愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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バレンタイン書いたのでホワイトデーも何か、と。
一応、そのバレンタインの二人で続きな感じです。
佐助の職場は友人を参考に脚色を加えていますが、「(職場で)こういう事出来そう?」と聞いたら「出来ない事はないと思うけど・・・」と口籠られました。
まあ、こんな事するのはうちの恥ずかしい佐助くらいですよね・・・
・現代
・佐幸
【ホワイトプリンセスディ】
幸村と恋人同士となって初めてのバレンタイン。
そこで失敗をした佐助は、一月後のホワイトデイに並々ならぬ意欲を見せていた。
実際には失敗と言う程の事ではなく、結果的に佐助は幸村からチョコも貰う事が出来たし、その後も随分と自宅でイチャイチャさせてもらい、思い返せばいい事ばかりだったのだが。
しかし、佐助的には仕事で当初の約束を反故にした上、幸村を寒い外で何時間も待たせると言う。
どちらも不可抗力とは言え情けない限りの一日で。
その為何とかホワイトデーは成功させたい、と。
かなり気合を入れていた。
相手を喜ばせるには希望に沿うのが一番であろうと、幸村にどこか行きたい所はないかと聞いたところ、久しぶりに夢の国に行きたいと言うのでその方向で考えていた。
偶に意外と言われるのだが幸村は存外夢の国が好きで、シリーズの映画なども小さい頃は良く見ていた。
勿論佐助も一緒に、だ。
昔はそれこそ一年に一度ペースで行っていたりもしていたが、ここ数年はお互い勉強や部活や仕事などがあって行っていなかったし、そこは定番のデートスポットでもある。
幸村が望むのなら断る理由はないと佐助は了承した。
休みが取れれば朝から行けばいいし、もしダメでも最近は少し割安の夕方からのパスポートもあるのでそれを使えばいい。
そうしてリベンジを果たす――・・・はずだったのだが。
「ほんっっっとに、ごめん!!」
徐々に暖かくなってきたとは言え、まだまだ冷え込む三月頭のとある夜。
深夜とも言える頃合だが、佐助は何とか時間を作って幸村の家を訪れると顔の前で両手を併せ只管に謝り倒していた。
前述の通り意気込んではいたものの、年度末の波は社会人を見逃してはくれず。
連日の残業に土曜出勤まで確定して、ホワイトデーの夢の国デートの予定は儚くも消え去った。
一応佐助も努力はしたのだが、14日を空ける為にと前倒しで仕事を進めていれば、他の人の手伝いを命じられる始末。
結局負担が増えるだけだったと理解した時の脱力感たるや。
幸村に会うや否や暫く抱きついて動けず、何かあったのかと心配される程だった。
そこから何とか立ち直り、平謝りの今に至る。
「そう気にするな。仕事ならば仕方あるまい」
「そうだけどさぁ・・・折角旦那楽しみにしてくれてたのに・・・」
「俺の方はその日でなくともいつでも行ける。しかし、仕事の方は今月中に成さねばならぬのだろう?ならばそちらが優先されるのは道理だ」
幸村はそう言ってくれるが、引き下がられると罪悪感を感じざるを得ないのは前回も経験済みだ。
かと言って粘られてもどうしようも出来ない以上困るだけなのだが。
結局、約束を反故にした時点でこちらが悪いのは確実で、申し訳なさは付いて回るものなのだ。
「しかも2回目とか・・・ほんと、有り得ない・・・」
俺様甲斐性なさすぎじゃね?と、女々しく泣きつけば、幸村はそんな事はないと背を撫でて慰めてくれる。
「社会人としての責を果たしているのだ。立派な事ではないか!」
「旦那・・・」
疲弊した身体に染み渡る。
佐助の恋人は本当に男前だ。
「時間がある俺の方がお前に合わせるのは当然の事だろう。・・・そうだ!」
そこまで言って、幸村は思いついたように顔を上げる。
「何なら、また迎えに行ってもいいぞ!」
また、とは一月前のバレンタインの事だろう。
あの時、幸村は態々会社の前で佐助の仕事が終わるのを待ってくれていた。
あれは確かに嬉しかったし、そうすれば少しでも早く、長く会う事は出来るのは分かっている。――が。
冗談ではないと佐助は首を打ち振る。
それではまた幸村に負担をかけるだけの、あの時の二の舞だ。
今度はこちらが喜ばせたいのだ。
幸村に甘える訳にはいかない。
それに、夜に外で待つなんて。
変な輩に絡まれる可能性もあるし、危ないから絶対にダメだ、と言いかけて佐助はふと口を噤む。
思い出したからだ。
前回、外で待っていた幸村に思った事。
そして、同時に思いついたことがあった。
約束の夢の国には連れて行けないけれど、その替わりに出来る事。
「じゃあ、旦那が嫌じゃなければお願いしてもいいかな。」
足を運ばせるのは心苦しいが、家から夢の国へ行くのも佐助の会社へ来るのも距離的には然程変わりはない。
問えば幸村は笑顔で頷いてくれるので、佐助は再び気合を入れ直す。
但し、着いたら直ぐに連絡を入れるようにと念を押すことは忘れなかった。
そして迎えたホワイトデー当日。
やはり終りの見えない仕事をそれでも着実にこなしながら、佐助は時折視線を横に向けては幸村の寝顔を見つめていた。
前回外で待っていた幸村を見つけた時、せめて中で待っていてくれればと思ったが、今回はそれを実行し、守衛に話しを通して幸村を社内に招き入れて佐助はホワイトデーを二人で過ごせるようにと画策した。
これなら待たせる事には変わりないが、一緒にはいられる。
また、話をするくらいならば仕事をするのにも支障はない。
今は幸村は眠ってしまっているが――部活帰りでやはり疲れもあったのだろう――そうなっても佐助は幸村の寝顔を見ていられる。
家が会社になっただけだと考えれば十分なように思われた。
今日ばかりは人に仕事を手伝わせたくせに先に帰ってしまう先輩の行動も有り難い。
それに。
(さて、そろそろ始めるかな)
仕事をきりのいい所までで止め、残りは明日に回す事にして佐助はそのままパソコンを閉じる。
そしていそいそと立ち上がる。
今日幸村をここに呼んだのは、ただ待ち時間を一緒に過ごす為だけではない。
やりたい事、見せたいものがあったのだ。
家では不可能な、この場所だから可能なものが。
「旦那・・・旦那、起きて。」
まず手始めに部屋の明かりを落とし、それから幸村の肩を揺らして声を掛ける。
気持ち良さそうに眠っている所を申し訳なく思うが仕方ない。
幸村が目覚めない事には始まらない。
しかし、中々目を覚まさない幸村に焦れた佐助は身を屈めて顔を寄せると、そっと寝息を零す唇に己のそれを重ねる。
「ん・・・む・・・」
吐息ごと飲み込むように唇を覆ってしまうと流石に苦しくなったのか頬に触れる睫毛が震え、それからゆっくりと瞼が開く。
寝起きの溶けたような瞳が可愛いと思う。
それが次第に焦点を結んで、佐助を見ると暗がりでも表情が分かる程の近い距離に驚いてボンっと発火したように赤くなるのが更に可愛くて。
佐助は仰け反って離れようとする幸村を許さずに近距離から覗きこんだままおはようと言って笑った。
「な、な、何をしているのだ!」
「何って、見たまんまでしょー。キスで目覚めるなんて、旦那、お姫様みたい」
「わ、訳の分からぬ事を・・・!」
口調は怒っているが、真っ赤な顔が全てを台無しにしている。
そんな表情、ただ可愛くしか見えない。
佐助は脂下がった顔でだってぇ、と言って笑うと、惜しみながらも身体を離し、振り返って窓のブラインドを上げる。
「ロケーションもぴったりだと思うよ。」
アルミの羽同士が合わさって畳まれていく。
その軽い音と共に隠されていたガラス窓が露になって、薄暗かった室内に外からの明かりが入ってくる。
周りのビルの電灯がぼんやりと見える、その奥に。
一際光り輝く大きな建物。
それを見つけた幸村の瞳が、大きく見開かれてそして輝く。
「お、お・・・おおぉぉぉ!!」
上がる歓声。
予想通りの反応に思わず口角が上がる。
「どうよ。いい眺めっしょ?」
「これは・・・凄いな、佐助!」
開けた視界の先にあるのは、今日行く筈だったテーマパークのシンボルとも言える城だ。
少し遠くはあるものの、ビルの比較的高い位置にあるこの部屋の窓からは遮るものが何もなく、ライトアップされたそれがはっきりと見えて二人の目を楽しませた。
「本当は、二つ隣の営業部の方が正面に近いんだけどね。まだ人が残ってるみたいだからさ。」
「いや、ここでも十分よく見えるではないか!凄いな!!」
窓辺に駆け寄りはしゃぐ様子の幸村に安堵する。
良かった。
連れて行くことは叶わなかったけれど、少しは楽しんでもらえたようだ。
ならばと今度は立て続けに、佐助は足元から白い箱を取り出す。
「――で、これが俺様から旦那に。ホワイトデーのお返し。」
本当は佐助もバレンタインに一日遅れでチョコをあげているのだが、それはさておき。
箱を手近な机に置いて上蓋を開けると、再度幸村の目が輝く。
「な、何だこれは!リンゴか!?」
佐助が用意したのは都内のホテルで購入したリンゴ型のケーキだ。
タルト生地の上にリンゴ味のムースを丸く乗せ、赤いジュレでその周りを固めたもの。
チョコで作ったへたと葉っぱが一層それらしく見せる。
ジュレの輝きがいっそ異様な程に綺麗で人工的に見え、毒りんごのようにも見えた。
「喉に詰まらせたりしないでよ?」
冗談めかして言えば、意図を察した幸村も笑う。
「城と話が合っていないぞ」
「ついでにお茶のセット、応接室から借りてきちゃった。こう言うお洒落なやつって家じゃ買えないけど・・・あれみたいだよね、ポット夫人。」
「美女と野獣か。チャンポン過ぎるだろう」
幼い頃に二人で見た映画を思い返しながら笑い合う。
ついでにこんなものもあるよと持ち出してきたのは忘年会で使った動物のマスクで。
これは野獣ではなくてただの馬ではないか、だの。
そもそも野獣って何の動物だっけ、だの。
他愛ない話題は尽きなかった。
結局マスクは被らずに、代わりにこちらも忘年会で使ったらしいリボン型の蝶ネクタイとシルクハット――恐らく手品でもしたのだろう――を被ってお茶を入れる。
気分は帽子屋だ。
態々ティーポットを上げて、高い位置からカップに注ぐと幸村から拍手が上がる。
紅茶を飲んで、ケーキを摘んで。
そうしてはしゃいだ後に、そのまま二人で窓の外を眺めていると、隣から小さく楽しかったと呟きが聞こえた。
当然この部屋には二人しかいない。
幸村の声だった。
「約束破ってごめんね。今度、ちゃんと一緒に行こう。」
「何の。今日のでも十分楽しめたぞ!」
二人でゆっくり過ごせるのもいいな、なんて言ってくれるのが嬉しい。
少しはリベンジが果たせただろうか。
思いながら佐助は空になっていた幸村のカップに紅茶を注ぎ足す。
ケーキも食べ終え、そろそろこの時間も終いだろう。
「あー・・・でも、失敗したな。」
両手でカップを持つ幸村を、可愛いなぁ、なんて思って眺めながら佐助はため息交じりに呟く。
今回かなり気合を入れたのだが、一つだけやり損ねた事があるのだ。
「何がだ?」
尋ねる幸村に、素直に答えてやる。
「ガラスの靴の替わりに、ぴったりの指輪でも用意しておけばよかったなぁ、って。」
「・・・っ!?」
言えば幸村は盛大に咽た。
余りに予想外、且つ恥ずかしかったらしい。
幸い吹き出しはしなかったが、口元を抑えたまま何度も咳き込む。
「指輪作るには、ちょっと時間が足りなかったんだよねー。」
「な、なにっ・・・を・・・っ!」
言葉を発するのも苦しそうな幸村から、カップを取り上げて脇に置き、そのまま距離を詰めて顔を近づける。
指輪の事は、こう言う意図で態と告げた訳ではなかったのだが。
「リンゴを喉に詰まらせたお姫様は、キスで助けてあげなくちゃ。」
告げてそっと口付ける。
そして離れると。
「咽たのは紅茶だ、ばかもの・・・」
真っ赤な幸村が拗ねたように言った。
終
あと、入れ損ねたネタで、「相手の城(会社)にこっそり忍び込む王子(幸村)」でラプンツェルってのもありました。
チャンポン過ぎですみません・・・(汗)
【追記】
書き忘れていましたが、佐助があげたケーキはこんなのです。
持ち帰りが出来るかどうかまではちょっと調べていないのですが(←)
凄いですよね!!
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早和
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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