忍者ブログ
愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
[86]  [85]  [84]  [81]  [80]  [79]  [75]  [74]  [71]  [73]  [67
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


先日、インテに一般参加してきましたー!!
正確には別ジャンルの友人のスぺに居候をしていたので一般とはちょっと違うかも知れませんが。
実は前日に高校野球決勝を見に行く予定だったのですが、雨の延期で休養日に当たってしまいorz
それは残念でしたが、まあ大阪初観光もして、素敵なご本もゲット出来て、非情に楽しかったです!!

そんな旅行の新幹線の中でもそもそ書いていたSS。
“俺の忍”って言葉に惹かれて使いたくて書き始めたんですが、中々上手くいきませんでした。
そしてやっぱり佐助さんが格好良くならない。
いつか格好いい佐助さんを書けるようになりた・・・(ry










・佐幸
・戦国
・捏造十勇士










【戦場に奏でる】





真田忍には、戦場で一つの決まり事があった。
それは決まりと言っても、守らなかったところで誰からも叱責を受ける事は無い。
しかし、その場合においての命の保証は無いものとされた。
つまりは、決まりと言うよりも自衛の為の教えと言ったようなものだ。
忍が自衛と言うのもおかしなものだが、無駄な犠牲は無いに越した事は無い。
人員にも限りはあるし、何より彼らの主がそれを望まないのだ。

果たしてその決まりとは。










「そこまでにしろ」

戦が武田の勝利で終わりをつげ、勝鬨の上がる中、木々の合間に低い静かな声が響いた。
直後、それまで音も無く進んでいた人影がすっとその動きを止める。

「それ以上は範囲内だ」

続いた声に止まった人影はこくりと頷いた。
そして枝の上で息を止めて様子を伺う。
動きを止めたその者は真田忍の一人だった。
しかしまだ真田に来てからの日は浅く、いくつか任務には出たものの戦場に赴くのはこれが初めてだった。
そんな彼に古株の上忍――能力の高い真田忍の中でも更に秀でた実力を持つ十人の幹部の一人だ――が件の決まりを忠言してくれたのが今のこの状況な訳だが。
例え教えが無くとも自分はきっとこれ以上先には進めなかっただろうと男は思った。
何しろ辺りに漂う殺気が酷い。
ビリビリと肌を刺すような、それでいて怖気を感じるような薄暗い空気。
任務であるならばともかく、自ら好んでその只中に飛び込む勇気は男には無かった。
男が向ける視線の先。
そこには一つの影が佇んでいる。
その人物こそこの空気を、殺気を発している張本人であるのだが。
彼は敵でも何でもない。
寧ろ味方に属する。
それどころか己にとっては上司に当たる真田忍隊の長。
猿飛佐助だった。
そう。
真田忍の戦場における決まり事とは将にそれで。
戦直後の猿飛佐助には無闇に近づいてはならないと言うものだった。

ではそれが何故かと言えば、理由は男が感じた殺気にある。
通常は敵にのみ向けられるそれを、今は男にもしっかり感じ取る事が出来る。
つまり、味方にも向けられているのだ。
勿論、辺りに潜む上忍達にも。
戦直後の佐助は精神が昂ぶっているのか敵味方の判断が付きにくく、攻撃の範囲内に近づくと間違って斬り殺される可能性があると言うのだ。
それが決まり事が出来た理由だ。
この理由を聞いた者は大抵が長では無く主の間違いではないのかと言うが、実際主である真田幸村の方が戦後は冷静であったりする。
幸村にとって戦は信玄の上洛に必要な事だ。
武人として強い者に対した時に昂ぶる事はあれど、それで狂気に飲まれるような事は無い。
また、幸村が生まれ持つ異能が“炎”と言う陽の気に属するものである事も理由の一つかも知れない。
しかし、対する佐助の異能は“闇”。
“陰”の気に属するものだ。
それが悪いばかりではないとは言え、“闇”の異能を持つ者は元々狂気に陥りやすい傾向にある。
佐助は普段は明るく飄々とした態度を見せてはいるが、本質と言うのはそう簡単に変わるものではない。
その為、多くの人を殺める戦場に於いてはそのような状態に陥りやすいのだ。
どちらを恐ろしいと感じるかは人により違うであろうが、事実として戦後の佐助に近づいてはいけないと言う決まりは正しいものなのであった。
また、佐助の扱う武器がそれに拍車をかける。
闇の属性を持つ武器は、殺した相手の精気を奪って己のものとする。
属性を付けずに戦う事も勿論出来るが、戦いにおいてそれが有利となる以上、勝利の為、任務遂行の為に佐助がそれをする事は滅多にない。
つまりは周囲がこうして距離を取る以外に回避する方法は無かった。

「しかし、如何しましょう」

変わらず己の耐えられる距離のギリギリで佐助の様子を伺いながら、男は上忍に問うた。
近づけない、近づいてはいけないとは言え、いつまでもこうしている訳にはいかないのではないか。
しかし、その問いに周囲が答える。
何の気にも留めぬ様子で。

「放っておけばいい」

別の者も答える。

「どうせもうじきですしね」

答えぬ者も意見は同じようで。
無言のままその場で皆頷いていた。
一体どう言う意味なのか。
分からず男は戸惑うしかなかったが、理由を知るのは本当に“じき”の事だった。
近づく人の気配。
己ら忍のものとは違う、圧倒的な存在感がこちらに向かって来るのを感じる。

「佐助!」

薄々判じてはいたものの、振り返ってみればその気配は主、真田幸村のもので間違いは無く。
いつもの赤と白の戦装束に愛用の二槍を手にして、土汚れも返り血も、戦が終わってそのまま来ましたと言う態で走って来る姿がそこにはあった。
そして、真っ直ぐ呼びかけた名前の主に向かう幸村の様子に男は慌てる。
漂う殺気は変わらずだ。
幸村にも向けられている。
このままでは主の身が危ない。
幾ら恐ろしいとは言え、主の命が関われば己の身など幾らでも軽いものとなる。
思わず男は飛び出そうとしたのだが。
瞬間、すっと手で制され止められて男は目を見張る。
見上げれば、行く必要はないと言う無言の視線。
己の比ではない程の、心酔とも言える思いを主に持っている幹部のこの上忍が、何故主の危険をみすみす見逃そうと言うのか。

「幸村様なら問題は無い」
「寧ろこうしないといつまでも僕たちここにいなきゃいけなくなるって言うか・・・」

上忍達の言葉に首を傾げ、しかし上の言葉は絶対だ。
黙って見ていろと言うのでその通りにしていると、佐助の周りに澱のように溜っていた異能の影が蠢いた。
そしてそれは幸村に向かって伸びていくが、幸村は気にした風も無く佐助に歩み寄る。

「ここに居ったのか。探したぞ!」

それどころか伸びて来る影を宥めるように往なして進み。
その先の光景に男は驚く。
その影は幸村に触れた途端、ふっと掻き消えるように失せたのだ。
炎の異能で焼いた訳でも切った訳でもない。
ただ本当に触れただけで幸村はそれを消して見せた。
そうして辿り付いた佐助の元で、幸村は微動だにしない佐助の手を取る。

「先ほど撤退の合図があった。俺達も本陣に戻るぞ!」

言いながら腕を引く。
しかし、佐助がそれでもその場から動こうとしないのに気付くと、暫く佐助の顔をじっと見上げ、それから徐に手を伸ばすとその体ごと頭を掻き抱く。
端から見ると佐助の方が体格がいい為幸村が抱きついているかのようだが、幸村は気にしていないのか、そのまままるで子供をあやす様に背中をポンポンと叩いた。

「ようやったな、佐助。もう戦は終わったぞ」

幸村の言葉に佐助は無言のままだった。
しかし、影は次々と消え、殺気が次第に納まっていく。
空気が軽くなるのを肌で感じる。

「此度も武田の勝利だ。真田忍の攪乱のおかげで被害もこちらは最小限と聞いておる。流石だな!」

自慢げな主の声音。
それに反応を返したのは佐助よりも先に周囲に居た上忍達であった。
俯いたり、逆に天を仰いだり。
それぞれが感動に打ち震える。
佐助はまだ動かない。
しかし。

「お前のおかげで俺もお館様も、皆も無事だ。」

その言葉で、初めて指先がピクリと動いた。
幸村はそれに気付いたのだろうか。
背を叩く手を止めぬまま、こう告げた。

「大義であったな」

その瞬間、佐助の唇が動くのを男は見た。
遠くて声は届かなかったが、その形が三つの文字を作ったのは確かに見えた。
だんな――と。
それから自分も腕を伸ばし、緩く幸村の身体を抱き締めながらほう、と息をつく。
もう辺りに影は無い。

「佐助。佐助・・・」

幸村はその後もずっと繰り返し名前を呼んでいた。
まるでそうする事で意識を繋ぎ止めようとしているかのように。

「俺の忍・・・」

陽だまりを思わせる温かな声音が紡ぐ音。
それは、暫くその戦場に響いていた。










それを見届けて暫く。
しかし、佐助も幸村も動き出す前に上忍の一人が言う。

「戻るぞ」

主たちを置き去りにしたまま。
良いのだろうかと思ったが既に周囲の人影は半分以下に減っている。
皆本陣に戻り始めているようだ。

「そもそも僕らがここに居たのって、長を呼び戻す為じゃなくて、うっかり幸村様以外の武田の人が長に近づかないように見張る為だしね」

長一人ならば堂々と放置しておけるのに、と主によく似た面持ちの上忍はその幼さの残る顔で辛辣な言葉を吐いた。

「幸村様の率いる兵を、あの馬鹿の所為で無駄に減らす訳にはいかないからな」
「幸村様が来れば、俺らはお役御免って事」
「あの二人なら襲われても心配ないしね」
「万が一何かあっても、長も正気に戻れば身を挺して幸村様を護るでしょ」

木々の間を駆けながら、彼らの話を感心しながら聞く。
成る程。
近づいてはいけないのに彼らがあの場から去らなかったのはそう言う事だったのかと納得する。

「全く、毎度幸村様の迎え等と羨ましい・・・いや、主の手を煩わせるなど不敬な・・・」
「でも、今回僕らも褒められちゃいましたよね~」
「流石だな、ってな!」
「勿体無いお言葉だ・・・」

その後も続く戦場には余り似つかわしくない、況してや忍には有り得ないような和気藹々とした会話を聞きながら、男も先の事を思い出す。
己ですら感じ入った幸村のあの言葉、あの声。
直に向けられた佐助には如何ばかりのものだったのだろう。
あの殺気がたちどころに失せる程だ。
推して図るべしと言ったところか。
俺の忍と言って憚らないあの甘やかな声音はまだ響いているのだろうか。
思い描けば思わず赤面しそうになり、男は首を横に振る。
あれは本来己などが聞いて言い声ではなかったかも知れない。
ならば余計な事は考えるまいと、男は前を走る上忍たちの背を追う事に集中する。
先ほどの甘く柔らかな空気が次第に遠退く。
代わりに戦場らしい勝鬨の響く本陣がすぐそこに近づいてきていた。

 
 
 
 











(余談1)
我に返るとこの佐助さんはきっと今までの事なんて忘れたかのように「旦那ここ怪我してるじゃん!」とか言って小言を言い始めます。そんでぎゃーぎゃー騒ぎながら本陣に戻って来るのを生暖かい目で十勇士達に迎えられます。

(余談2)
同じく我に返ると、真田屋敷で下忍に見られた事を知って「俺様の長としての威厳が・・・」とかって頭を抱えて、十勇士(小介辺り)に「そんなもん初めからないから大丈夫ですよ」って言われます。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
早和
性別:
非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
P R
忍者ブログ [PR]
Template designed by YURI