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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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相変わらずの繁忙期です。
早く落ち着いてくれ・・・



SSはゆた先生のお誕生日に贈ったものです。
「(バサカフェの)羽織袴を弁丸様に着せている佐助」がリクエストでした。









・佐幸
・現代転生
※何でも許せる方向け
【羽織袴に丈を比べて】


守りたいものはありますか、と。
そう問われたらば佐助はあると即答出来る。
たった一人、何に変えても守りたいと願う人。
己の全てとも言えた嘗ての主。
真田幸村その人を。
生まれ変わった今の世では主従の括りは既に消えてしまったけれど。
それでも思いは変わらない。
己にとって彼は、彼の魂は、闇を照らす灯火のようなもの。
彼が健やかに過ごせるように、望むまま生きられるように。
願いは変わらず胸にある。
特に前者は以前よりも年の差が倍近くに開いた所為か、親の様な気持ちで強く思う。
あの時代ならば未だ幼名で呼んでいた年頃の幼い彼。
おかげで今生でもつい無い筈の幼名で彼を呼んでしまうのだが。
そんな弁丸の成長を見守る事は、最早佐助の尊く眩しい喜びだ。
掴まり立ちを覚えた時。
一人で歩く事が出来た時。
自転車に乗れるようになった時。
それを見守る佐助の瞳は親よりも親をしていると、何度周囲に言われたか知れない。
しかし反面、そんな場面を見守る事に一抹の寂しさを感じもする。
彼に出来る事が増える度、節目の度に、彼がいずれ巣立っていく未来をまざまざと感じさせられるようで。
佐助はどうしようもない心地にさせられる。
遠くに行ってしまわないでくれ。
ずっとこの腕の中にいて守らせてほしいと。
保護者の気持ちでそう思うのに。
幾ら佐助と言えど時が過ぎるのを止める事は出来ず、また今年もこの日が来たかと佐助は複雑な胸中で弁丸の着物の着付けをする。
睦月の終わり、真田家は正装にて神社にお詣りをするのが恒例だった。
如月の初めに誰あろう弁丸の誕生日があるので、少し早いが家族の都合が付く日を選び事前に皆で参拝するのだ。
勿論兄の時にも参拝するが、初詣には行かないのに息子の成長を願うそれは毎年欠かさない辺り親バカだなあと自分を棚に上げ父の昌幸をそう思う佐助である。
閑話休題。
そうして今日がその日である為、佐助は弁丸に朝から子供用の紋付き袴を着付けていた。
この着物を見る度に胸を占める。
弁丸が無事に一年を過ごせた喜びと、同時に共にいられる年数がまた一年短くなってしまった寂寥と。
一口に喜びを表せない。
佐助の表情は自然と複雑なものとなる。
「どうした、佐助?」
そんな心境に年々佐助の心の機微に聡くなっている弁丸は薄々気付いている様だ。
着付けの為にしゃがんで目線の近くなった佐助の顔を、両手で頬を挟み心配そうに尋ねてきた。
これもまた成長の一端だろうか。
そう思うと感慨深い。
否、違う。
弁丸は最初から聡かった。
こと佐助に関してだけは。
これまでもこう言った時はいつも無言で抱き着いてきたから。
多分ずっと気付いていた。
「何でもないよ・・・」
「だが、むずかしいかおをしておる」
「大丈夫ですよ」
「このかっこうはにあわぬか?」
「とんでもない!」
袖を摘みしょんぼりとした様子で呟く弁丸に佐助は慌てて首を振った。
緋色の長着と真っ赤な羽織はまるで彼の魂を表す炎の様に鮮やかで。
白い袴は汚れない無邪気な幼さを示しつつも何処か引き締まった印象を持たせている。
髪を束ねる布は羽織と同じ赤色で。
大きな蝶々結びは非常に可愛らしく見えるのに、女の子の様には見えないのが何とも不思議な所である。
弁丸の為に誂えた様な。
と言うか実際弁丸の為に誂えた一点物の羽織袴。
「とてもよく・・・似合ってるよ・・・」
「まことか!?」
「まことまこと。身長も去年より伸びて凛々しさが増したんじゃない?」
裾直しをした袴の形を整えながら佐助が言うと、弁丸も嬉しそうに足元を見た。
毎年変わる身長に合わせて着物の丈は頻繁に直さなければならない。
弁丸のそれは佐助が自ら行うが、これもまた弁丸の成長を感じる出来事の一つだ。
嬉しさと寂しさを同時に感じるそれ。
あぁ、本当によく似合う。
最後に羽織紐を結べば完成だ。
「はい、出来たよ・・・」
「うむ!」
ポンと結び雁金の抜かれた胸元を叩くと弁丸が満足気に頷く。
それからくるりと回って佐助に着姿を見せると拳を握り意気込んでいた。
当然だが弁丸は誕生日を迎える事を毎年純粋に喜んでいる。
特にこの羽織袴を着る時は大人に近付けるようだと一層嬉しそうだった。
しかし今年は加えて何やら興奮気味の様に見えるがどうしたのか。
その理由は。
「ようやく5さいになったからな!」
昨年の秋には数え年五歳で七五三も行った。
それもあってか弁丸にも五歳は節目として格別なものに感じるらしい。
佐助には例年より憂鬱なものだが。
――と思ったらそんな佐助の気鬱を吹き飛ばす程の衝撃が。
「5さいになれば、ちちうえも佐助とのこんやくをみとめてくださるやもしれぬ!」
「はい!?」
四歳の子供の口から飛び出た言葉が余りに予想外過ぎて佐助は思わず叫んでしまった。
しかし弁丸は至って真面目だった。
今はもう主従ではない。
故にずっと一緒にいるには他の特別な関係を考えなければならなかった。
そして佐助を手に入れるには結婚しかないと言う結論に至った。
しかし今の時代は十八になるまで結婚は出来ない。
父もまだ小倅殿には早いだろうと言って笑う。
早く早く、大人になって佐助と共に在る約束を。
願い節目の五歳を迎え、その結果の今日の興奮らしい。
「ちちうえにおねがいしてくる!」
どうやら毎年父親に願っていたらしい。
今年こそはと駆け出す弁丸を佐助は危ないと止める事も出来ずにしゃがみ込む。
大人になっていく事はいずれ訪れる別れへの道行だと思っていた。
けれど弁丸はそれを共に在る未来へ向かう希望だと謳う。
駆けて行く弁丸の後姿はただ眩しく、もう切なさは感じなかったけれど。
今までの様に保護者のような気持では見る事の出来ない事実に佐助は狼狽え、両腕で頭を抱える事で熱くなる頬を必死に隠した。
そうして何とか冷静を取り戻そうとするのに、遠くから聞こえるそろそろ認めてくれますかと叫ぶ弁丸の声に追い打ちをかけられ、佐助は暫く立ち上がれずにいた。




そうして出発に遅れかけた。
お題:「守りたいものはありますか」で始まり「そろそろ認めてくれますか」で終わる物語
条件:11ツイート(1540字)以上
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早和
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
P R
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