愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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全部挙げたと思っていたのにまだ残っていた…
pixivに挙げて此方に挙げ忘れていたもの…
・戦国
・真田主従+左近
・何でも許せる方向け
※又兵衛さんは出てないけどツイッターで妄想してるさこ又幸村の大阪城設定。
(五本槍の代わりに左近ちゃん又兵衛さん幸村で大阪城で奮闘してたらいいなという妄想)
【久遠の空】
(三成様…見てっかな…)
何処までも広がる青い空を見上げ、左近は呟いた。
天気は快晴。
視界は酷く開けていて遠くの景色がよく見える。
これから立ち向かうべき幾万もの軍勢も。
よくもまぁここまで揃えたりと呆れる程のそうそうたる旗印。
左近は目を閉じ息を吐いた。
隣に並び立つ幸村は赤い鉢巻きを風にたなびかせ、空ではなくそちらの軍勢をひたと見据えている。
「いよいよですな…」
幸村が言う。
「そっすね…」
左近は答える。
日は5月7日。
大阪夏の陣。
関ヶ原で生き残った左近を筆頭に終結した豊臣勢力は、今日将にこれから真田幸村を中心に徳川軍に特攻を仕掛けようとしていた。
「何か…わりーね、真田さん…巻き込んじゃってさ…」
言葉を交わすのはこれが最後かも知れない。
思った左近は最後にとこれまでずっと後ろめたく思ってきた心情を吐露する。
大義名分を掲げていても所詮は三成を討ち、豊臣を滅ぼした徳川への仇討ちでしかないこの戦。
言わば左近の私怨に近いそれに、しかし幸村は頷いてくれた。
共に戦うと言ってくれた。
「某が此処に参ったのは己の意思故、謝られる様な謂れはありませぬが」
「うん、でもさ」
幸村はそう言ってくれるが、己が呼び掛けなければきっと彼はこんな場にはいなかっただろう。
山奥で、平穏に、生きていく筈だったに違いない。
そう思えばやはり申し訳なさは先に立った。
否、そう言う意味でならば謝るのは彼より寧ろ彼の忍かも知れない。
きっと彼は幸村に穏やかに生きていて欲しかった筈だ。
「どうでしょうな…確かに山を降りる時には佐助には一度止められはしましたが…」
しかしそれは止めろと言うのではなくよく考えろと言うものだったらしい。
そして幸村の決意が固いと知り折れた、と。
あんたらしいよと、溜め息混じりに。
苦笑を浮かべ。
その時の彼の様子が容易に想像がつき更に申し訳ない気持ちになる。
しかし、彼の忍に心で詫びながらも左近は思うのだ。
それでも、やっぱり。
「俺、嬉しかったんだよね…真田さん来てくれた時。もうほんと!すんげぇくらい!」
関ヶ原で一人生き残り、取り残され、絶望し徳川への報復を呼び掛けた左近に、しかし同意を示す者はいなかった。
今更徳川に弓を引いてどうなるのだと。
時代は変わった。
もう戦の世ではない。
豊臣の世でもない。
元より忠義に篤い将らは関ヶ原で死んでいたから当然と言えば当然かも知れないが、皆手の平を返した様に徳川に阿る事を由とした。
金をちらつかせれば幾人かの将は戻ったが、それは上部だけだ。
其ぐらいは己にも分かる。
そんな時、幸村は来てくれたのだ。
手紙を見て、徳川の目を掻い潜って山を降り、この城へと。
共に徳川を討ち取りましょうぞ!と。
変わらぬ笑顔で。
変わらぬ力強さで。
それに己がどれだけ安堵し、喜んだか。
あの時の気持ちは筆舌するには難しい。
変わる事は悪い事ではない。
遠い過去、左近だって三成と会って変わったから。
けれど今、自分ばかりがあの輝かしい日々から取り残され、動けずにいる。
その孤独と空虚さは胸を焼いて今も左近を苦しめる。
頭を抱えその場に蹲ると、幸村がその頭上に手を乗せた。
優しく一度だけ髪を撫で、そして口を開いた。
「幸せな日々に不変を望む事を、誰も悪とは言えますまい」
某とて、と幸村は続けた。
彼も嘗て、武田で過ごしていた日々にやはり不変を求めていた。
信玄がいて、佐助がいて、武田の皆がいる。
そんな日々が永遠に続くと思っていた。
続いてほしいと。
しかし時は移ろう。
信玄は身罷り、武田は滅び、上田も他の者の手に渡ってしまった。
やはり何も変わらずにいられるものはそこにはなかった。
しかしだからこそ、今の徳川の世とて永遠に続くものではないと幸村は言う。
変わる可能性は十分にある。
「某達が変えるのです!」
幸村は爛々と目を輝かせ、挑戦的な笑みを浮かべ言い切った。
「旦那方、そろそろ頃合いですよ」
すると会話が途切れたタイミングを見計らったかの様に新たな声が二人の間に割って入った。
「佐助!」
声を聞いた幸村が途端に表情を輝かせる。
声の主は幸村の忍、猿飛佐助であった。
特攻を前に偵察に行くと言って少し前に幸村の傍を離れていたが。
「偵察は無事終えたのか!」
「勿論。家康はやっぱり茶臼山に敷いた本陣にいる。この目で見たから間違いないね」
他にもそこに至るまでに敷かれた陣形と率いる将を佐助は事細かに上げ連ねていった。
彼が偵察に出てまだ四半刻も立っていない筈であるが。
それだけの時間で徳川本陣まで出向き、更に道中の偵察も終え戻って来るとは。
将に蒼天疾駆と言った所か。
「流石、佐助!忍の中の忍!否、日ノ本一の忍よ!」
「これぐらい出来なきゃ日の本一の兵たる真田幸村の忍は名乗れないってね」
互いを褒め合いながら出陣に向け歩き出す二人の背を見ながら左近は思う。
確かに時は過ぎる、時代は変わる。
人も、その心も。
いつかは変わって行くそれを止める術は恐らくない。
けれど一つぐらい、変わらないものを願ってもいいだろう?
前を歩く二人の絆が死するその瞬間まで変わらず共に傍らに在るよう。
左近は眩しいそれに目を眇め、その光景を瞼の裏に焼き付けた。
終
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プロフィール
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早和
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非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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