では、佐助はある武将に仕える忍であった。
武将の名は真田幸村と言い、現世と変わらず――否、前世の方が先だから元であろうが――ひねくれた性格の己が唯一命を賭けて守ろうと決めた人だった。
死ぬ間際にはきっと来世で生まれ変わってもこのお人の傍にありたいと思った。
しかし、実際生まれ変わってみれば幸村の存在は傍には無く。
周りを探してみても居ない。
見知った顔は其処此処にあるのに、幸村だけがいないなんて。
打ちのめされながらも諦める事も出来ず、彼方此方を探し回った。
それこそ全国を。
そんな最中だったのだ。
ここは己の家の最寄りの駅前の交差点。
まさか、こんな身近に居るとは。
二重の意味で驚きだ。

四百年ぶりに見た主は変わらず整った容貌をしていて、佐助は改めて見て見惚れてしまった。
そして驚くことに、今生では主は女性に生まれ変わっていたようだ。
前世で女子は苦手だ破廉恥だと騒いでいただけに、これは予想外だった。
そして同時に道理で見つからなかった訳だとも思った。
今までずっと男性ばかりを探していたから。
同じ特徴を告げて探すにしても、性別の違いは相当に大きい。
にしても、男の時から整った中にも何処か幼さを残して可愛らしいと思わせるお人だったけれど、それが女の子になると更に際立つなと佐助はかつての主を見詰めながらぼんやりと思う。
思っている内に信号が青に変わる。
人が一斉に動き出した。
彼、否、彼女も。
何と言って声をかけるべきか。
以前のように旦那では女の子なのにおかしいだろうか。
人の流れに逆らうようにその場に立ち尽くしたまま、佐助が佐助が心内では慌てふためいていると。
彼女が己の正面までたどり着く。
そして一瞬佐助を見上げる。
しかし――
そのまま彼女は視線を逸らし、佐助の脇をすり抜ける。
前世と変わらぬ一房長い後ろ髪がその軌跡を描き、やがてそれも消えた。
佐助は呆然とした。
今、確かに一瞬目が合った。
彼女は自分を見た筈なのに。
人違いだっただろうか。
否、自分が幸村を見間違える訳が無い。
では何故、と考え、そして思い至る。
もしかして、覚えていないのだろうかと。
周りにいた人達が皆記憶を有する者達ばかりだったから考えもしなかったが、確かに全員が前世を覚えている保障など何処にもない。
寧ろそちらの方が少数だ。
そこまで思い至って初めて我に返った佐助は慌てて後ろを振り返る。
確かめようと思ったのか否かは自分でもよく分からないが、とにかく追いかけねばと思った。
昔と変わらず歩くのが速いのか、その姿は既に遥か先にあった。
特徴的な後ろ髪で何とか見つけられる程度だ。
人ごみを掻き分けてその背を追い、佐助は叫ぶ。

「ね、ねえ・・・ちょっと・・・っ!」

そう言えば、何と呼びかけるか決めかねていた所だった。
名前は同じなのだろうか。
自分や皆は同じようだが、女の子ならば男名の幸村の可能性は低いかもしれない。
考えている間にも彼女はどんどん歩いていき、やがて人気の無い神社の階段を上り始める。
ここなら何がしか声を掛ければ気付いて貰えそうだ。
旦那、は記憶が無ければ女の子には失礼だ。
ならば。

「お、お嬢さん・・・っ!」

咄嗟に呼ぶと、漸くそこで彼女の足が止まる。
それから俯く。
ぶはっ、と吹き出す声にそれからくぐもった笑い。

「お、お前・・・っ、へ、下手な軟派でもあるまい・・・っ」

お嬢さんって、と振り返らぬまま笑い続ける。
唐突なお前呼び。
もしかして。

「あんた、覚えてんのかよ!?」

佐助は数段下に止まったまま叫んだ。

「覚えてんのに無視するとか・・・ひっでぇの。俺様ちょっと傷付いたんですけど」
「すまんな。しかし、俺とて少し怒っていたのだぞ」
「何がよ」

幸村はそのまま階段を昇りながら言った。
少しこちらに向けた横顔は、唇を尖らせて拗ねているようだ。
その後ろを同じ歩調で追いかけながら佐助が尋ねると。

「ずっと待っておったのに。お前ときたらちっとも姿を現さぬ」

佐助とて必死に探してはいたのだが。
そんなのは主殿にはちっとも関係がなかったようである。
相変わらずの横暴ぶりだ。
しかし、そんな咎めすら出会えた今となってはどうでもいい。
長い階段の最上段までたどり着いた幸村が、日を背負って振り返る。

「遅いぞ、馬鹿者!」

浮かべた笑みは下手くそで。
佐助は一気に階段を駆け上がると、その顔を胸に隠すように細い体を抱き締めた。
目の端に光るものにはお互い気付かない振りをした。





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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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