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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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支部にだけあげてブログにあげていませんでした。
ツイッタでいつもお世話になっているりらい先生のお誕生日に差し上げたものです。










・佐幸
・戦国

※何でも許せる方向け










【北の国から真心を】












この所、幸村には疑問に思う事があった。
それは己の忍である佐助の事。
ここ最近彼はやたらと頻繁に城を空けるのだ。

否、忍の彼が城を空ける事は昔から間々ある事だった。
諜報、偵察、その他諸々。
忍の仕事は寧ろ圧倒的に外でのものが多いと言える。
長であり指示を出す立場の佐助は他の忍達よりはその機会は少ないかも知れないが、それでもやはり自ら動く事も有り城を離れる事は多かった。

にも拘わらず幸村が佐助の動向を気にしているのはどうやらそれが仕事ではないようだと気付いたからだ。



越後が帝の傘下となった事で甲斐とは一時休戦となり、西は豊臣が徳川関連でごたごたしており大きく動きが取れない状態。
その中で奥州と同盟を結んだ甲斐は現在情勢が落ち着いており。
信玄にも今は待ちの姿勢を取ると言われた幸村はならば今の内にと思い至り、日頃休み無く働いてくれている忍達に交代で休みを取らせていた。
佐助が頻繁に出掛ける様になったのはそれからだ。
ふらりと出掛けては日が沈む頃に帰って来る。

否、休みを何に使おうが、それこそ休もうが出掛けようがそれは佐助の自由である。
分かっている。
しかし今まで無かった事なだけに幸村もどうにも気になった。

それだけではない。
行き先を佐助が教えてくれない事も幸村の不安を煽る要因だった。
何度か幸村は出掛けの佐助を捕まえ何処に行くのかと聞いてみたが、佐助は毎度はぐらかすばかりで答えを教えてはくれなかった。
その後忍隊に聞いてみた所、どうやら佐助の足繁く通う先が奥州である事までは分かったのだが、結局目的は分からないまま。
何故教えてくれないのか。
何か隠しているのか。
どうしても気になった幸村は次の佐助の休みを主特権で事前に調べると己の休みを調整し、こっそり佐助の後を尾ける事に決めたのだった。










とは言え幸村も既に武田の大将を任された身。
当然一人で出歩く訳には行かず、護衛にと才蔵に供を頼んだ。
才蔵を選んだのは忍長たる佐助を尾行するのに幸村の補佐しつつ見つからずにいられるのは同等の実力を持つ彼しかいないと思ったからだ。
この人選は正しかったらしく、小助には僕らじゃ幸村様がいなくても見つかっちゃいますよと言われ。
己がいなくてもと言う所に若干の引っ掛かりを覚えたりもしたのだが。
閑話休題。

「面倒事を頼んですまぬな、才蔵」
「いや。休みに出掛ける主を護衛するのは当然だ。貴方が気にする事では無い」

寧ろいつも猿飛がさも当たり前の様に持って行くその任務は忍達の垂涎の的であり、今日も長の尾行と言う目的がなければ皆飛び付いた事だろと言うのに幸村は思わず笑った。
才蔵は時折こうして真顔で冗談を言い幸村の気持ちを解してくれる。
流石副長。
細かな所まで気を配る男である。

「しかし、猿飛め。主の御心を煩わせるとは・・・」

才蔵が忌々し気に呟いた先には旅人を装っているのか笠を目深に被った佐助が歩いていた。
近づき過ぎると気付かれてしまうとかなり距離を取っている為幸村には見えないが、笠の下の髪は術で黒く見える様にしているらしく幸村は非常に不満を感じているのだが、今それをここで騒ぎ立てる訳にはいかないので我慢をする。

佐助が向かったのはやはり奥州で、彼は国境までは烏で一息に飛んでしまうとそこからは徒歩で街道を真っ直ぐ海の方へと歩いて行った。
途中通りかかる町では商店を覗く様子も見えるらしく、何かを探しているのかもと才蔵が言った。
しかし、それにしても何故奥州まで来ているのか。
幸村には腑に落ちない。
甲斐では手に入らないものなのか。
確かに寄る町寄る町何処も活気づいてはいるのだが、それならばもっと近隣の国でもいい筈だ。
幾ら同盟中とはいえ態々奥州まで、しかも何度も足を運ぶと言うのはこの地に何かあるのではないか。

そう。
幸村には一つの懸念があった。
佐助が頻繁に奥州に出掛ける様になったのは政宗と同盟を組んでからだ。
同盟を組み、今までの様な敵対した関係では無く政宗の国主振りを間近で見、己よりも仕えるに相応しい人物だと思い至ったのではないかと。

「猿飛に限ってそれはないと思われるが・・・」
「いや、確かに佐助と政宗殿は余り仲が良くなかったが、これまでは敵対した状態であったろう?」

好敵手として主の首を狙う者に対し警戒心と反感を持つのは当然だ。
しかし、同盟を組んだ今は?
敵対していない、警戒せずとも良い状況で、政宗の立派な国主振りを見ていたら?
鞍替えを考えても無理はないのではないか。

「此度の事とて政宗殿は快く受け入れて下さり、器の大きさが・・・」
「主殿」

幸村が言いかけた言葉を才蔵が遮る。
滅多にない事にどうしたかと思えば佐助の隣に今し方話していた人物が今将に立っていた。
伊達政宗、その人が。

勿論傍には小十郎もいた。
三人は暫しその場で歓談した後、連れ立ってその道を更に先へと歩き出した。
佐助は笠を外し、髪も術を解いて黒から茜色に戻し、気を抜いた様子で歩いている。
昔ならば考えられなかった光景に、あぁやはりと幸村は絶望に似た心地に足を竦ませた。

才蔵に誘われ再び三人の後を追うが、正直な所を言えば幸村は目を逸らしたくて堪らなかった。
佐助が政宗達と楽し気に話す姿も。
共に見て回る市で政宗が佐助に何かを渡し、買い与えようとする姿も。
見たくない。
けれどもし鞍替えが真の事であればこれが当り前の光景となるのだ。
そんなのは嫌だ。
耐えられない。
思った幸村は歯を食い縛る。
佐助が他の誰かのものになるなどと――

「佐助ぇぇええ!!行くなぁぁああ!!」」

佐助が願うなら止められぬと思っていたがいざその光景を見たら堪え切れず。
幸村は尾行をしていた事も忘れて飛び出すと、政宗の手にした何かが佐助の手に渡る前にその腰に突進した。
まるで攻撃を食らったかのような佐助の呻きと才蔵の溜息、それから紙袋が地面に落ちる音がその場に響いた。










「で?俺様が鞍替えして奥州に行く気なんじゃないかと思ったって?」

海辺の町で行くな行くなと声高に叫び、周囲から痴情の縺れを疑われた二人は幸村の正体が周囲にバレ要らぬ泥を被る前にと爆笑する政宗からの城への招待を丁寧に辞退し二人帰路へと着いていた。
その途中、山中の小屋で一泊する事となった幸村は、そこで佐助の呆れ交じりの説教を受け、後を尾けていた理由を白状させられたのだが。
対する佐助の返事がそれだった。

因みに才蔵は既に先に甲斐へと戻った。
佐助がいるならば護衛は要らぬし、曰く馬に蹴られるのは遠慮したいとの事。
奥州の国境に預けていた幸村の馬はとても利口で才蔵の事も認識している為蹴り飛ばしたりはしないと思うのだが。
何か諍いがあったのだろうか。
疑問である。

その馬を外の木に結び、二人向い合う小屋の中。
幸村は久方の二人の時間に浮かれる暇もなく釈明に追われる事となっている。

「いや、お前の忠義を疑う訳ではないのだが・・・」

政宗の凄さを知っているだけに幸村は不安を拭えなかったのだ。

「お前も、あの様に共に居て楽し気であったし・・・」
「あれは、偶々鉢合わせたんだよ!何であんな所に来てんだか・・・てかあいつ、あんたから手紙で知らされたとか言ってたんですけど!?」

何言ったのと佐助が問うので幸村は簡単な内容を掻い摘んで説明する。

「佐助がそちらに所用で出向く様なのでその動向を伺う為に某も参りたいと・・・」
「何で態々・・・」
「もし何かあった時に内密で領地を訪れた事を勘ぐられ、同盟が揺らぎでもしたら困るであろう」

だから予め知らせておいたのだと。
後ろ暗い事はないのだと示す為に。

「政宗殿は快く受け入れて下された」

送った文を見た政宗が声を上げて笑い認めた返事には、あんたにそう言う心配はしていないから好きにしなと書かれていた。
彼の器の大きさが垣間見れた瞬間だった。

それに幸村は感心し、安堵し、そして同時に不安になった。
お館様には及ばないまでも政宗の立派な国主振りは同盟を組んでからこれでもかと言う程に気付かされた。
これまでは幸村は一介の将にすぎなかった為にそこまで感じていなかったが、武田の大将を任されその立場の責を知り、彼との差を深く思い知った。
そしてそれは最も近くにいる佐助も同じ筈で。

「未熟で色々とままならぬ俺に、お前が鞍替えを考えても仕方がないのではと・・・」
「はい、そこまでー」

情けない事に自分の言葉で落ち込み下がる幸村の首を、佐助が無理矢理引き上げ止める。
両頬を包まれ強引に合わせられた佐助の瞳は僅かに剣を含んでいる。
しかし投げ掛けられた言葉は優しいもので、幸村は込み上げるものにぐっと唇を噛んだ。

「未熟なのはまだ大将になったばかりなんだから仕方ないだろ。それでも頑張ってるのは皆知ってるから、そうやって自分を卑下するな」
「・・・っ」
「それに、あいつだって右目の旦那の苦労話聞いてたら直ぐ立派な大将になったとは思えないし。てか、今日だって態々野次馬に来るとか子供もいい所でしょ!」

子供と言うより悪ガキか。
佐助は忌々し気に鼻で笑った。

佐助曰く、先にも言った通りあの町で政宗と会ったのはただの偶然であり、幸村の思っていた待ち合わせなどではなかったらしい。
と言うより寧ろ原因は幸村らしく。

「あいつ、あんたから手紙貰って面白そうだからって態々領内を探させて見に来たんだってよ!」

仕事も大急ぎで終わらせて、だ。
普段からそれぐらいやる気を見せて下さればと小十郎が呆れていたと佐助は言った。
何だか自分と佐助の様な話に幸村の肩の力が抜ける。

「し、しかし、その後も何やら楽し気にお前は・・・政宗殿と一緒に行動を・・・」
「あれは、あいつがあんたの話をするから・・・それに、一緒に動いたのは探し物をするのに丁度いいと思ったからだよ。流石に南蛮渡来の物を探すのは俺様でも苦労してさ」

そもそも城を空け奥州に行っていた理由を佐助は漸く話してくれた。

「これ、探してたの」

差し出したのは政宗が佐助に渡そうとしていた紙袋だった。
実は既に一度開封し、中身は囲炉裏の鍋の中で煮立ち白い湯気を上らせている。
紙袋には何やら仮名を尖らせた様な文字と、その下に漢字が三文字ほど書かれており。

「香・・・楜・・・阿・・・?」
「ここあって読むらしいよ、それで」

椀に鍋の液体を注ぎ幸村に手渡しながら佐助が言った。

黒い液体。
甘い匂いだが汁粉とは違う。
嗅いだ事の無い匂いであった。
しかし鍋で湯に溶く前の粉の段階で佐助が舐めて毒見はしていたし、何より佐助が自分におかしなものを渡す筈が無いと信じて疑わない幸村は迷いなくそれを口に含む。
佐助がそんな幸村の心情を察し苦笑している事も知らず。

「・・・っ!?甘い!!」

美味しい!!
今まで味わった事の無い甘さに幸村は目を輝かせると思わずと言った様子で声を上げた。

素直な幸村の反応に目を眇め、佐助は手を伸ばし椀を受け取るともう一杯と鍋の中身をよそってくれる。

「さっき舐めた時は甘さに驚いたけど、大将はやっぱり気に入ったか」

そうしながら語ってくれた顛末は、つまりはこう言う事だった。

同盟を組んでから話す機会の増えた小十郎と、何かの話の折に佐助はココアの存在を聞いた。
是非欲しいと思った佐助は小十郎から詳しく話を聞こうとしたがそれはその甘さ故に政宗には好まれず、購入したのはそれ一度きりとなった為に小十郎も詳しくは知らないとの事だった。
仕方なく佐助は自分で調べ探す事にしたのだが。
海に接する国は多くあれど、南蛮からの物を探すならやはり奥州か大友の所が確実だ。
更に奥州に一度入った実績があるのならばそこで探す方が可能性が高いと言えるだろう。
しかしいつ入るかは日の本で幾ら調べても分からず、また流れた品が海から離れた町に入る事もあると言うので何度も通う必要があった。
頻繁な外出の理由はそう言う事だったのだそうだ。

「・・・片倉殿も、政宗殿に?」

聞き終わり納得した幸村は、途中で気になった事を佐助に尋ねる。
佐助が己にと思ってくれた様に、小十郎も政宗にと考えたそれは。

「そう。これ、気持ちを落ち着けたり緊張を解したりする効果があるらしいんだよね」

小十郎も政宗が国主になったばかりの時に気を張っている彼を気遣い手にしたらしい。
まぁ、結果は前述の通りだったらしいが、幸村には丁度いいのではと勧められたのが最初。
どこの主従も通る道なのかねぇと佐助が笑う。
それは佐助の気遣いの他に、慣れぬ立場に戸惑うのは己だけではないのだと遠まわしに言われた気がした。

そう言う事情だった為、今回の件に関して小十郎は直ぐに事情を察してくれたらしい。
政宗は揶揄ってくるのが鬱陶しかったそうだが。

「南蛮の物を探すには役立つから手伝ってもらったんだよ」

それは功を奏し、政宗は紙袋に入った佐助には読めぬ文字のそれを直ぐに見つけて教えてくれた。
当初嘘も疑った佐助だが小十郎も頷くのでそれなら間違いないと納得し、受け取ろうとした所に幸村が突っ込んで来たと言う訳だ。

「す、す、す・・・すまぬぅぅぅ!!」

己の為にと動いてくれていた男を疑ってしまった事が恥ずかしい。
幸村は頭を下げ素直にそれを謝罪する。

「俺はてっきり、不甲斐なさに愛想を尽かされたのではと・・・」
「そんな事で愛想尽かす訳ないでしょ。言ったじゃない。頑張ってるのは分かってるって」
「だが・・・」

それより忍に頭を下げる事を窘め、顔を上げさせそのまま頭を優しく撫でる佐助に幸村はもう一つ気に掛かっていた事を尋ねる。
元々幸村が自信を無くしたのは此方が大きな要因なのだが。

「最近・・・大将になってから、お前は妙に素っ気なくなった・・・」

以前は手を伸ばせば直ぐ届く場所にいたのに、今は数歩離れた距離を崩さない。
それに関しては佐助にも言い分は有り、それは幸村にも理解出来る。

大将になったばかりの幸村に、武田の皆は基本的には好意的だがやはり中には不満を抱き粗探しをする輩も少なからずいた。
そう言った者らはただでさえ副将に忍を置いた事を快く思っていない。
過度な構いや接触は付け入られる隙を与えると、佐助はそれを警戒していたのだと。

しかし普段はその状況で、休みの日は出掛けていなくなってしまうとなれば幸村が不安になるのも仕方ない。

「普段構えない代わりに何かって考えたのがこれだったんだけど・・・」

まさかそれが不安を増長させるとは。
ごめんねと同じように素直な謝罪と、それから優しく撫でられればそれだけで不安は溶けていく。
但し、と佐助はそれから少し怒った様に付け加えた。
怒ったと言うのは違うだろうか。
どちらかと言えば拗ねたと言った方が正しい様な・・・

「あんたには忍としてだけじゃない俺様もいるんだから、そっちも信用して欲しいもんだよね」

言って両頬を包まれる。

佐助が言うもう一つとは忍としてでは無い恋人としての彼を指しているのだろう。
頬を捕らわれ上向かされる。
先程と体勢は同じだが見つめる瞳が違っていた。

「新しい責の重さに苦心して、でも逃げずに頑張ってる恋人を見捨てて出て行く訳がないでしょう」

その恋人を置いて外出していたのは佐助の方だが、幸村はそれには気付かない。
すまぬともう一度告げる唇に仕置きの口付けを一つ。
しかし佐助は口を舐めた舌をそのままに顔を上げ、笑い。

「あっま・・・っ」

そんな事を呟くから。

それは先のココアの味だ。
お前の俺への心なのだから観念せよと幸村も笑った。
















以前ココアの話に乗って下さったりらい先生のお誕生日に・・・(※遅刻)
鍋ココアの話を書くつもりが前振りが長くなり過ぎました(汗)

先生、お誕生日おめでとうございました!



ココアの漢字は本来「加加阿」らしいんですが、「香楜阿」のがココアっぽい読みなのでそちらにしましたとどうでもいい説明。
因みに佐助が距離を置いていたのは同盟を組んでから仲良くなった政宗への嫉妬もあるのですが、それは絶対教えてくれない。


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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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