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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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最近だらだらと長いものばかり書いてたので、短く簡潔に書こうと思って書き始めたら何だか暗い話になりました(汗)
幸村がいないと生きていけない佐助がスキー!なツイートから始まった筈なのですが・・・
死ネタも結構好きなので気付けばこんな方向に進んでおりました。
と言う事で死ネタ注意です。
そして、西軍(真田)好きの為、東軍大将の家康におかれましてはいつも扱いが大変申し訳なく・・・すみませぬ(汗)
その様なSSですが、大丈夫な方はお暇つぶしにお付き合い頂けると嬉しいです。










・戦国
・佐幸
・死ネタ


 
  
  
【神様はいない】










その人は素晴らしい人なのだと、その人物を知る人は皆口を揃えてそう言った。
優しく、穏やかで、慈悲深く、自分の事よりも他人を、民の事を思う。
将に天下人たる器を持って生れて来たお人なのだと、誇らしげに語った。
それは確かに事実なのだろう。
己も今まで生きてきた中で多くの人間を見て来たが、あんな人物は今まで見た事が無かった。
その人がこの日の本を治めれば、きっと長く平和な世が続くのだろうなと素直に思った。
その意見に否やは無かった。

しかし、皆が皆己の様な客観的視点を持っている訳ではない。
特に、同じ天下人を目指す、或はそれに従う地位の人間であれば尚更。
人には主観と言うものがあり、また何を差し置いても譲れないものと言うものもある。
素晴らしい出来た人間であれば皆が納得して従うなんて、そんな事は決して有り得ない事なのだ。
世界はそんなに単純じゃない。



ある青年もそうだった。
青年にとって譲れないものとは彼の師の事だった。
師こそが天下人の器たるお方だと、青年はずっとそう信じて願ってきた。
例えその師が病に倒れても。
例え後を継いだ己にはその器が無いと知っていても。
それでも、師に敵対していた者に恭順する訳にはいかなかった。
それがどんなに素晴らしい人物でもだ。

青年だけではない。
他にも反したものは多くいた。
民の為にと主を奪われた者。
己との違いを認められなかった者。
仲間を奪われたと思った者。
己のみを信じる者。
理由は皆様々だ。
その誰もがその人物が民を思う者だと言う事は理解していた。
けれど譲れず、許せず、認められなかった。
故に反して戦った。
自分の信念を貫く為に。
人とはそういうものなのだ。

そして自分もその一人だった。
理由は何だろうと考えてみたが、その全てが当て嵌まる様な気もしたし、全く当て嵌まらないような気もした。
己は武将では無かったので彼らとは少し立場が違う。
それでも思った事は同じで。
太陽の様、神様の様だと民に慕われたその人物。
この世を照らす光だと。
付いた二つ名までがそれだった。
しかし、どんなに大衆からその様に謳われ叫ばれても、己にとっての光はその者には成り得なかった。
己の光はただ一つ。
師の後を継ごうと必死でもがき、足りぬと苦しみ、そうして果たせぬままに討たれて死んだ、神に逆らった彼の青年、ただ一人だった。
彼は確かに太陽などと言う偉大なものではなかった。
ただその周囲だけを照らす、言うなれば小さな篝火だった。
だが、その篝火こそが己を暖める唯一の炎。
己を導くたった一つの光だった。
失えば、何も見えなくなる程に。
小さな小さな、自分だけの光だったのだ。



遠くでは人の歓声が響いている。
最後の戦に勝利した、その人の旗印を掲げた兵達が喜びに湧いていた。
これで太平の世が訪れる、日の本は明るくなるだろう、東照様が見守っていてくれる。
皆口々にそう言っていた。
あぁ、確かに日の本はそうなるに違いない。
それは疑いようも無い事だ。
けれど己の世界の闇は晴れない。
己を照らしていた小さな光は、もう掻き消されてしまったからだ。

顔を上げると遥か遠くに一際大きな黄色い円状のものが見えた。
皆が崇める葵の紋。
はためくあそこに、この世を照らす神様がいる。

ふらりと立ち上がった身体は自然とそちらの方を向いた。
足が無意識に進み出す。
そうと分かれば己の向かう場所、為すべき事は決まっている。

さあ、神様を殺しに行こう。

明るい世など、闇に落ちた己にはもはや何の価値も無い。

全て壊れてしまえと強く思った。





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早和
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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