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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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オンもオフも何故かこの時期知り合いの誕生日が固まっている不思議。
皆幸村の誕生日近くに生まれていらっしゃるの羨ましいです!

今回のSSはツイッターでお世話になっているきょう先生のお誕生日に贈ったものです。
リクは人外佐幸でした。










・佐幸
・人外パロ

※何でも許せる方向け










いっそ消えてしまえばよかったのに…
そう思っていたのは己か、それともこの世界か――










【陰陽五行の拾う神】












雪の降る真冬の日、佐助は親に捨てられた。
表向きは飢饉を何とかして貰いたいと、願う神への生贄として。
しかし実際は体のいい厄介払いで。
周りに見ぬ赤い髪と、子供らしからぬ感情の無い態度。
親が己を気味が悪いと疎んでいる事は知っていたから。
長引く飢饉に村長が神への供物を提案した際、彼らが率先して手を挙げた事に佐助は何の驚きもしなかった。
それよりも羽織一つで一人残された社の中で、扉が本当に開かれた事の方が余程佐助には予想外だった。
神などいる筈がないと思っていたから。
夜が明けたら村人達が様子を見に来る前に山を降りようと思っていたのだ。

扉を開けたその人影を見た時、最初は此処を根城にする山賊か何かかとも考えた。
しかしその男の頭と背に何やらふわふわとした獣の耳と尾が付いているのを見て違うと分かった。
何よりその人の纏う空気が。

「驚いたな。この様な所に人の子がいようとは」

発された言葉は何て事の無いものであるのに。
その圧倒的な強さと重さに佐助は生まれて初めて気圧されると言う感覚を知ったのだった。
そして彼が本当に人ではなく神である事も。

佐助が山を降りようと思っていたのはただ単にいつまでも此処にいても仕方ないと思ったからで、特別生き延びたいと思った訳では別になかった。
なので本当に神が現れ食われるならまぁそんなもんかとも思っていた。
そこで事情を説明した所、幸村と名乗ったその神は他国の神との戦帰りに此処へは偶々立ち寄っただけであり、己はこの地の神ではないのだと言った。
つまりは村を助ける気はないと、あっさりと。
同時にこの辺りに他の神の気配はなく、土地が荒れ飢饉が続いているのはそれが原因なのではないかとも言ったが、原因が知れた所で解決には至らない。
結局佐助は生贄の意味を持たず、村を救う手立ては何もない。

可愛げのある子供ならば、恐らくここで目の前の神にそれでも村を助けてくれと請うたのだろう。
しかし佐助は己を捨てた親を恨む気持ちこそないとは言え、態々知らぬ神に助けを請う程彼らに特別な感情を持ち合わせてはいなかった。
仮にも親ではある筈なのに、慕う気持ちがこれっぽっちも湧いてこない辺り、己は彼らの言う通り普通の子供ではないのだろう。
否、このまま飢饉で村が滅びるならそれはそれで構わないなどと考える辺り己はどこまでも空っぽで。
子供どころか人として欠けているに違いない。
ならばいっそ消えてしまって構わないと。
佐助は後を成り行きに任せる事にした。
妖神の中でも虎の神だと言う幸村。
会話の中で一瞬見せてくれた獣の姿は口に鋭い牙を持っており、人の子供など咬み千切るのはいとも容易いように見えた。
このまま食われるならそれまでだし、食われず置き去りにされるならば当初の予定通り山を降りればいい。

そう思っていたのだが。
ここでまたも予想外な方向に話は転び、佐助の思惑は大きく外れる。
何と驚いた事にその神は。

「ふむ…取り敢えずいつまでも此処にいても致し方あるまい。連れて行くか」
「は!?」

そう言って人の姿のまま佐助を肩に担いだのだ。
これには流石の佐助も意表を突かれ、思わず声を上げてしまった。

「何でそうなる訳!?」
「俺に捧げられたものではないとは言え、見つけたのだから拾って持ち帰っても構うまい」
「いや、構うでしょ!てか、食うなら兎も角拾ったって意味ないし!」
「気に入った物を拾うのに意味など別に必要あるまいて」

獣の神は尻尾を揺らし、事もな気にそう言った。
それが全く理解できない。
気に入るなどと。
己の何処を見て言うのだろうか。

「こんな赤髪気味悪いだけだろ」
「見つけやすくて良いではないか。人間は皆真っ黒で区別がつかぬ」

直ぐにお前と分かれば間違って狩る事もないからなと。
そう彼は言うけれど。
人間を狩る事があるのか。
一瞬浮かんだ思考は深く考えない事にした。

「俺様、親も村も捨てられる様な情の欠片もないやつなんですけど」
「戦に取捨選択は必要だぞ。味方も勝つ為に時には見捨てねばならぬ事もあるしな」
「何かを感じる感情もない、冷たい空っぽな人間だし」
「常に冷静とは羨ましいな。俺などいつも戦で直ぐ頭に血が上って突っ込んでしまう」
「こんな怪我しても痛いとも何とも感じないんだぜ。気味悪いだろ」
「痛覚が鈍いのは戦の時に便利だぞ。腕が吹っ飛んでも戦える!」

首から肩にかけてついた大きな傷跡は、数年前に村を襲った賊を佐助が返り討ちにし殺した際に負ったものだ。
これだけの怪我をし血塗れになりながらも、泣きもせず取り乱しもせず賊の死体の中に佇んでいたのが思えば親が佐助を気味悪く思う切っ掛けだった。
しかしそれを見せても幸村は何処吹く風で。
満足げに頷くばかり。
それどころか更に物騒な事を言っている。

「ただ、過信すると致命傷に気付かぬ場合があるからな。俺も腕くらいと放っておいたら神気を流し過ぎてうっかりそのまま死にかけた」

あれは危なかったと深く頷く。
価値観が違うにも程がある。

これまで気味が悪いと異質にされていた事が彼には寧ろ良い事の様に思えるらしい。
その例が血生臭い事ばかりなのは若干気にならない訳ではないのだが、兎に角彼はそうして佐助を望むのだ。

担がれ体に触れた肩は、布地越しでも過ぎる程に熱を持って温かい。
冬の寒さに晒され悴んだ佐助の指先も次第に無理矢理解けていく。

性質も性格も考え方も全て。
何もかもが正反対。
だが、逆に考えればそれはまるで凹凸の様に己が彼の為の存在だったのではとさえ思えてくる。
そんな佐助の気持ちの変化に気付かぬまま幸村は笑う。

「それにな、空っぽなのは案外悪くないぞ。何しろ腹が空っぽで死にそうな時に食べた団子はこの上なく美味かったからな!」

その時を思い出しているのか涎の垂れそうな表情でうっとりと目を閉じている幸村に佐助の毒気は一気に抜けた。
毒気と一緒に力も抜けた。
肩に預けた身体が拳を握って小さく震える。
撚りにも撚って団子って…

「あんたと話してると何か全部くだらない事に思えてきて力抜けるわ」
「お、笑ったな。何だ、おぬし顔が強張っていると思ったら腹が減っていたのだな」

幸村に指摘され己が笑っていたと自覚するより先に、続いたまたもズレた頓珍漢な言葉。
ポフポフと尻尾で宥めるように頭を叩かれ。
佐助は今度こそ堪えきれずに、生まれて初めて声を上げて笑った。





その後幸村の元で過ごす事となった佐助は、一応幸村の部下の様な立ち位置でせっせと彼の世話を焼く日々を送る事となった。
どうせ部下となるならと眷属にもなるかと幸村に誘われたが、人間が嫌いならと提案されたそれを、その時にはもう人間とか神とかそんなのはどうでもよくなっていたので佐助はずっと保留にしていた。
彼の傍にいるなら自分の種族などどうでもよかったから。
単純に態々幸村の手を煩わせるのもどうかと思っての事だった。

しかし数年後、諦めずに何度も尋ねてくる幸村にその理由を聞いてみた所。

「眷属になると神気で色々な術が使えるようになるしな。後は寿命がやはり…」
「眷属にしてください!」

失念していたが神と人ではそもそもの寿命が違い過ぎる。
人は精々数十年しか生きないが、神は千年単位を平気で生きる。
何年経っても幸村の外見が全く変わっていない事で先に気付いておくべきだった。
彼を遺して死んで堪るかと食い気味に即答した佐助に満足げに笑う幸村。
その瞳に映る己の姿はすっかり大人になっている筈なのだが。
そこにはあの頃の幼い自分が笑っているのが見えた気がした。
















お題:「いっそ消えてしまえばよかった」で始まり「あの頃の僕が笑ってた」で終わる物語。
条件:11ツイート(1540字)以上





そして生まれた虎王の眷属天狐氏――と言う設定。
きょう先生お誕生日おめでとうございました!




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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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