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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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先日、思い立って名古屋に急遽行ってきました!!
いやぁ、名古屋は美味しそうなものが多くて目移りしますね!!

その新幹線の中で書いていたSSです。
新幹線の中が何やら一番妄想が捗る気がします。
けど タイトルはいつも悩みます・・・









・佐幸
・戦国





【見える世界のその先に】








麗らかな日和のとある午後。
上田の城にその空気を霧散させる怒声が響く。

「んっとに、信じられない!」

長閑に庭の木の枝に止まり囀っていた鳥達が、驚きに一斉に飛び立つ。
縁側で呑気に昼寝をしていた猫も、その声に何事かの異変を感じてするりと縁の下に逃げ込んだ。

この城で大声と言えば、浮かぶのは一にも二にも主の真田幸村だ。
鍛錬時の叫び声から気持ちが高ぶった時のお館様にお得意の破廉恥発言など。
言葉は多様であるが、その何れかの声を聞かぬ日はないのではないかと言うくらいには幸村の叫びはこの城の者にとっては日常だった。
因みに、三四は無くて五にお館様だ。
否、信玄と幸村の掛け合いと言う方が正しいか。
多忙の為に頻繁ではないが、稀に上田を訪れる信玄と幸村の叫び合いは、躑躅ヶ崎館のみならず上田の城でも恒例だ。
寧ろ、この二人が揃ってそれが無ければ、どちらかの不調を疑うと言う程に。
以上がこの上田で発される大声の主な要因で。
基本的にそれ以外ではこの地は静かなものであった。
実は、幸村の大声に慣れている為多少のものでは大声ととられないと言う理由もあったりするのだが。
閑話休題。

話が逸れたが、しかし今回、響き渡った声は幸村のものではなかった。
故に、人も動物も何事かと思わざるを得なかった。
今し方声を荒げた人物の名は猿飛佐助。
この城の主、直属の忍隊の長である。
忍の割には口数は多いが、冷静で直情的感情的な主とは正反対。
そんな彼が今、感情も露に大声をあげ主を怒鳴り散らしている。
 
「あれだけ注意しろって言ったのに、案の定怪我して帰ってくるとか・・・!」

そんな佐助とは対照的に、否、常にないと言う意味では同様にと言うべきか。
件の幸村は無言で佐助の前に正座をしている。
小言は常の佐助だが、こんなにも怒りを露にすることは珍しい。
そんな風にいつになく激しく叱責されて、幸村は小さくなって俯いた。
――が。

「下向いたら手当出来ないでしょうが!」

直ぐ様両手で頬を持って上向かされた。
しかしそこに色気は無い。
あるのは勢いばかりである。
グキッと思い切り音がした。
当然痛い。
手当と言うには些か乱暴すぎやしないかと思ったが、幸村は言えなかった。
今の佐助に何か言おうものなら、きっと数倍になって帰って来るに違いないからだ。
長年の経験でわかっていた。
となれば、幸村は黙って成すがままになるしかない。
どうしてこうなった。
幸村は己の迂闊さを悔やみながら先に起こった、佐助が怒り狂っているこの怪我の原因となった戦についてを思い出していた。










元は、それは単なる地方豪族同士の小競り合いであった。
小さなものであればこの戦国の世だ。
諍いは如何様にも起こる。
それら全てに国が関係する事は無く、普段であれば当人同士に任せて終わりが常だった。
しかし、今回は場所が上田の地に近かった事。
また、片方が亡き父である昌幸に僅かばかりではあるが縁がある者だった事。
加えて、その相手方に“武田に背反の気配有り”との情報が忍隊から齎された事などの要因が重なり、幸村は真田家として助力を申し出る形となった。
とは言っても、幸村が特段何かする必要は無い。
武田でも重要な位置にある真田の家が後ろ盾についたと言うだけでも十分であったし、更に後方支援として援軍を出せば過ぎる程だと言われた。
しかし、それでは気が済まずに幸村は自分も戦に出ると言い出した。
自国の兵を出すのに己がその場にも行かずにいると言うのは幸村の意にそぐわなかったし、何より武田に反すると言う輩を放置してはおけなかった。
何とも幸村らしい理由。
そうして、周りの反対を押し切るような形で幸村は出陣したのだった。
 
「どうしてもって言うから、あれだけ口を酸っぱくして前に出過ぎるなって言ったのに!」

佐助はその戦場にはいなかった。
それが周りが幸村の出陣を止めた理由の一つ、寧ろその最たるものだったのだが。
信玄の命による任務があり、どうしても随伴出来なかったのだ。
佐助が居ないと言う事は、即ち幸村を止められる者がいない。
また背中を守れる者がいないと言う事で。
その為皆心配をして渋っていたようであるが、幸村が引かないと分かると諦めて、替わりに出陣前にしつこいくらいに念を押された。
前に出過ぎるな。
そして、あくまで今回は後方支援に徹する事。
しかし、まぁ、案の定と言うか。
幸村が戦場にて後方になど留まっていられる訳も無く。
気付けば最前線で戦っていた。
小競り合いと言っても最前線での交戦はやはりそれなりに激しいものだ。
馬や人、弓矢や槍が交錯する只中で幸村は立ち回り、そして怪我を負ったのだ。





「だ、だが、佐助。これは偶然と言うか、事故のようなもので・・・」

幸村は手当を受けながら必死に言い募った。
確かに言いつけを守らず最前線に出た点においては弁解のしようもないが、怪我についてはこれは敵方に斬られたものではない。
単に事故。
不可抗力。
言うなれば、道端で転んだようなものだ。

「まさか、馬の蹴り上げた石に当たるとは思わないではないか!」

投石隊の動きならば把握していた。
しかし、そこらに転がっている石までは気にしていなかった。
まさかそれを偶々馬が蹴り上げて、それが自分の方に飛んでくるなんて。
考えもしていなかった。
そも、その馬が敵方のものか味方のものかすら判然としないのだ。
怪我も大した事は無い。
瞼の上を少し切ったぐらいだ。
後は少し大きなたんこぶが出来たぐらい。
出血はあったが傷自体は大きく大きくなく、その後も幸村は槍を振り回し戦を勝利に導いた。
そんなに怒る程の事では無いと思うのだ。
けれど、佐助はそれでも許せないらしい。
確かに怪我は偶然であっても、最前線にいなければそれは起きなかった。
それに、敵方の攻撃でなくとも戦場であらゆる面に注意を払うのは当然の事だ。
今回は偶々致命傷に至らなかっただけで、打ち所が悪ければ死んでいたかもしれないし、出血で片目を塞がれてはその分不利になる。
にも拘わらずその後も最前線に幸村は留まり続けたのも佐助としては怒りの要因だ。
加えて、怪我をした場所が悪かった。

「顔の・・・よりによって右目とか、ほんっと、有り得ないし!」
 
あらゆる方面に注意をしろとは言っても、戦に出る以上ある程度の怪我は仕方が無い事は佐助も分かっている。
けれど、よりによって右目。
どこぞの北の国主と同じ。
それが佐助が怒り心頭に発する何よりの理由だった。
傷の消毒を終えて患部を細い布で巻いて覆った際の佐助は、幸村が今まで見た事もないような顔をしていた。
苦虫を噛み潰したような、と言うのも生ぬるい。
苦い薬湯を飲まされた幸村ですら、あそこまで酷い顔はしない。
佐助が政宗を余り快く思っていない事は知っていたが、まさかここまでとは。
これは、戦が終わった直後、佐助が来る前に簡単な治療を受けていた際にこっそり、これで政宗殿に近付けるかも、等と思った事はとてもじゃないが言えやしない。
幸村にとって政宗はよき好敵手であり、片目を失って尚のあの剣捌きは尊敬に値すると思っているのだが。
それを言ったが最後。
佐助の機嫌は底なしに落ち、傷が完全に癒えるまで片目どころか両目を覆われ、寝間に縛り付けられた上に鍛錬もさせてもらえず、甘味も無く苦い薬だけを与えられるに違いない。
怒った佐助は怖い。
本当に怖いのだ。
その仕置きが一般的にはどれ程の効果があるかは甚だ不明であるが、幸村にとってはとてつもなく効果的であると言える。
加えて、機嫌の悪い小言以外は碌に口もきいてくれない佐助の監視ももれなくついてくるに違いない。
普段ならば佐助との時間を喜ぶ幸村だが、そんな状況では流石に勘弁願いたいと思うのは仕方のない事だろう。
しかし、確かに幸村にも非はあるが態と右目を選んで怪我をした訳でもあるまい。
選べぬ怪我の部位でここまで怒られなければならないのは若干の理不尽を感じざるを得ない。
とは言え言い返す度胸はないので、残る手段は逃亡だとばかりに幸村は佐助が道具を片付けるのにこちらに背を向けている隙にこそこそ部屋を抜け出そうとしたのだが。

「そんな怪我で何処行く気なの」

直ぐに見つかり地を這うような声で咎められる。
否、見つかったと言うのは果たして正しいのか。
佐助はこちらには背を向けたままで、視線はくれていない。

「い、いや、その・・・か、厠に・・・」

一時でもいいからこの空気から脱したい。
幸村決死の言い訳は、振り返って怪訝そうな視線を向けられはしたものの受け入れられ、取り敢えずほっと安堵する。
しかし、それで気が緩んだのか思わず障子との距離を測り損ね、幸村は思わず踏鞴を踏む。
ぐらりと身体が傾いだが、佐助が咄嗟に支えてくれたので事なきを得た。

「ちょっと、気を付けてよ」
「す、すまぬ・・・」
「片目で距離感掴み辛くなってるんだから」

先より幾分柔らかくなった声音に幸村が素直に謝ると、佐助はそのまま幸村の肩を抱いて廊下に出る。
どうやら転ばぬよう介添えてくれる気らしい。
何もそこまで、と思わなくもないが、特段嫌でもないので幸村は黙って受け入れた。
――が。
直後、肩を抱いたまま佐助がにやりと不穏な笑みを浮かべるのに幸村は何となく嫌な予感を感じた。
思わずひくりと頬を引きつらせる。
そしてその予感は正しかった。

「片目じゃ不便だろうから、当面は付きっ切りで世話してあげるよ。食事も、風呂も、憚りも・・・ね」

道中のみならずきちんと中まで。
最後までお手伝いしますよーと笑う佐助に、幸村はその内容を想像して瞬時に顔を赤らめる。

「い、いらぬ!それくらい一人で出来るわ!」
「いやいや、慣れるまでは大変だもんね。遠慮なさらず」
「遠慮などしておらぬ!」
「俺様が右目になって、旦那のあれやこれやもちゃーんと見ててあげますからねー」
 
先とは打って変わって。
いっそウキウキとした様子で。
佐助は幸村を連れ立って歩く。

これから続く佐助の仕置きを兼ねたセクハラ三昧の日々に、幸村はもう二度と何が何でも右目だけは怪我をしないと心に誓ったのだった。
















タイトル詐欺スミマセン(汗)
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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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