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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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夏の甲子園が近づいてきています!!
楽しみです!!





更新は先日ツイッターでいつも元気を下さるみなみ様のお誕生日に書いたSSです。
頂いたリクがシリーズに合っていた気がしたので久し振りに「仔猫のワルツ」の二人で書いてみました!
ちょっと佐幸色は薄めかも。
pixivには先にうpしておりましたが此方は「夜想曲」を上げてからと思っていたので少し遅れてとなりました。










・佐幸
・現代

※何でも許せる方向け










【仔猫の輪舞曲】












幸村からのその台詞を聞いた時、佐助は非常に驚いた。
思わずポカンと口を開けてしまう程。
ポーカーフェイスは得意な方だが幸村といるとどうにもそれが崩される。
思えば彼には出会った時から驚かされ通しで、まるで自分専用のビックリ箱みたいだと佐助は頭の片隅で考える。

そんな幸村が今回佐助を驚かせた台詞は。

「ん?聞こえなかったか?俺の家族に会ってほしいと言ったのだが・・・」
「あ、いや、聞こえたけど・・・」

佐助は動揺を隠せぬまま答えた。

驚いた点は二つ。
一つは単純にその頼まれた行動に対して。
恋人の家族に突然紹介される。
その事に驚いた。

しかしそれは表面的な驚きに過ぎない。
それだけならば佐助は恐らくポーカーフェイスを崩される迄には到らなかっただろう。
驚かされたのはもう一つ。
彼から家族と言う言葉が出た事に対してだった。



彼は家族はいるが事情があるのか縁遠く、この地で一人で暮らしている。
縁遠い理由は詳しくは聞いていないけれど、時折家族の話題が出た時の彼の態度や甘え下手な性格を鑑みるに、多分幸村から望んでの独り立ちではないのだろうなと推測出来た。
彼ぐらいの歳の一人暮らしとなれば家族からの仕送りは欠かせぬであろうに、あれだけじり貧の生活を送ろうとも一切家族に連絡を取ろうとしない。
取る事を思い付きもしないと言う彼の態度はそれだけ溝の深さを伺わせる。

そんな彼が己に家族に会ってほしいと言ったのだ。
これが驚かずにいられるものか。

「会うのは構わないけど・・・どうしたの?急に・・・」

聞くと幸村は酷くはしゃいだ様子で答えた。

「お館様から連絡があってな!」

成る程そっちかと佐助は納得した。
家族と言っても単なる血縁関係の方ではなく。
家族と呼べる人。
世話をしてもらったと言う武道の師。
尊敬する育ての親の方を彼は指していたのだ。

得心はいったがそれにしてもやはり珍しいと佐助は思う。
師の話は幸村からよく聞いたし、いつか紹介したいとも言われていた。
しかしそう言う時幸村はお館様と個人を限定して話していた。
それを態々家族と括りを広くしたのはどうしてだろうか。
その理由は。

「松殿に・・・あ、松殿とはお館様の家で暮らす者なのだが・・・」

初めて聞く名に驚きながらも再び納得する。
お館様だけでなかったから家族と言ったのかと。



話を聞くと幸村はお館様の家で過ごす時に共に過ごしたその松と言う子を姉弟の様に感じていたらしい。
そして先日その松が結婚し子供が産まれたとお館様から聞き、それは是非見に行きたいと思ったのだそうだ。
その際佐助も共にと思い先の言葉になった様だが。

「どうだろうか・・・無理にとは言わぬのだが・・・」

誘う幸村の表情が妙に不安気な事に気が付き佐助はおやと首を傾げる。
断られたらどうしようと言う様に。
答えを待つその様子。
以前に幸村がお館様の話をし、此方にいらした際には佐助を紹介したいと言っていた時は単純に目を輝かせていたのに。

その理由を考えると、当時と今回で違うのは場所だった。
此方に来た時ではなくお館様の家に行くと言う状況。
お館様の家に行くと言う事は即ち幸村の地元に行くと言う事だ。
地元ならば当然実家も近いだろう。
本来の家族に鉢合わせる可能性も零ではないと言える。
それが不安なのかなと佐助はそう当たりを付ける。

思えば幸村はこれまでお館様に会いたいとは言っても家を訪ねようとした事は一度もなかったし、過去に数度会ったと言うのもお館様が仕事や用事で偶々近所に来た時だと言っていた。
彼が地元であるお館様の家を訪ねるのは余程勇気のいる事であり、故に佐助に付いてきてほしいと思い、そして断られたらと言う不安に繋がるのならばこの様子も理解出来る。

「いいよ」

だから佐助は頷いた。
優しく微笑み。
安心させる様に。
本当は幸村にそんな顔をさせる家族を思うと腸が煮えくり返りそうだったが、それを此処で幸村に示しても意味がない。
だからそれは隠してもう一度いいよと繰り返す。

「旦那の大切な人達なら俺様も会いたいし」

自分がいる事で彼が安心出来ると言うなら幾らでも。

「週末、予定空けておくね」

カレンダーに印を付けてそう告げれは幸村は花が綻ぶ様に笑った。










そうして迎えた週末。
幸村がお館様と呼んで慕う武田信玄の家を手土産を持って訪ねた佐助は、言われていた通り幸村の家族を紹介された訳だが。
ここでもまた驚かされる事となった。

「佐助!此方が松殿だ!」

紹介された幸村の姉弟が挨拶の替わりにニィと鳴く。
鳴く。
鳴いた。
ニィと。
幸村の姉弟とは猫だった。

いや、まぁ、確かに人間とは言っていなかったけれど。
よもや猫とは。
出産祝いなども真剣に考えていた佐助としては思わず脱力してしまう。

しかし幸村らしいと言えば幸村らしい。
乾いた笑いを溢しながら幸村の腕の中で喉を鳴らす彼の姉にどうもと挨拶をして頭を撫でると、そんな佐助の態度で全てを察したらしい信玄が豪快に腕を組み仰け反って笑う。

「何じゃ、幸村。猫と言うておらなんだのか!」

どうりで手土産の数が多いと思ったわいと信玄。



佐助は週末の来訪が決まってから、手土産を用意するのに幸村にこの家に住む者の人数を聞いた。
そして聞いた答えが信玄、秘書、お手伝いさん、姉夫婦の五人。
なのでそれをそのまま伝え渡した土産のプリンの数も当然五つだった訳なのだが。

渡した際のお手伝いさんの戸惑った顔の意味が今なら解る。
ペットを家族とする家は巨万とあるが、流石に土産のプリンを猫の分まで買って来る人はそうはいまい。



「何、お主らも入れれば丁度五人よ」

一緒に食べていけばいいと信玄が言えば甘い物に目がない幸村が目を輝かせる。
前日に同じ物を食べた幸村は酷くそれをお気に召していた様だからこれは幸運だったろう。
幸村でなければ確信犯を疑った所である。

ではお茶請けに用意して来ますねと下がったお手伝いさんを手伝うべく幸村が後を追う。
キッチンに猫は連れて行けないので彼の兄妹は佐助の手に託された。
全く、彼といると本当に飽きない。
佐助は苦笑し渡された猫を抱き直す。





そうして残された二人。
廊下の先に消える幸村を見送り信玄が佐助をからかう様に尋ねた。

「驚いたか」
「ええ、そりゃあもう。まさか旦那の姉弟がこーんな可愛い子とは思いもよりませんでしたよ。ねー?」

驚きはしたが幸村らしいと言えばこれ以上ない程に幸村らしいとも言える。
佐助は抱いた猫と額を合わせ同意を求める様に笑い掛ける。
するとまるで誉められた事に気をよくしたかの如く松が嬉しげにニィとまた鳴く。

「初めてと言うのに随分懐いておるのぅ」
「人懐こい子ですよね」

猫を飼った事の無い佐助は自分が特別動物の扱いが上手いとは思わない。
それでも逃げる事なく初対面の男の腕の中で喉を鳴らしてくれているのだから恐らく猫の中では甘えん坊の方なのだろう。

思って佐助は返したが、それに対する信玄の返事は予想外な事に否だった。
松は人懐こいどころか基本的にこの家の人間以外には近寄らないし、幸村の本当の家族に至っては片手の数程しか会っていないにも関わらず尽く引っ掻かれ姿を見るだけでもその毛を逆立てるのだそうだ。
初対面でこんなに大人しくしている松は初めて見ると信玄は言う。
それは何だか自分が幸村の家族に認められたかのようで嬉しいのだが、正直な所それより佐助は信玄の口から“幸村の家族”と言う言葉が出た事に思わず顔を上げた。
家族と上手くいっていない幸村を支えた師はその者達をよく知っている筈だ。
何か語ってくれるのだろうかと佐助は信玄を見て続く言葉を待つ。

「あやつの家の事は聞いておるか?」
「いえ、殆ど。旦那が話したくなったらでいいかなと思って」

先程までの笑顔から一転。
急に真顔になった信玄はまず佐助に問い掛けた。
それに佐助が答えると目を細め、満足した様にそうかと頷く。

「ただ・・・まぁ、余り上手くいってないのだろうなと言う事は何となく感じてますけど・・・」

それだけ伝えれば信玄は少し考え込み、それから語りだした。
しかしてその内容は。

「松はこの先の昔空き地だった所で幸村が見つけた子でな」

幸村の事ではない。
猫の松の事だった。
何故猫の話を自分に?
不思議に思いながらも佐助は信玄の話を聞く。
するとその理由は直ぐに解った。



その話によれば松は野良猫が近所の空き地で産み落とした子供で、元は母猫も傍にいたらしい。
何の変鉄もない、普通の野良猫の出産。
幸村も母猫に学校の給食の牛乳などを持ち帰りこっそり与えていたようだ。

しかしある日幸村がその空き地を覗いて見るとそこに母猫の姿はなく、残された子供達だけが
必死に鳴き声をあげていた。
慌てて信玄の家に駆け込みお手伝いさんに頼んで温い牛乳を作ってもらい、仔猫たちに与えながら幸村はそこで母猫の帰りを待った。
単に己の餌を探しに行ったのだろうと暫く待ったが母猫は帰って来ない。
まだ赤ん坊の仔猫達は置いていかれたのだと様子を見に来た信玄は直ぐに察した。

自然の中の事とは言え小さな命をこのまま散らすのは忍びない。
里親を探してやろうと信玄は一先ず子猫らを家に連れて行く事を提案したのだが。
それを留めたのは幸村だった。
母猫は帰るのが遅くなっているだけかも知れない、もしそうなら戻った時に仔猫いなかったら心配するだろうと。
もう少し待ってはどうかと言い、その間はカラスや犬に襲われない様自分が傍で見張るとまで意気込むので信玄はそうさせる事にした。

幸村が仔猫に何を重ねているかは一目瞭然だった。



「あれが正解だったか失敗だったかは今でも分からん」

結局一日待っても親猫は戻らず。
夜半過ぎに降り出した雨の中、仔猫三匹を抱いて戻ってきた幸村の様子を信玄は今でも覚えていると言う。
びしょ濡れのまま俯いて、仔猫を抱えて。

「納得するまでと思うたが・・・あの歳に現実を見せるのは少々酷だったかも知れん」

その話は幸村がまだ小学生の時だったと言う。
まだ義務教育も終わっていない。
そんな時から一日家に帰らなくとも放っておく幸村の家族に腹が立ったし、日が暮れてからは心配で交代で秘書に空き地見張らせていたと言うこの家の人達の方が余程家族の様だと佐助は思った。



実際そうなのだろう。
幸村にとって家族とはこの家の人達なのだ。
だってこの家にいる幸村は緊張もなく寛いで、酷く馴染んで見えるから。

「お館様!お茶をお持ち致しました!」

そう言いながら戻って来た幸村が運んでくるのはプリンだった。
お茶は後ろからお手伝いさんが運んでくる。
多分溢しそうだからだろうなと佐助は思い、そう言う所を知っている、そんな些細な事も家族ならではだとも同時に思う。

「これが土産か」
「はい!佐助が選びました故、味に間違いはないかと!」
「ほう・・・楽しみじゃのぅ」
「しかしお館様!此方も美味ですが佐助が作ったプリンも絶品なのです!いつかお館様にもご賞味頂きたく・・・」

はしゃぎ語る幸村をそうかそうかと目を細めて頷く信玄のその表情もまるで孫を見る祖父のそれだ。
血は繋がっておらずとも彼らは家族そのものだ。

「佐助!用意が出来た故お前も来い!」
「はいよ」

その中に己も呼ばれ佐助は擽ったい気持ちになりながら返事を返す。
その際抱いていた松を地面に下ろせば彼女は幸村達の元ではなく植木の下へと潜り込み、佐助は思わずその行く先を目で追った。
そこにいるのは彼女の新しい家族達。
産まれたばかりの彼女の子供だ。
松は子供達の近くに寝そべり母親らしく寄ってくる仔猫達を舐めては毛繕いをしてやっていた。

「松殿は立派な母親になったのだな・・・」

佐助が離れた猫を追いかけ見ていると、幸村も気になったのか傍にきて一緒にその様子を眺め出した。
幸せそうな家族の光景。
見つめる幸村は嬉しそうだ。
先の幸村を見守る信玄と同じ様な顔をしている。

「松殿は幸せそうだな・・・良かった・・・」

佐助の隣で幸村がポツリと呟くと、すかさず信玄が付け加える。

「それはおぬしもじゃろう、幸村よ」
「お館様・・・?」
「佐助といるおぬしは幸せそうな顔をしておるわい」

言えば幸村は酷く驚いた顔で狼狽える。
無自覚にそうしてしまっていた事が、そしてそれを指摘された事が恥ずかしかったのか、信玄に背を向ける形でしゃがみ込む。
しかし佐助も倣って隣にしゃがめば照れながらもはにかんで微笑むから。
その顔が可愛くて松を真似て幸村の唇をペロリと舐めると。

「は、破廉恥ーーー!!」

猫パンチならぬ華麗な右ストレートを幸村から貰い、佐助は向かいの植木にめり込んだのだった。



長閑な昼下がり。
明るい庭には信玄の笑い声と猫の鳴き声がニャアと響いた。
















お誕生日だったみなみ様への捧げもの。
「佐幸と親猫に置いていかれた仔猫」のリクエストでした。
みなみさま有り難うございました!!

因みに幸村が拾った猫は三姉妹で「松、きり、梅」と名付けられました。名付けの由来はお館様の家の庭にあった庭木。(そして真田丸)
きりちゃんと梅ちゃんはお館様のお知り合いの上杉さんと北条さんに貰われ此方も元気に過ごしてます。




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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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