忍者ブログ
愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
[277]  [275]  [274]  [273]  [271]  [272]  [270]  [267]  [269]  [268]  [266
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




ツイッターでお題の投票をしてたものです。
結果はこうなりました。
投票有難うございました!!
https://twitter.com/sayori_888/status/994521389221621760










・戦国
・佐幸
・何でも許せる方向け

※破廉恥場面はありませんが、それをしようとしている二人のはなしです。





【三箇夜の】












屋敷の者達も皆寝静まり、夜の帷の落ちた邸内。
しかし一番奥の一室だけ薄く灯りが点っていた。

そこは屋敷の主である幸村の閨だ。
常であれば真っ先に灯りが消える場所であるが、今日ばかりは灯りが一つ残されたままになっていた。
残されたままの灯りに照らされているのはそれを命じた幸村と命じられた佐助だ。
二人は敷かれた褥の上に向かい合って座り、互いに気まずそうに俯いている。
長く共に在り誰より近しい筈の二人の間にこんな空気が流れるのは初めてで。
しかしそれは仕方ないとも言える。
何故なら二人は恋仲となり、いよいよ初めての夜を迎えようとしているのだ。




こう言った情交に関して、幸村の方は当然経験などある訳も無く。
佐助も仕事としてなら山程あるが、そも忍として心は捨てた筈だったので想いを通わせた相手との夜など初めてだ。
その所為か互いに緊張を移し合ってこの空気。
如何ともし難い。

とは言えやはりここは一応経験だけはある己が動かねば恐らく事は進まない。
よしと意気込んだ佐助はいざ触れようと幸村に手を伸ばしたが。
同時にそれまで無言であった幸村が突如として口を開いた。

「佐助!」
「あ、はい!」

偶然なのか態となのか。
このタイミング。
おまけに妙に真剣な声で。
まるで任を言い付ける時の様に呼ぶから佐助も咄嗟に手を引いて己の膝の上に戻すと思わず座る己の姿勢を正してしまう。

すると幸村も姿勢を伸ばし寝衣の裾まで直して佐助に改めて向き合った。
これから乱す筈の裾を、態々。
何だか初夜から遠ざかっている気がする。

そうして幸村が何を言うのかと佐助が身構えていると、彼は神妙な面持ちで一度咳払いをし、必要な物は此方が用意したと一言佐助に告げてきた。

「必要な・・・もの?」
「そうだ・・・そのっ、し、し、初夜ともなれば、色々と入り用であろう」

幸村の言葉に佐助は驚きを隠せずにいた。
よもや幸村からそんな発言が聞けるとは。
初夜に入用と言えば恐らくは横文字の事だろう。
挿れる後ろを拡げる際に使用するそれ。
手練手管はあるとは言え、初めての相手だからと佐助も一応用意しておいたが。
幸村もそこまで気が回るようになり、あまつさえ購入までしていたとは。
これは随分と大きな成長だ。

幸村が隣の部屋から用意した物を取ってくると背を向けるのに、これは不要となりそうだと佐助はそっと手にしていた箱を背後に隠―――――そうとしたのだが。
佐助が隠した小さな木箱に対し、幸村が持って来るのが何だかやたらと大きなもので。
何だか様子が違うぞと佐助は思わず離そうとしていた木箱を改めて手元に戻し、訝しんだ視線を向ける。

幸村が隣の部屋から運び、佐助の前に置いたのは大きな皿に乗った何故か大量の、餅。
しかもその皿は4つもあり十五夜かと思わず突っ込みたくなる有り様だ。

重ねて言うがこれは初夜だ。
初夜の、筈だ。

「えーと、旦那・・・その餅は・・・」
「俺とてな、お前ばかりに任せておけぬと色々と作法を学んだのだ」

曰く、幸村が読んだ本には初夜には四つの銀皿に年の数の餅を用意しそこから互いに一つずつ餅を食べるのが慣わしだと書いてあったとの事だった。
だから用意したのだと彼は得意気にそう言った。

幸村が言っている儀式。
確かに佐助も聞いた事がある。
確かにそう言う慣わしはある。
あるにはあるが、それは帝などのやんごとなき位のお方の話である。
加えてそもその儀は子宝を願う為のものである為男同士の自分達には関係がない。

そんな突っ込みどころが満載の知識であるのだが、幸村は非常に真剣に餅を食べ始めるので佐助としては言いづらい。
おまけに、さぁお前の番だと期待を込めた目で見詰められ皿を渡されては食べない訳にはいかないではないか。

噛み切ってはいけないと言うそれを一口で頬張り、もっちゃもっちゃと口の中で咀嚼する。
そうしながら幸村が、これはこれで美味いが佐助が作った方がやはり美味いな、などと言う称賛の言葉にはもうどう返したらいいのか分からない。
それはどうも、とでもお礼を言うべきなのか、ここは。

正直な所この時点で雰囲気は既にぶち壊しとなっており、佐助としては何だか茶でも持って来た方がいいのかと言う気分だが。

一方の幸村は。
餅を4つ全て咀嚼し終えると。

「よし、いいぞ!」

来いとばかりに両手を広げ、佐助が来る事を疑っていない。
この腑抜けた空気に気づいてないのだからある意味凄いと言うべきか。
全くもって仕方がない。

しかしもっと仕方がないのは。
そんな間の抜けた所も可愛いと思ってしまう自分である。

本当にどうしようもないものだと。
佐助は苦笑し幸村の体に覆い被さると、餡子の残る口端に甘い口付けを落とした。











ツイッターでの投票より「初めての夜」でした。
投票くださったかた、有難うございました!!



PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
早和
性別:
非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
P R
忍者ブログ [PR]
Template designed by YURI