愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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バレンタインです。
今年も真田のチョコ食べます!今年は佐助も同衾してますね!(違)
https://twitter.com/sayori_888/status/1355798325694320642
・佐幸
・現代転生
※何でも許せる方向け
大丈夫?と聞かれて我に返る。
目の前には可愛らしい雑誌を抱えた女子。
しかしそれが誰の為の物かを考え、佐助はへらりと愛想笑いを浮かべ大丈夫だと返しながらも陰でひっそりとため息を吐いた。
【策士策に溺れても】
二月の教室は俄かに浮ついた空気に包まれる。
理由は一つ。
月の半ばにあるバレンタインだ。
女子も男子も。
相手がいる者もいない者も。
皆少なからずの期待を抱き、何処かそわそわと落ち着きのない様子を見せていた。
そんな級友たちを去年までは一歩退きながら冷めた目で見ていた佐助であるが、今年からは彼らの同類だ。
これまで誰にも心を揺さぶられる事などなかったのに。
高校で佐助は運命的な出会いを果たしたのだ。
その相手と言うのは同級生の真田幸村。
芸能人もかくやと言わんばかりのとても見目の整った男子である。
彼はとても不思議な人で、これまで誰も入り得なかった佐助の心に何故かすんなりと入り込んだ。
彼の隣は居心地がよく、ここが己の居場所だと言い切れる様な。
そんな感覚を抱かせる。
しっかりしているように見えて変に抜けている彼の傍にいると色々とフォローする事が多いのだけれど。
それが全く苦ではない。
寧ろそれは己の役目だと、他の誰にも譲りたくないと。
そんな風に思ってしまう人だった。
また彼自身も不思議な人で。
見目の良さに加えて真面目で品行方正の優等生。
成績もよく運動神経も抜群と言うモテない理由がないようなお人であるのに、彼自身は女子が苦手で寧ろ避けている気配すらあるようだった。
否、女子のみならずそもそも人付き合いが得手ではないのか親しい人自体が殆どおらず。
少なくとも中学時代に彼が学校で誰かと共にいる所は一度も見た事がなかったとが幸村と同じ中学だった人間の談である。
そんな人が佐助に対しては何故か違って。
出会った当初から酷く親し気に接してきた。
入学式では抱き付かれ。
それは知り合いと勘違いしたのだと判明し謝罪を受けたが。
その後も何かあれば、否、何もなくとも佐助の名前を呼んでは寄って来る。
名前も抱き付かれたその時には呼び捨てで。
謝罪を受けて暫くは苗字に敬称呼びになったけれど。
それも数日も経たぬ内に遠慮は消え、気付けばまた呼び捨てに戻っていた。
幸村が名を呼び捨てにするのは佐助が知る限り己一人。
周りから一体何をしたのかと驚かれ。
同時に酷く羨ましがられもしていたりする佐助である。
その優越感がいつしか独占欲に変わっていき、更には恋心にまで変化したと自覚したのはいつだったか。
割と早い内の事であったと記憶 している。
よもや同性にと思う隙もない程に、極自然に佐助は彼を特別に思った。
しかし、佐助にとっては自然であっても一般的にはやはりまだそうとは言い難く。
故の冒頭の溜め息へと繋がる。
好きな相手に想いを伝えるバレンタインに己はどうしたものかと頭を悩ませ。
同時に幸村の唯一親しい友人である佐助には彼の好みを聞き出そうと相談の女子が殺到し、表に出せない飲み込んだ嫉妬が溜め息となり口から漏れ出てしまったと言う訳だ。
女子からは特集の組まれた雑誌を見せられどれが幸村が喜びそうか、どんな味のものが好きかなどと聞かれたが。
まったく面倒な事だ。
幸村が何が喜ぶかなど、そんなの知っている事は全部自分がしてやりたいに決まっているではないか。
本当は知らぬ存ぜぬで通してやりたい所であるが、それで抜け駆けをされては堪らないので適当に返しながらも佐助は取り敢えず手作りだけは避けさせるように言っている。
幸村は手作りが苦手だから既製品がいいだろうと。
根っからの女子苦手の幸村には可能性は非常に低いが、万が一にも彼の事を餌付けされては困るのだ。
まぁ、実際佐助の意図が聞いた側のそれとは少し違っているだけで、幸村は本当に手作りが苦手なのでそのアドバイスも全くの嘘と言う訳ではない。
彼は詳しくは語りたがらないが昔差し入れの中に変な物を入れられたのがトラウマらしく、幸村が手作りは受け取らない事は周囲にも知れ渡っている事だ。
しかしバレンタインとなれば普段は遠巻きに見ているだけで知らない者もいるだろうと、佐助はアドバイスと称して逐一その情報を広めている。
知らなかったと強引に渡してくる者がいないように。
芽は早い内に摘んでおかねば。
そんな地道な妨害作業――もとい、涙ぐましい努力のおかげで幸村に手作りのお菓子をと言っている者は見かけなくなったが、代わりに困っているのが自分のチョコだ。
持ち前の器用さで料理も得意な佐助としては当然バレンタインにも手作りを渡したかったのであるが、幸村が苦手とあってそれが出来なくなってしまったのだ。
何とか幸村には自分の渡したものが一番美味しいと思ってほしい。
その為には自分が手作りすべきであると何故か半ば確信の様に思うのに、それが出来ないもどかしさ。
そうしてここ数日頭を悩ませていた佐助であるが、つい先程良い折衷案を思い付いた。
幸村に美味しい手作りを渡したい。
しかし幸村には手作りとバレたくない。
ならば既製品そっくりのものを手作りし、渡せばいいのではふと思いついたのだ。
幸村のトラウマを刺激せず、且つ最高のものを作って渡せる。
それは中々の案に思われた。
いつか幸村に手料理を食べて貰える様になったら種明かしをするのもいいだろう。
思い付いた切っ掛けが先程の女子の雑誌で見たプロの作る手作りと言う特集記事や拘りラッピングと言う記事だった事は些か癪に触る所ではあるが。
利用出来るものは利用してやると佐助は開き直って準備に取りかかる事に決めたのだった。
「忝い…」
店を巡り、幸村が好きそう且つ自作出来そうな菓子を選び抜き、見た目から包装まで研究を重ね。
そうして迎えたバレンタイン当日。
佐助は苦労し完成させたそれをいつ渡そうかとチョコを受け取る幸村の隣で朝からタイミングを見計らっていた。
休み時間の度にひっきりなしに女子が訪れる幸村の机の横には大きな紙袋が既にいっぱいになっているが、今のところその中に手作りらしきものは見当たらない。
自分がその唯一となるのだと思えば出し抜いてやったと言う満足感が胸を満たす。
例え幸村がそれに気付かずともだ。
「旦那、凄いねぇ…」
「うむ、まぁ…有難くはあるな…」
佐助の思わず零した声に返る答え。
微妙に奥歯に物が挟まった様な物言いなのはやはり女子が苦手だからか。
取り敢えず今まで貰った中に特別喜ぶ物はないらしい。
その事に安堵し佐助は今が好機かと言葉を続ける。
「俺様も旦那が好きそうなの見つけたんだけど…これだけあったらいらない?」
「いる!」
若干食い気味での即答。
自分に対してだけはこうして砕けた話し方をする事も含め、自分だけは特別な様子を見ると期待したくて堪らなくなる。
それでも確信があるまではやはり気まずくなるのが嫌で、今はまだ友達の振りを装いそれを渡す。
ロゴまで有名店のそれに似せて作ったそれ。
見れば幸村はそれを掲げて嬉しそうに目を輝かせた。
「これは…美味そうだ!」
「味は保証するぜ」
「お前のくれたものなら疑う余地もない」
そう言って、幸村はその場で佐助の渡したそれを開けて食べ始める。
他の人から貰った物は無言で紙袋にしまっていたのに。
あぁもう本当に期待したい。
全てを言ってしまいたい。
顔を覆う佐助を余所に幸村は佐助の渡した菓子をいそいそと口に運ぶと目をぱちくりと瞬かせる。
「佐助、何処かの店でバイトをしているのか?」
「え?何で?」
「これはお前が作ったのであろう?」
佐助が作っているなら是非ともまた買いに行きたいと包装紙やロゴを丹念に眺める幸村。
佐助は呆然とするしかなかった。
「…何で?」
「ん?だからお前が作った物ならまた買いたいと…」
「何で俺様が作ったって…?」
何故バレたのか。
いつか告げようとは思っていたが、今はまだ何も言っていないのに。
その答えを幸村は至極あっさりと。
「お前が作った物を俺が分からぬ訳がなかろう」
そうして手作りと知った上でまたもう一つと食べ続ける。
手作りは苦手と言っていたのに。
「今生では気配がないから諦めていたが…料理をするならまたいつか相伴に与りたいものだな」
だからどうしてそう言う事をあっさりと言ってしまうのか。
「本当に!旦那、そう言う所!」
しゃがみ込んだ佐助の叫びは、しかしどこか嬉しそうで。
翌日からは隠す事もなく手作り弁当を持参し餌付けを図る姿が毎日のように見られたと言う。
手間暇をかけた策はあっさりと露見してしまったが、最後に笑っていたのならと佐助は紙袋の山盛りのチョコを鼻で笑った。
「残念でした、俺様の勝ち!」
終
佐助記憶無の転生佐幸でした。
幸村と高校で出会ってから少しずつ記憶が戻っていっている佐助。(手段は選ばないとか手作りが一番とか)
その後何かの切っ掛けで完全に思い出し、手作りが苦手だったのは昔(前世)で毒を入れられた所為かと思って聞いたら、今生で女子からの差し入れで髪の毛やら何やらを入れられたと教えられて忍モードが入りそうになる。(※幸村は野生の勘で食べるのを回避した)
お題:「大丈夫?と聞かれて我に返る」で始まり「残念でした、私の勝ち」で終わる物語。
条件:13ツイート(1820字)以上
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プロフィール
HN:
早和
性別:
非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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