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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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twitterにて、恐れ多くもとま先生元ネタであさぎ先生とコラボさせて頂く事となりましたものです。
ネタの説明はSS前半が殆どそうで、おかげで佐幸色が薄くなってしまったのが心残りです。
偉大な先生方スミマセン・・・私の力量ではこれが精一杯でした・・・










・佐幸(と言うか主に帝)
・戦国
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【熱の在処】











これまで見た事も無かった様な不思議な絡繰りを義輝は眺めていた。
それは知人の松永から譲られた四角い箱。
真ん中には透明な板が嵌め込まれていて、そこには絵の様に見える、しかしそうではない何かが映っていた。
聞いた所によるとこれはもにたぁと言うらしく、特定の場所の様子を他の場所にいながら見る事が出来るものらしい。
今映っているのは何処かの部屋だ。
その中央には人が倒れている。
義輝は今、ある実験の真っ最中であった。



きっかけは松永から聞いた話であった。
一色のみの部屋にいると、人は気が狂うのだと。
ただそれだけで何もしなくても、だ。
それは大変興味深い話で、ならば試してみようと言う話になったのだ。
それが本当かどうか検証したい。
ただそれだけ。
それが実は拷問の方法であるかどうかなど、義輝には些細な事であった。

部屋を作るのは簡単だった。
仮にも帝と呼ばれた地位にあったのだ。
財力はある。
回転する、選んだ色によって入り口の変わる部屋等と言う大掛かりな絡繰り部屋に比べれば一面を単色にしただけの普通の部屋など容易いものだ。
続いて被験者となる者だったが、それも思ったよりも楽に事が運んだ。
あんまり簡単に狂ってしまっても実験にならない。
故に多少精神力が強い者をと武将を選ぶ事にした。
すると丁度傘下の上杉が武田と戦をすると言う。
その場に赴いて見れば別働隊らしい単騎の武将が義輝の元へと向かってきたので丁度いいと連れ去る事にしたのだった。

誰でも良かったのでその時は名前も知らない青年だった。
後で調べてみるとその青年は真田幸村と言うらしい。
武田の大将の一人なのだそうだ。
武田と言えば赤備えが有名だ。
この青年も赤が好きらしく、戦装束も赤が基調となっていた。
好きな色に囲まれた状態でも果たして狂うのだろうか
思って部屋の色は直ぐに赤の色に決めた。
突然連れて来られた部屋で、目を覚ました幸村は最初は興奮したように暴れていた。
まぁ当然だろう。
何者だと叫び、出口を探して部屋を歩き回り。
しかしこの部屋は外と繋がるのはただでさえ見つけづらい隠し扉が一つあるだけだ。
そう簡単には見つけられないだろう。
そうして少しして出口が見つからないと分かると、幸村は大人しく座り込んだ。
諦めて助けを待つ事にした様だった。
そんな幸村の意外にも冷静な対応に義輝は驚いたものだ。
直接的な為人を知っている訳ではないが、調べただけでも彼は熱血で直情型の人間だと聞いていた。
もっと体力の限界まで暴れ回るものとばかり思っていたのに。
しかし、それにも松永が答えを教えてくれた。
その昔、まだ幼少の頃に彼は何度か拐かされた事があるらしい。
確かに真田と言えば彼の先々代から有名で、その子供と言えば色々な取引材料となる。
加えて長男にはそれなりの護衛がつけられていたが次男の、しかも妾の子である彼はそういう意味で殆ど目を掛けられる事はなかったのだそうだ。
良からぬ輩が狙うのも必然と言えた。
しかし、それでも今彼がここにいると言う事はこれまで何とか助け出されてきたと言う証左であろう。
そしてそれは彼が唯一与えられた忍に起因しているらしい。
どんな時でも、彼が助けに来てくれたと。

「今も同じ。彼の忍が必ず来ると彼は信じているのだろう。実に美しい話じゃないか。」

結構結構と手を叩く松永の言葉を義輝は不思議な気持ちで聞いていた。

忍と言うものは義輝も知っている。
特殊な修行を積み重ね様々な術を駆使するもの。
しかしそこに感情や野心はなく、ただ主となった者、或いは里の命をただ黙々と遂行するのだそうだ。
主と部下と言う主従関係であっても感情が無いと言う点でどちらかと言うと駒、或いは武器と言うものに近い気がする。
松永も風魔を従えているが、多少の違いはあれどその関係性から大きく逸脱はしていないように思われた。
しかし幸村とその忍は些か趣きが違うらしい。
強い信頼関係。
非常に興味を引かれるものであった。
しかし、それを聞いて義輝はふと考える。
どうやら風魔に匹敵する程優秀らしい彼の忍。
そんな忍が傍付きでは。

「この場所も、直ぐに探り当てられてしまうのではないか?」

浚う気も殺す気も毛頭ないので返す事は吝かではないが、早すぎればこの実験の結果が分からないままになってしまう。
折角ここまでしたのだ。
せめて結果が出るまでは時間を稼ぎたいところだ。
しかしそんな義輝の問いにも松永は動じない。

「何、心配はいらない」

そう言ってゆっくりとモニターを指さす。
それに促されて画面を見れば、そこに映る幸村はもう既に様子がおかしい。
焦った様にまた立ち上がり出口を探して。
怒鳴っていた最初と違い、声にも何処か悲壮感が表れている。
叫びながら壁を叩き、それも無駄だと分かるとずるずると力を失ったように座り込む。
義輝は驚いた。
先程と余りに違い過ぎる。
それを見ながら松永が解説する事には、赤い部屋は代謝が良くなるらしく、それがこの変化の要因なのだそうだ。
代謝と言われて見てみると、確かに幸村は額に汗を浮かべていた。
そしてそれは頬を伝ってぽたりぽたりと床に染みを作る。
出口探すくらいしかまだ動いてない筈なのに。
ただでさえ窓も何もない密閉空間と言うのは時間の経過が曖昧だと言うのに加えてこれだ。
まだ実際には幸村が目覚めてからは半日程度しか経っていないが、体感的には数日経った様な感覚なのだろう。
言われれば成る程、納得の結果であった。

「ここで私に一つ面白い提案があるのだが」

これなら早々に実験の結果も拝めるかも知れない。
そう思い義輝が画面を興味深く注視していると、松永は更に面白い話を耳打ちしてくる。
ここまで来ると次はどんな変化が見られるのかと興奮して止まらない。

「それは是非聞きたいな。ここまでしたのだ。勿体ぶらずに教えてはくれまいか、朋よ」

昂ぶる気持ちを隠しもせずに尋ねれば、松永はあっさりとその提案を教えてくれる。
それと言うのは意外と簡単なもので。

「何、簡単な事だ。彼も喉を潤す手立てが必要だろう

水を差し入れてあげればいいのだと松永は言った。
確かにあれだけ汗をかけば喉も乾くに違いない。
しかし一体それにどういう意図が
松永の様子から察するに、彼の言う単に喉を潤す手立てと言う訳ではないのだろう。
不思議に思いながらも言われた通り幸村の目に映らない様に水瓶を運び入れると直にその意図が見えてくる。
真っ赤な部屋、真っ赤な調度。
勿論運んだ水瓶も赤色だ。
すると気付いた幸村は突然現れたそれに不信感を抱きながらも変化があった事に興味を引かれたのか恐る恐る近づいていく。
そして喉の乾きに抗えないと言うのもあったのだろう。
恐る恐ると言う風であったが、やがて幸村はその水瓶の蓋を開けたが。
瞬間幸村は恐怖に表情を張り付かせた。
幸村が望んだ水は、それ自体は透明だが周りの赤を反射して赤く見える。
それはまるで血の様だ。
彼が恐怖を感じているのは赤い色か、はたまた血か。
遠くから見ているだけの自分達では判別は出来ないが。

「紅蓮の鬼として数多の兵を屠ってきた彼がたったあれだけで身を竦ませる。面白いと思わないかね」

怯えた様に部屋の隅で膝を抱え蹲る幸村の姿を見て松永は愉快そうに笑った。

確かに興味深い変化だった。
視界に部屋を入れない様にしているのか蹲ったまま顔を上げない幸村に、画面によって見てみると同時に近くなった音声で小さな声が聞こえて来た。
ぶつぶつと同じ言葉を繰り返している。
それは3文字の言葉。
誰かの名の様であるので恐らく先に出てきた忍の名前だろう。

「凄いな。あんなに勇ましかった青年がまるで幼子の様ではないか」

義輝は感心して手を叩いた。
これだけでも義輝には十分な結果だ。
しかし松永に言わせればまだ先があるらしい。
今はまだその忍が来ると彼は信じている。
心の支えがある。
故にまだ壊れた訳ではない。
ただ怯えているだけだ。

「だが直にそれも忘れる」

それが確定事項の様に松永は言う。
そしてその時果たして幸村がどうなるのか。
見届けられないのは残念だがと、言って松永は踵を返してしまう。

「最後まで見ていかないのか

随分と彼も楽し気にしていたのに。
驚いて尋ねると松永は振り返って口元に笑みを浮かべて言う。

「私も忙しい身でね」

それでも実験を中座させる気はないらしい。

「今度またこの館を訪れた時にでも結果を教えてくれ給え」

そう言うから。
義輝はこれはやり遂げねばと力強く頷いたのだった。

「この美しくも目出度い児戯が卿の乾きを癒す熱の一端になる事を祈っているよ」

そんな言葉を残して松永は館を去っていく。
その別れ際の一言は理由は分からないが義輝の心に強く残ったのであった。





そうして残された義輝は、一人変わらず画面を見つめ観察を続けていた。
どれ程の刻が経ったのか。
幸村はその間も何度か起き上がっては壁を叩いていたが、やがてそれすらしなくなっていた。
その瞬間を義輝は覚えている。
何度も壁を殴りつけ、手から血が流れ落ち腕が、袴が赤く染まっていった。
それに怯えて幸村は何かを叫ぼうとした。
恐らくそれはあの忍の名前だったのだろう。
しかしそれは口を開いただけで止まってしまった。
松永の言った通り、忘れたのだ。
あれだけ強く思い描いていた者の名前を。
その瞬間の彼の表情。
成る程、あれが絶望と言うものかと義輝は半ば感動の様なものを覚えたものだ。

忘却は一瞬で、その後は思い出したのか蹲り再びその大切な3文字の言葉を呟いていたけれど。
それは将に壊れた人形の様。
実験は成功と言えた。
となればここで止めるべきか否か。
思案をしてると幸村はまた新たな行動を取るので義輝は画面に食い入った。
遠くてよくは見えないけど彼は何度も腕に触れている様だった。
目は虚ろなまま。
何をしているのか。
興味を引かれ、今の彼の状態であれば凡そ気付かれないだろうと思い、義輝はひっそりと部屋に入り倒れる彼の元まで歩み寄ってみた。
予想通り幸村は気付く様子はない。
覗いて見てみると先程妙に触れていた左腕に引っ掻き傷の様なもの見えた。
何だろうとそれを読む。
傷は文字の形をしており、それは3つの言葉になっていた。
さすけと。
蚯蚓腫れのように腫れあがったその言葉。
胸を突かれた気がした。

何だろう。
この感情は。
妙に心臓が熱い。
衝動のままに倒れる身体に腕を伸ばし、果たして部屋から連れ出そうとしたのだろうか。
分からないけれど、無意識に痛々しい手を握り抱き上げようとした。
将にその時。





「その人に触るな」

いつの間に現れたのか。
首筋に冷たい刃先が走る。
小さい、けれど良く砥がれた人を殺すのに惑いの無い急所に当てられたそれは義輝も見た事がある忍道具の一つ。
それだけで、否それがなくともその背後に現れたのがこの目の前に倒れる彼の待ち望んだ忍なのだろうと直ぐに察しはついた。

「奥州に三河に大阪。さんざ探し回ったけどまさかあんたらが関わってるとはね」

首に苦無を当てたままため息交じりに呟いた彼は、何処か苛立たし気だった。
本当に日の本中を探し回ったのかもしれない。
それからこう吐き捨てた。
この誰もが天下を狙い凌ぎを削る中、まさかただの道楽の為だけに一角の武将を浚う人間がいるとは思わなかったよと。

「帝の道楽も、乱世の再来とかそんなんなら幾らでも好きにして貰って構わないけど・・・」

彼が言葉を発すると、倒れていた幸村が僅かに呻いた。
その瞬間、ほんの僅かに注意が逸れた、一瞬の隙を見逃さずに刃を当てられたのとは逆の横に跳んで距離をとると、思いの外忍はあっさりそれを許すが。
しかし。

「この人を巻き込むってならこっちも黙ってられないんでね」

言葉と共に指が何かを描く。
切ったのは陣か、呪か、他の何かか。
分からないが、義輝がそれを目視するのと同時に四方から迫った何かが身体を深く切り裂いていく。
思わず膝まずくが、男はそれを喜ぶでもなく。
そんな己には目もくれずに忍は幸村の傍へと座り込んだ。

彼が優しく呼び掛けると幸村は直ぐに目を開いた。
否、元より開いてはいたが、虚ろで何も映していなかったそれに男の姿を映し出した。
黙って二人を見ていると、幸村の唇が小さく戦慄く。
そしてつの音を紡ぐ。



さ す け



「うん、佐助ですよ」

遅れてごめんねと、呼ばれた忍は幸村が伸ばした手を静かに受け入れた。
傷ついた腕を見た一瞬、苦し気に眉潜めた様だったが今は何も言わず。
そこに一度労わる様に優しく口づけ、それからきつく縋る身体を抱き締めた。

「さすけ…さ、すけ……佐助、佐助…

幸村はまるで子供の様に泣きじゃくっていた。
緑の装束を縋る様に握りしめ。
決して放すまいと。
まるでそれが命綱の様に。
破れそうな程に軋む布地を見るに着ている方も苦しいのではないかと義輝は思ったが、彼はそんなものは何の意にも介さぬ様に黙って背を撫でていた。

心臓が熱いと思った。
まるで先の様に。
思ってぼんやり二人を眺めていると、佐助は振り返り一度鋭い視線を向けた。
しかしそれから何もせず、そのまま影に消えて行った。
視線に込められた殺気は義輝ですら一瞬息を飲む程で。
本当は今すぐにでもこの身を切り裂きたかったであろう。
しかしそれをしなかったのは、単に今すぐこの場を離れた方がいい幸村の身を案じたが故の行動だったであろう事は想像に難くなかった。
彼がいなければ相手も実力も立場も何も考えずに向かってきたに違いない。
あの忍の意志で。
忍に意志があると言うのもまた興味深いとは思ったが、今はそれよりも強い思いが義輝にはある。

「これは…何だ…

先程から胸を走る、今まで感じた事のない感覚。
義輝はそればかりを考える。
身の内に滾る熱。
これを何と呼ぶのか
そうして思い出したのは松永の去り際の言葉だ。
彼は二人の事を知っていた。
とすれば、この結末も予期していたのかも知れない。
彼に聞けばこの感情も理解できるようになるだろうか。
否、彼でなくとも他の誰でもいい。
この感情を。

思いながらも未だ義輝は部屋に一人。
そこに教えてくれる者は誰もいない。
ただ只管に願いながら、その場に立ち尽くすしか出来なかった。










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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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