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今年ももう終わりですね!
何だかあっと言う間でしたが、佐幸に塗れた一年でとても楽しかったです!
そんな今年最後のSSがちょっとうす暗い感じなのはちょっとあれですが・・・(汗)
来年もこんな感じで、マイペースに佐幸萌えを吐き出していけたらいいなと思います。
皆様、一年有難うございました!
よいお年をお過ごしください!m(__)m
・佐幸
・戦国
【無量の心】
幸村は物持ちがとても良い。
と言うと聞こえはいいが、実際にはただ物が捨てられない性格だ。
解れてボロくなった着物。
毛先の曲がった筆。
端の欠けた硯、等々。
言われなければいつまででも使い続けるし、使えなくなった物も捨てずにそのままとってあったりする事もある。
その為、佐助にはよく怒られた。
仮にも一城の主が余りみすぼらしい真似をするなと。
それは確か、穴の開きそうになった袴を履き続けようとした時に言われた言葉だ。
余りにも長く使い続けるので、いっそ何か拘りがあるのかと聞かれた事もある。
そこで頷ければまだ良かったのだが、実際には別にそう言った事は特にない。
拘りは無い。
ただ幸村にしてみれば、まだそこにあって形を留めている物を何故捨てるのかと言うだけだった。
それを告げた時、佐助は何だか不満げな表情をしていた。
どうやら幸村の答えが気に入らないようで、眉を潜めていた。
そして言った。
例え形がそのままあっても、使えなくなった、或いは使い難くなった物は要らないものと同義なのだと。
そう言う物は新しく買い替えるなり何なりをして、直ぐに捨てろとも言った。
何故捨てるかは、使わない物を残しておいても邪魔になるだけだから、との事だ。
成る程、如何にも掃除の得意な佐助らしい言葉であると言えた。
しかし、幸村はその時は佐助の主張に納得がいかなかった。
多少難はあっても使えるのに、と思ったのだ。
そしてその佐助の言葉が自分ら忍を重ねていると気付いた時には腹が立った。
忍は道具であると一般的には言われている。
忍らしからぬとよく言われる佐助ではあるか、その根幹はやはり変わらず、どこまでも忍のそれだった。
それが幸村は気に入らない。
故に反発するように尚更物を大事に使ってとっておくようになり、師走の大掃除の折には捨てる佐助としまう幸村の間で激しい攻防が繰り広げられ、一種の上田の名物のようにもなっていた。
閑話休題。
話が逸れたが。
その時はどうしても納得が出来なかった幸村であるが、今になって確かに佐助の言葉は正しかったかも知れないと、少しばかりそう思い初めていた。
使えない物は要らない。
要らない物は捨てるべきだ。
全くその通りだ。
「すまぬ・・・」
幸村が己の間違いを認め謝ると、佐助は険しい顔で口を開く。
開くだけでなく何か言葉を発したようであったが、それは己の喘鳴に紛れてよく聞き取れない。
喋るな、と言われたような気がしたがそれが正しいかどうかは自信がなかった。
そこで、音が少しでも聞き取り易いようにと呼吸を止めようとしたのだが、上手くいかずに噎せてしまう。
拍子にコポリ、と。
幸村の口端から赤い血が滴り落ちた。
負け戦だった。
相手の策が信玄の読みを上回り、武田は苦戦を強いられた末に敗走。
特に先鋒を務めた幸村の隊は殿をも担う形となり、これ以上ない程の被害を被った。
寧ろ壊滅に近いと言ってもいい。
幸村も例外なくその過程で深手を負った。
しかし、奮戦の甲斐あり時間はかなり稼げたので信玄はきっと無事甲斐まで戻れただろうと思われる。
ならばいいと。
追っ手を討ち払った林の中、幸村が満足の心持ちで死を覚悟したところに佐助が現れた。
佐助は幸村の惨状を見るや、その身体を抱えて更に林の奥に入った。
そして林の入り口が全く見えない所まで来ると、大木の陰に隠す様に幸村の身体を下ろした。
それが今この場所だ。
己の衣服を細く裂き、懐から竹筒や麻袋を乱雑に取り出す。
傷の手当てをしようとしているのだろうとは直ぐに察せられて。
まず血止めの薬を負傷した腕に巻こうとするので、幸村はそれをもう片方の手でやんわり押し返して止めさせた。
「俺、などに使うくらいなら・・・お前が使え・・・」
自分に手当は不要だと幸村は言った。
佐助もあちこち怪我をしている。
幸村程重症ではないけれどかなり深いものも多いようで、装束に赤い染みが幾つもあった。
まあ、その染みは今は幸村を抱えた時についた血に紛れて分かりにくいのだけれど。
加えて動く時に左側を庇ってるのにも幸村は気付いていた。
「左肩か、腕をやられているのだろう?」
そこに使えと幸村は言った。
でなければ、怪我人は甲斐に戻れば山程いるのだ。
薬も無限ではない。
佐助が不要だと言うのならば、その者達にとっておけばいいと思った。
とにかく自分には必要ないと。
しかし、それを告げると佐助は烈火の如く怒り怒鳴った。
あんたを差し置いて他の奴に、況してや忍なんぞに使う訳がないだろうと。
幸村は一軍の将だ。
身分を考えれば佐助の意見は尤もだった。
しかし、それはあくまで怪我が治る見込みがあるならばの話だ。
「これが・・・、止まる訳がなかろう・・・」
何しろ幸村の腕は片方を丸ごと持っていかれているのだ。
そんな者に使うのは無駄と言うものだろう。
勿体ないにも程がある。
「それより、こんな・・・所にいては・・・いつ、敵軍に見つかるやも知れぬ。お前も疾く、逃げ・・・よ」
甲斐に戻れと幸村は言った。
一応殿として追撃部隊は討ち果たした筈だが、相手の本隊がもし追ってきていたら。
或いは残党がいたら。
林の奥とは言え、幸村の首がまだ獲られていないと知れれば恐らく探し出そうとするだろう。
そうなったら、この怪我では佐助も危ない。
「主の首を・・・やるのが、嫌ならば・・・、首だけとって持ってゆけ。お前の手にかかって死ねるなら・・・俺は、嬉しい・・・」
それは決して反逆などではない。
幸村が望むのだからそれは介錯と言う事になるだろう。
幸村は本心からだったのだが、言うと佐助は更に激昂して。
ふざけんな、と。
そう繰り返して、ぎゅうぎゅうと乱暴に傷口締め上げてきた。
それから、少し黙れと強い口調で幸村を制する。
こんな佐助を見るのは初めてだった。
何故、と意志を無視された手当を受けながら幸村は思う。
無駄を嫌う佐助が、何故。
この傷ではきっと助からない。
もし命があっても、片腕では以前のような戦働きは出来ないだろう。
政が苦手な幸村は、その価値の大半を失うのだ。
なのに何故。
「要らぬ、ものは・・・捨てろと・・・使えぬものは捨てろと・・・そう言うたのはお前ではないか・・・っ」
声が詰まるのは息が苦しいからか、それとも他の何かかなのか。
何処か責めるような口調になりながら言うと、佐助はそれには答えずに奥歯を噛み締めただけだった。
そして無言のまま、幸村をおぶって歩き出す。
いつもならば駆けるところをそうしないのは、佐助も疲弊してるからだ。
そんな状態であるのに、こんな役に立たない壊れかけのものを捨てずに抱えて。
それこそ愚か者のする事ではないのか。
「馬鹿者が・・・」
ひきつりながら幸村が詰るのにも佐助は一切答えなかった。
答えぬまま只黙々と歩き続けていた。
こちらを振り向きもしない。
幸村はそれも不満で、同じ言葉を繰り返した。
しかし、三度めにその言葉を口にした時、佐助が堪え切れないように肩を震わせ、一度だけズ、と鼻を啜ったのが聞こえてそれ以上を言えなくなってしまう。
だから。
「馬鹿者・・・」
最後にもう一度だけ繰り返して。
後は残る力の全てで佐助の背にしがみついた。
それでも、それは縋る程度の力だったけれど。
「旦那・・・?旦那!」
視界が霞んで、佐助の声も何処か遠いものになっていく。
しかし、次第に薄れゆく意識の端で、使えない物は捨てろ等とは二度と言わせまいと。
ただそれだけを、幸村は強く思った。
終
※死んでません。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。