愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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最近はほぼツイッタに入り浸り状態なのですが、そこでいつもお話させて頂いているムジ様が不眠幸村の話をしていて、それに萌えて思わず突発的に書いて捧げてしまったものです。
ムジ様押し付けてスミマセン・・・素敵ネタをいつも有難うございます!
・佐幸
・戦国
・3、宴設定
【暗闇のゆりかご】
もう日を跨ぎ、草木も眠る丑三つ時。
しかし、上田の城の一室からはまだ仄かな灯りが漏れていた。
物音や声はしない。
時折、ホンの僅か、忍の耳に届くぐらいの紙の擦れる音が聞こえるくらいだ。
政務は日中に全て終わらせていた。
恐らく兵法の書でも読んでいるのだろうと予測を付けながら、佐助は庭の木の上からその灯りを眺めていた。
信玄が倒れ、幸村が大将の座を継いでから、武田は衰退の一途を辿っていた。
仕方ない。
信玄の存在は余りに大きすぎるものだった。
大将の座を継いだ幸村はまだ未熟。
否、能力はある筈なのだが上に立つ者としての経験が圧倒的に足りない。
加えて信玄と言う指針を突如欠いた動揺と、その代わりを完璧に勤め上げねばと言う思い込みからの緊張で思うような動きが出来ないまま。
そうして失敗をすれば追いつめられて更に動きが悪くなると言う悪循環。
上の緊張は下の者にも伝わり今や武田全体がその力の半分も発揮できないと言う様なそんな状態に成り果てていた。
敗戦を重ねた武田は領土を減らし今や強国とは認められておらず、無害と言えば聞こえはいいが攻めるに無意味な国として放っておかれているのは果たして良いのか悪いのか。
しかし、それで時間を稼げることで助けられているのは事実だ。
その放っておかれている今の内に何とか体制を立て直すべく幸村は今必死になって日中は政務に励み、そうして漸く時間を取れる夜にこうして兵法を学び直しているのだが、その成果は芳しいとは到底言えない。
佐助は庭から屋根裏に移動して天板を外してそっと部屋の中を見る。
そこには脇に様々な兵法書を何冊も重ね、肩肘をついて頭を抱える様に机に噛り付いている幸村の姿が見える。
片手でくしゃりと髪を掴み、離してはまた掴む。
幸村が苛立ったりもどかしさを感じている時の癖だ。
目の下には隈。
当然だろう。
もう何日もこんな日が続いているのだ。
日々気を張り詰めさせ、睡眠時間も減ればやつれもすると言うものだ。
もっと気を楽にと言っても幸村の性格がそれを許さない。
ゆっくり眠ってからの方が効率もいいと何度か進言してはみたものの、焦りがそれを受け入れさせない。
日々憔悴していく幸村を見ているしか出来ない佐助もまた、もどかしくて仕方がなかった。
丸く俯く背中を見ながら思いを馳せる。
昔は丑三つ時なんて怖がって起きていられなかったのに。
目が覚めたら佐助を呼びつけて眠るまで側に居ろだなんて言っていたのに。
「大将・・・いい加減寝ないと、明日の参議に響くぜ・・・?」
「あぁ・・・だがこれだけでも読んでしまいたいのだ」
そっと下に降りて声を掛ける。
しかし。
俺は大丈夫だからお前は先に休んでおれ、だなんて。
昔の我儘の方が余程良かった。
「大将。ただ焦って闇雲に兵法書漁ったって成果はついてこない」
「分かっておる・・・だが未熟な俺はこうするしか出来ぬのだ・・・」
「そうやって思い詰めるのも良くないって前にも言っただろ」
「すまぬ・・・お前にも皆にも面倒をかける・・・」
何度も謝る幸村に、そうじゃないと言ってやりたくなる。
いっそ辛いなら辛いと泣き喚けばいいのに。
それすら、自分が武田をこんな状況まで陥れたと言うのに泣き言を言う訳にはいかないと頑なに拒む様は痛々しく。
歯噛みした佐助はいっそ無理矢理と机脇の切燈台の火を吹き消した。
一瞬にして闇に包まれる室内。
「佐助・・・!?」
書を読む術を奪われた幸村が慌てた様に声を上げるが、佐助は無視して突然の闇に目が慣れず視線を彷徨わせている幸村の背後に回ると片手で目を覆い、もう片方の手で肩を抱き寄せ自分に凭れかからせた。
そして。
「今なら、真っ暗だから誰も見えない」
告げたのはそれだけだった。
しかし、その短い言葉で佐助の言わんとした事を察したのだろう。
幸村がひゅっと息を飲む。
真っ暗とは言っても夜目の利く佐助には幸村の様子は良く見えたし、何よりこれだけ近くに触れていれば変化は直ぐにでも伝わってくる。
ひくりと何度か上下する肩。
触れる滴。
けれど両の手に伝わる感触に、佐助は気付かぬ振りをした。
そうして吐き出して落ち着いたのか、胸元でゆっくりと呼吸を繰り返す幸村に気付いた佐助はそのまま身体を己の膝の上に横たわらせた。
本当は褥に寝かせた方がいいのだろうけれど、身体を少しでも離そうとすると幸村の気がまた僅かにだが張り詰めるので仕方なくそれは諦めたのだった。
男の硬い膝でも無いよりはましだろうと枕にさせて、眠りを誘う為に目元は手で覆ったまま肩を同じ間隔で優しく叩く。
やがて聞こえて来た寝息に安堵して。
「ゆっくりおやすみ、大将」
今だけでも安らかな眠りを、と。
佐助はそっと囁いた。
終
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プロフィール
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早和
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非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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