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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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気がかりだった事がまだ途中ではありますが一山越えました。
良かった!!

と言う事で遅刻してしまいましたが主従の日(&嫉妬の日&心中の日)佐幸SSです!!







・佐幸
・戦国

※何でも許せる方向け






いつもと同じで。
しかしいつもと少し違う光景。
佐助は全てを理解した。
そういう事だったのかと。
理解したところでこの絶望は変わりはしないのだけれど。






【夢心中】








真っ暗な闇の中に佐助はいた。
果てまで何も見えない空間は、闇を纏う佐助には慣れているものの筈だと言うのに何故か身体が震えていた。
どうして、と。
考える間もなく理由は直ぐに突きつけられる。
座り込む自分の前に横たわる人影。
眠る様に目を閉じているが、その人が眠っている訳ではない事は知っていた。
どうして。
何で。
胸が焼ける様だ。
しかし身体の芯は冷え切っていて、歯はガチガチと震えて音を立てていた。
伸ばした手の指先も冷たい。
だと言うのに、触れた身体はその指より更に冷たかった。
生の活動を止めた人の身体はこんなにも冷たくなるものなのか。
肌も血の気を失い青白くなったその顔は、佐助が誰よりも守りたいと願った人。

旦那・・・
何で・・・

「――――っ!!」

声にならない悲鳴が闇を切り裂き、周囲が一面白く染まった。






急激に意識が切り替わる感覚がして、佐助はハッと目を覚ました。
視界を確認すれば其処は暗闇ではなく緑に囲まれた木々の合間で。
見慣れた景色は上田のもの。
どうやら己は木の上で休んでいる内に転寝をしてしまったらしいと佐助は心の動揺を落ち着けるべく冷静に現状についてを考えた。
続いて辺りの気配を伺うと、周囲にはどうやら誰もいないらしいと分かる。
良かったと胸を撫で下ろす。
みっともない醜態を晒さずに済んだ。
幾ら非番とは言え忍が悪夢を見て動揺して起きるなど。
長としては見られたくない姿である。

そもそも忍は一般的に夢と言うものを殆ど見ない。
佐助もこれまではそんなものを見る事はなかったが、ここ最近同じ夢を繰り返し見るようになりこれはどういう事かと頭を悩ませている。
否、何となくは分かっているのだ。
夢を見始めるようになった切っ掛けを考えれば。

「さーすけー!」

思考に耽っていると、遠くから名を呼ばれ佐助は慌てて振り返る。
少し間延びしたその呼び方は声にも僅かに甘えを含んで。
己の名をそんな風に、そんな声で呼ばう人はこの世にたった一人しかおらず、自然と佐助は夢に固くなっていた表情を和らげる。

「佐助ー?」

もう一度呼ばれれば声の主は既にすぐ傍まで近付いており。
葉の隙間から見えた姿は佐助の思った通りの人だった。
誰よりも何よりも大切な、たった一人の己の主。
佐助はその声に導かれるように、とん、と木を蹴り声の元へと降り立った。


「はいはい。どうしたの、旦那?」

佐助が今日は非番である事は幸村にも伝えている。
故に視察などの予定も特に何も入れていなかった筈だった。
にも関わらずこんな所まで呼びに来るとは急な用事でも入ったのかと。
佐助が尋ねると顔を赤らめた幸村が躊躇いがちに首を振り、用事は特にないのだがと言いづらそうに小さく呟く。

「いや、時間が出来たから・・・その・・・」

彼にしては珍しくはっきりとはしない様子で。
告げられたのは可愛い一言。

「・・・少しでも・・・会う時間が取れたらなと・・・」

ただ会いたかっただけなのだと。
言われて佐助は堪らず相好を崩した。


佐助にとって幸村は大切なたった一人の主であるが、二人の関係はそれだけではなかった。
正確には最近変わった。
ただの主従と言うだけではなく二人は恋仲と言う関係にもなったのだ。

想いを告げてきたのは幸村からで、当初佐助はそれを駄目だと突っぱねた。
佐助にとっても幸村は特別な人であったけれど、だからこそ己の様な人間は相応しくないと思ったから。
忍と言う身分の違いもあったし、それ以外にも幸村は自分の様な闇に身を浸した者ではなく明るい世界が似合う人と一緒になって欲しかった。
可愛い穏やかなお姫様と幸せな家庭を築いてほしいと思ったのだ。
しかし幸村は引かずに佐助に思いをぶつけ続け。
大丈夫だと何故か自信満々な幸村の言葉に絆され佐助は折れてしまった。
元より特別な想いなら佐助の方がとうの昔に抱いていたのだ。
そんな相手から強く押されれば断り続けるのは難しい。

そうして付き合い始めて二人。
佐助が夢を見るようになったのはその直後からだった。
恋人の夢ばかり見るなんて一見色ボケの様に聞こえるが、その内容が相手が死ぬものだと言うのだから笑えない。
彼が一層特別になってしまったが故。
喪失への恐怖を感じているのだろうか。

「・・・佐助?」

返事がない事に傾げられた首に触れるとそこはとくとくと脈を打って温かい。
彼が生きている証。
堪らず抱き締めると突然の事に幸村は慌てたけれど。

「・・・嫌?」

問えば元は幸村の方が会いたいと此処まで来ていた身だ。
照れながらも嬉しいとはにかむ笑顔が可愛くて、佐助は再度手を伸ばさずにはいられなかったのだった。

そうして改めて心に刻む。
彼を失ったら己は生きていけないのだと。

絶対に守らなければいけない。
彼を――






そんな恐怖と幸福が隣り合わせの日々は、しかし佐助の危惧を余所に何事もなく過ぎていった。

幸村との関係も順調で。
夢は相変わらず見るけれど。
彼を失えないのは昔から十分知っていたから、あの夢もそれを思い出す為の所謂確認作業の様な形になっていた。
悪く言えば慣れてしまっていたと言える。

そんな折にまた訪れた夢の闇の中。
分かっている。
幸村の事は何があろうと守ってみせるさとやり過ごそうとしたけれど。
その日は少し違っていて、横たわる幸村の唇がはくはくとか弱く動いていた。
まだ生きている。
違っていたのはそれだけではない。
いつも見下ろす幸村の身体に、今日は己が跨るように乗っていた。

そうして、伸ばした手が・・・
彼の・・・
首、に・・・

意識がぶれる。
頭の中に二重に己の思考が過った。

この状況を外から見つめる己と、もう一つ、別の自分の嘆く声がする。
どうして、何で、と。
それはいつもの彼の死を悲しむ言葉ではなかった。
当然だ。
だって彼はまだ生きている。

声がする。

どうして・・・
どうして行ってしまうの?
生きて欲しいと俺の願いよりもあいつとの決着を望むの?あいつを選ぶの?どうして置いて行くの?俺を捨てるの?

脳が割れる程の様々な声。
しかしそれらの行き着く先は同じだ。

それならいっそ――


首に掛かった手に力が込められる。
止めろと叫んでも意識は剥離したままで行動を止める事は出来ない。

いつもと同じで。
しかしいつもと少し違う光景。
佐助は全てを理解した。
そういう事だったのかと。
理解したところでこの絶望は変わりはしないのだけれど。

そうして自分は、彼を――

その手で自ら殺したのだ。






急激な意識の浮上でハッと目を開く。
いつもと同じ目覚め。
しかしいつもよりも最悪な気分で佐助は両手で顔を覆い大きく息を吐き出した。
心臓が煩い。
汗で張り付いた髪が気持ち悪くてぐしゃりと握り潰して剥がす。
力を入れ過ぎて引かれた頭皮が痛みを訴えたが、そうしなければ指先がみっともなく震えてしまいそうだった。

何度か深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着けてから上半身を起こす。
いつもの様に気配を伺う事はしない。
周囲に人がいない事は分かっていたから。
ここは幸村の閨だ。
元より不寝番以外は近寄らない。
また昨夜は人払いをしてそれすら遠ざけていた。
あるのは幸村の気配だけ。

その人は隣で何事もなく眠っている。
心地好さそうにぐっすりと。
佐助の狂気など知りもせずに。

先の夢、あの後はいつもと同じものだった。
つまり以前から見ていたのは今日の夢の続きだった。
別物ではなく後半部分だけを見ていたのだと今漸く分かったのだ。
そして佐助は成程と思った。
納得した。
そう言う事かと。
喪失への恐怖を感じていたのは昔から同じ筈なのに、何故急にあんな夢を見始めたのか。
単に失う事ではない。
己は自らの手で彼を殺してしまいかねない、その狂気染みた執着を無意識にずっと危ぶんでいたのだ。
それでも最初は愛しさが勝っていたから失う後半の部分だけを見続けていた。
それが突然変わったのは。

昨晩佐助と幸村は恋人として契りを結んだ。
熱を分け合い、体を重ねて、文字通り一つとなったのだ。
そんな瞬間を知ってしまえば。
己の昏い執着は彼を自分のものの様に、人に奪われる事を許さぬだろう。
もし奪われるなら相手を殺すかも知れない。
それだけならまだマシだが、彼が離れていこうとすれば?
夢の通り彼を殺しかねない。
誰かに奪われるくらいならと。

そう。
あの夢の本当に怖い所はそれが有り得ない事だと否定しきれない所なのだ。
契るべきじゃなかった。
手に入れてはいけなかった。
こんなの、行き着く先は心中だ。

「殺したくなんてないんだけどね・・・」

寧ろ誰より守りたいと願っている人なのに。
顔を覆って呟くと、不意に腕に熱が触れた。
息を呑んで振り返る。
しまった。
思考に耽って気付かなかった。
いつの間に目覚めていたのだろう。
瞼を半分だけ開いた幸村が眠たげに此方を見詰めていた。

「さすけ・・・どうした・・・?」

寝起きの舌足らずな声は幼い頃を思い起こさせる。
しかしそれを可愛いと浸る余裕は今の佐助にはない。
聞かれてしまっただろうか。
今の呟きを。
佐助が考えるのはそればかりだ。

後悔と、こみ上げる色々な想いを堪えるべく佐助は奥歯を噛み締めた。
いっそ聞かれたのなら全てを告げて離れるべきだろうかとも考えた。
今ならまだ間に合うかも知れない。
この手を放す事が出来るかもと。

伸ばすべきか、引くべきか。
彷徨う冷たい佐助の手を幸村が強く掴んで引き寄せる。
そうして彼は手を握ったまま、稚く笑った。
そして告げる。

「大丈夫だ・・・」

言葉はいつぞやと同じものだった。
幸村の告白を佐助が拒んでいた時の、何の根拠もない、けれど力強い言葉。

そう。
根拠何て何処にもないのに。

「俺とお前は一つになったのだ・・・この手は俺のもの、俺の手だ・・・だから俺を殺す事はない」

幸村の自信に満ちた言葉は佐助の心を、不安を溶かしていく。

「だから・・・大丈夫だぞ・・・」



自分の言いたい事だけ告げて、幸村はまた眠りについた。
掴まれた手は離されないまま。
これではこの場から動けない。
否、例えこの手が無くてもきっと佐助は動けなかった。
先の幸村の言葉があまりにも衝撃過ぎて、ただ茫然としていた。

一つになったその結果を、まさかそう捉えるとは思わなかった。
全くこの人は。
いつも自分の予想を斜めから越えて、驚きで此方の壁をぶち破ってくる。
来てくれる。

まだ自分の事は信じられずに不安は完全には拭えないけれど、彼の言葉は信じる事が出来るから。
佐助は握られた手を己からも握り返し、その熱を祈る様に額に押し頂いた。







願わくば、この熱を失う事の無いように・・・
二人離れる事なく最期の時までいれますように・・・・






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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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