忍者ブログ
愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
[219]  [218]  [217]  [215]  [213]  [214]  [212]  [210]  [211]  [208]  [209
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


今週広島に行ってきます。
待ってて、なりさま~!!!
しかし、桜に合わせて予定立てたのに、途中で開花予報が遅くなって桜を見るには早くなってしまいそう。
残念です(´・ω・`)



SSはいつも真田主従の素敵MMDを見せて下さるない先生の誕生日にと踊る佐幸です。
でも佐幸と言っていいのか不明な程に健全です。
それでも宜しい方のみお願いいたします。





・佐幸(バサラ)
・戦国
・オリキャラ有





【白銀に舞うは紅の花】







武田程の大所帯となれば色々な人間がいる。
基本的には皆体育会系の気のいい人間ばかりだが、中にはやはりそうでない者も少数ではあるが確かに存在して。
その中でも一人、佐助が注意を払ってる男がいた。
その男は武田に仕える様になったのは真田よりも後であったが、幸村が跡目を継いだ時にはそれなりの武勲を立て奥近習には至らぬが武田の中枢に昇りつめていた。
歳は幸村より上だが一回りは離れていない。
武田の中では若手と称される。
その所為か何かと幸村を目の敵にしている様で、事ある毎に幸村に突っかかってくる男であった。
よもや武田を裏切りはしないであろうが、幸村に難癖つけて足を引っ張る可能性はある。
そう見て佐助はその男を注視していた。

しかし、幾ら注視していたところで戦で幸村の生死に関わる事ならともかくそうでない場面では忍の佐助は幸村の命無しでは彼の為す事に口を出す事は出来はしない。
今回も。
無理を言われ溜息を吐く幸村に佐助は肩を叩くしか出来ない。

「困った・・・」

どうしたものかと幸村は言う。

「俺はこう言った類いは苦手なのだ」
「向こうも、そう思ってるから言い出したんだろうねぇ」

でなければ前触れもなくそんな事を言い出さないだろうなと佐助は思う。
全くあの男も根性が曲がっている。
幸村に宴で突然、舞を見せろだなんて。



始まりは戦勝の宴の最中、何気ないやり取りであった。
先の戦は幸村が先陣を切っており、その為か一人でかなりの功績を上げていた。
信玄も皆もよくやったと賞賛し、特に同じ陣にいた将達はその様を大袈裟な程に讃えた。
戦闘で槍を振るう様は勇ましく美しい、まるで舞を見てる様だった、と。
それを聞いた男が私も是非見てみたかったなどと言い出した時には佐助は即座に不審感を覚えた。
心にもない事をと思ったが、続いた言葉に男の狙いを悟る。
ここで一曲舞ってみて頂けませんかとの言葉に。

幸村は勿論断ろうとした。
それはそうだろう。
皆の言う舞うはあくまで喩えであり、幸村はただいつもの通り槍を振るっていただけなのだから。
しかしその断りの言葉を途中で遮り男は笑った。
お館様の覚えも目出度い真田殿はそう言った教養もおありでしょうから楽しみだと。
態と周りにも聞こえるような大声で。
周りも同調し、退くに退けぬ状態に追い込まれ。
信玄も面白がり着物まで用意されて乗って来られてしまっては幸村に為す術はない。
仕度の為に別室へと追い立てられ、呼ばれた佐助も後を追い。
そして今に至るのであった。



「あの方は何なのだ・・・」

幸村は頭抱えて唸っていた。

「俺が得意なのは槍であると言うのに・・・」

先程断ろうとした際には遮られてしまったが、幸村が得意なのはあくまで武であり舞や詩など教養的なものはどちらかと言えば苦手なのだ。
幼い頃から手習いの度によく逃げようとしていたっけと佐助は当時を振り返る。
まあそれを知らなくても幸村の人と形を知っていれば容易に想像はつくであろう事だ。
男が幸村は踊れないと見越して恥をかかせようとしている事は明白で。
つまり単なる嫌がらせだった。

「今からでも断る?」

とっちめに行くならやりますよと佐助は期待を込めて尋ねる。
前述の通り、確かに忍の佐助は武士のする事に口出しなど出来ない。
しかし主の命があれば話は別だ。
幸村に止められさえしなければ、周囲にバレない様に証拠を残さず幸村に絡んだ事を死ぬ程後悔させる事など佐助には容易い事だった。
しかし幸村は首を横に振り。

「頼みたい所だったが・・・お館様にも楽しみと言われてしまった・・・」

もう後には退けぬと幸村は言う。
信玄の期待は裏切れないのが幸村だ。
深い溜め息に如何にも彼らしいと佐助は苦笑した。

それにしても。
幸村の言葉に佐助は少々驚いた。
まさか頼みたい所だった、とは。
それは佐助に取って意外な返答であった。
何しろ幸村が身内でそう言った命を下した事は今まで一度もなかったのだ。
それだけ嫌なのだろう。
佐助はそう察しをつける。
故に尋ねた。

「俺様が出ようか?」

いつどのような場所に潜入を命じられるかも分からない忍は踊りも一応は心得ている。
この場を凌ぐくらいであれば己が変化してでもいいであろう。
幸村が己を呼んだのはその為だろうかとも考えたが、幸村はそれには答えず顔を上げて佐助に告げる。

「佐助、頼みがあるのだ」

その顔は、酷く真剣なもので佐助は思わず息を飲んだ。










そうしてそれから四半刻も経たぬ内、佐助は元の宴会の部屋へと戻ってきていた。

「真田様、仕度が整いましてございます」

侍女が膝をついて障子を開けるとわっと歓声が上がる。
その中へと佐助は一足先に入り、簡易に設えられた舞台の奥へと腰を下ろした。
それを見た信玄が驚いた様に告げる。

「ほぉ、佐助が笛か・・・」

佐助が手にしていた横笛に信玄は楽し気に頷いた。

「幸村に呼ばれたのはその為であったか」
「ええ、頼まれてほしいってね。俺なら昔から練習に付き合ってますから、慣れた相手の方が合わせやすいでしょう」

何しろ突然過ぎて練習する暇もありませんでしたから、と佐助は視線を脇に向けて嫌味を放つ。
視線の先は勿論事の発端となったあの男だった。
しかし彼も平然と嫌がらせをする程には図太い男だ。
特に気にした風もなく。

「成程、演奏でしたか。てっきり私は影武者でも頼むのかと・・・」

そんな嫌味返しすら。
影武者を頼むと思っていたと言う事はやはり幸村が舞を苦手としている事は察していたらしい。
嫌がらせと言う予想は間違っていなかったかと佐助は僅かに苛立ちを感じたが、それをおくびにも出さず笑って見せ、告げる。

「俺も変わった方がいいんじゃないかって言ったんですけどねぇ・・・」
「ほう?」
「何せ、あんたみたいな奴に見せるのが勿体なくて・・・」
「何!?」

流石にカチンときたらしい男はいきり立ったが、佐助に怒鳴ろうとするのを遮る様に幸村が部屋へと入って来る。
仕方なく腰を下ろした男の視線の先で、舞台の中央で畳んだ扇子を前に置き正座した幸村が深く礼をして顔を上げる。
途端に室内がざわめくのは仕方ない。
着物と髪を整え、更には化粧も僅かにだが施して。
明るく幼い少年の様な常とは雰囲気がまるで違う。
男も息を飲んでいた。
因みに化粧を提案し、施したのは佐助である。
閑話休題。

幸村が前口上を述べ、それから佐助へと視線を向ける。
それを受け、頷く。
それから後は佐助はもう男の事は見なかった。
笛を構え、幸村の無言の合図で息を吸う。
音の始まりと同時にパッと扇を開き幸村が滑る様に舞台を進む。
それからはただ佐助は幸村の動きを、呼吸を、視線の全てを全神経を傾け追った。

それは佐助だけではなかったようで、部屋にいる者達は皆幸村から視線が離せぬとばかり。
幸村が舞台上を移動する度に一様に同じ方向へと顔が向いていた。
まあ気持ちは解る。
ピンと伸びた背筋は気持ちがいい程揺らぐ事がなく、最初の勇ましさとは打って変わって扇の親骨を片手で抑えながら音もなく流れる様に開く様は将に優美の一言だ。
普段の騒がしい彼からは想像もつかないであろう。
開いた扇を横にして口元を隠し流し目の様に振り返る表情は雅やかで。
皆ほうと溜め息をつく程だった。
そしてそれは幸村を目の敵にしてるあの男も同じ。
先程から視線は幸村に向けられたまま、微動だにせず呼吸すら止まっていた。
佐助としてはしてやったりと言った気分だ。

確かに幸村は舞や詩などの教養的なものは苦手だ。
しかしあくまで苦手なだけ。
決して出来ない訳ではない。
それは幼い頃から近くで練習の様子をひた見詰め、時に付き合わされた佐助が誰よりもよく知っていた。
今では殆んど知る者はいない、佐助だけの密やかな事実。
広められたのは些か口惜しいが、主を侮った男の間抜け面を見れば溜飲も下がると言う物だ。

佐助が軽やかに鳴らす笛の音に合わせて幸村がふわりと回り、その高らかな音を断ち切る様に足をダンと力強い音を立て踏み込み膝をつく。
そのまま幸村は顔を下げ、音も途切れ――――部屋は静寂に包まれる。
曲の終わり。
舞楽はそこまでだった。

しかし静寂は一瞬で、圧倒された周りが我に返るより前に今度は清廉な鈴の音が響いた。
そして同時に佐助は、顔を伏せたままの幸村が視線だけを此方に向けたのを合図に背後に手をやり、己の腰に添えてあった物を外して投げる。
手裏剣の様に横に回転しながら飛んで来たそれを幸村は危なげ無く受け取り、口に咥えて両手を空けると着物の肩を抜いて長着を肌蹴させ、緩めた袴ごと脱ぎ捨てる。
現れたのは襦袢の替わりに下に着てたいつもとは違う戦装束。
防御面が弱すぎると実際の戦場では着せた事がなかったが、軽くて動きやすいと幸村は気に入っているものだった。
後ろに翻る長い布は踊り子の様で、しかし着物よりは動きやすく勇ましい。
先程の扇を使った規則正しい動きの舞とは違う、剣舞にはぴったりの装束であった。

そう、剣舞。
幸村がこれから見せようとしているのは教養的な舞ではない、剣を使った舞であった。
佐助から受け取ったのは普段佐助が腰につけ持っている短刀だ。
黒地に赤の丸い紋様の柄。
目の前に掲げて左右に引く。
当然本物の短刀である為、鞘が外れスラリと表れる銀の鋼は研ぎ澄まされて美しい。
その光を移す幸村の瞳も輝きを増す。

「ほう・・・」

先程とはまたガラリと変わった空気に辺りはどよめいた。

鈴で拍子を取りながら、幸村が脱ぎ捨てた着物を受け取り邪魔にならないように脇に避けた佐助はそれからまた笛で旋律を奏で始める。
幸村は裾をたなびかせ、跳ねて、回って。
時に短刀を宙に投げた状態でそれを為しては落ちて来た刀を受け止める。
赤と銀の軌跡。
周囲の視線はくぎづけとなっていた。
先程よりも挑戦的な目で観客を見つめ、時に睨み付けては口元に笑みを刷く様は妖艶で。
散る汗すら光って美しく見える。
此方を向く。
視線が合って思わず佐助の背が震える。
ぞくぞくと背を走る感覚に思わず口端をあげながら、佐助は先程支度をしていた際の別室での出来事を思い返していた。



先程の別室で幸村が頼んだのは笛の事だけでなくこの事も含まれていた。
舞楽だけなら別の者でも奏でられようが、剣舞に合う曲もとなると奏者はすぐに見つかるものではない。
加えて、あの短刀の投げ渡しが出来るのは佐助だけだ。
後は幸村の気持ちの問題の様で。
お前にも急となってしまいすまないがどうか頼むと佐助は請われたのだ。
佐助が傍にいれば何とかなる気がするのだなどと言われてしまえば佐助に断れる筈もない。
元々断るつもりなどなく分かりましたよと即座に受け入れた訳なのだが。

では何故、幸村は剣舞まで披露しようと思ったのか。
最初の舞だけでも十分であろうに、態々長く。
それは幸村の思惑のある所で――



剣舞も終盤に向かい、旋律も幸村の動きも激しくなる。
短刀を逆手に持ったまま、幸村はくるくると回りながら舞台を移動していった。
それはやがて舞台にと空けられていた空間を飛び出し、宴席まで達した。
観客の一人に向かっていき、それは紛れもないあの男。

「な、おい・・・」

研ぎ澄まされた刃が己に向かう様子に、男はあからさまに狼狽えた。
まさかこんな衆目の前で仕返しなどするまい。
思ってはいたが、徐々に回転の速度を増しながら迫る刃はいよいよ眼前にまで届き、よもや、まさかと男は思わず悲鳴を上げる。

「ひぃぃ!!」

風が前髪を浚った。
刃が目を切り裂く。
その寸前で幸村は手首を返し、刀身を反対の手に持ってた鞘に納める。
調べは一区切りし、笛の静かな余韻が響く。
その中で僅かに刀身に触れていたらしい前髪が幾本かはらはらと音も無く床に落ちた。
しかし気付く余裕もないらしい、みっともなく後ろに倒れた男に幸村はそっと顔を寄せた。
そして耳元に小さく囁きを落とす。
それは周りには聞こえぬ程度の声であったが忍である佐助の耳にはしっかり届いていた。

「宴のお戯れも程々になされよ」

にこりと笑い、そしてまた笛の音に合わせて舞い踊りながら幸村が舞台の中央へ戻った所で剣舞は終わりを告げる。
部屋は拍手喝采。
彼方此方から賛辞と歓声が飛び、信玄が天晴れと立ち上がった事で辺りは更なる歓声に包まれた。



駆け寄る者も、座ったまま拍手を送る者も、皆一様に幸村に視線を向ける中、佐助だけは反対の部屋の端にと視線を向けた。
見遣るのは呆然と尻もちをついたままの例の男だ。
幸村の舞か、はたまた例の一言か。
どちらか知らぬが余程堪えたのか酒を腹に零している事すら気付いておらぬようで、未だ動く気配はなかった。
いい加減腹に据えかねた幸村が考えた密やかな意趣返しだったのだが効果は抜群だったらしい。
胸がすく思いと言うのは将にこの事だ。

佐助は清々しさに背筋を伸ばして大きく息を吐く。
余りうちの主を侮ってくれるなよ。
佐助は愉快な気分で舌を出した。










その後、男からの嫌がらせ見事なまでにパタリと止んだ。
その点は目論見通りであったのだが、その替わりに思わぬ誤算が。

「幸村様、また踊っては下さらないのですか!?」
「幸村殿、今度はあの衣装で是非槍での舞を!」

幸村の舞に魅せられた良からぬ輩が湧き幸村の周りが一層騒がしくなったのだ。
否、そこまでは想定内だ。
予想外だったのはその連中の中にあの男も含まれていた事だ。
おまけに連中の内誰よりも熱心に幸村を口説きに来るようになったなど、誤算以外の何と言おうか。

「もしかして、妙に突っ掛かって来てたのはそう言う事かよ!?」

それから暫く、上田や甲斐ではあれ程気にしていた身分も関係無しに佐助が男を幸村から引き剥がす姿が見られたのだった。









PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
早和
性別:
非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
P R
忍者ブログ [PR]
Template designed by YURI