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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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真田祭に行った時に、新幹線の中でもそもそ書いてたものです。
「忍は道具」ネタを書きたかった・・・はずでした。
 









・佐幸+双竜
・戦国
・微4ネタ有





【鋼の腕】









真田幸村と言う人間は、物に余り執着しない性質だった。
元々物欲と言うものが余り無いのだろう。
着物などの日用品にしろ骨董品などの嗜好品にしろ、あれば使うが無ければ無いで構わない。
そう言う考えだ。
食欲はあるので甘味ぐらいは強請る事はあるが、それ以外で自ら望んで何かを購入した事があるかと聞けば、本人も周りも首を傾げる。
そんな人物であった。





「あんた、それ、マジかよ!?」

そんな幸村に、驚き半分呆れ半分で呟いたのは、彼の好敵手伊達政宗だった。
先日大阪にて竜虎同盟なるものを結んだ甲斐と奥州であるが、それ以来政宗は以前にも増して上田を訪れるようになった。
今日も、今の所落ち着いている各国の情勢と内政に、政宗は時間が出来たと知るや否や先触れも出さずにここ上田城を訪れた。
同盟国同士の話し合いだ、などと称していたが、している会話と言えば先程から雑談ばかりで。
単に遊びに訪れただけである事は明白だった。
でなければ、幸村の性格の話など出ては来るまい。

「マジ・・・とは?」
「本気か、っつーことだ。ホントに何か欲しいと思った事とかねぇのかよ?」
「お館様の天下でしたら、常日頃から望んでおりまするが」
「Ah~・・・そういう事じゃなくてだな」

政宗が言うのはあくまで物だ。
着物とか、置き物とか。
どちらも政宗は拘りがあり、着物は生地も仕立ても気に入りの店にしか頼まないし、置物は南蛮のものなどで気に入ったものがあれば直ぐに取り寄せ購入する。
そう言ったものが幸村にはないのかと尋ねたのだが。

「着物は・・・着られればそれで。置物に関しては、某は骨董などには余り明るくありませぬ故・・・」

そう、にべもない。

「うちの大将は質素倹約家なの。しょっちゅう無駄遣いして竜の置物増やしてるそちらさんとは違うんです~」

終いには、控えていた忍までそんな事を言い出す始末だ。
自分の大将をさり気なく持ち上げ、こちらを貶す。
いい度胸だ、と政宗は米神を引き攣らせた。

「HA!質素倹約ってんなら、前田の野郎にホイホイ物譲っちまうのは何なんだ?」

腹立ち紛れに先日聞いた噂を交えて言い返せば、今度は佐助の方がピクリと反応する。

「どこで聞いたのさ、それ。」
「どこでも何も、本人から直接聞いたぜ?」

佐助の反応に得たりとばかり。
政宗は笑った。
どうやら話は本当らしい、と。

先日、偶然会った時に聞いたのだが、慶次は幸村から茶器を貰い受けたらしい。
別段名のあるものと言う訳ではなかったようなのだが、その経緯と言うのが、ふらりと遊びに行った際に出された茶の器を気に入って、前田家就任祝いに欲しいと冗談半分に言った所あっさり了承されてしまった、と言う事だったそうなのだ。
慶次としては、余りの幸村の賞賛振りが恥ずかしく、家を継ぐなんて当たり前の事に見返りを要求するなんて、と軽く怒らせて躱す狙いがあったらしいのだが。
あっさりと、本当に渡されてしまって慌てたと言う。
聞いた時は本当かと驚いたものだが、佐助の態度を見るに話は真実だったと言う事だろう。
そしてどうやら佐助はそれを余り良くは思っていないらしい。
主大事な忍が、主に妙な集りが湧くことを危惧しているのか。
それとも、別の理由があるのか。
政宗は、何となく佐助の思惑が分かってにやりと笑った。

しかし、一方の佐助のそんな様子には全く気付いていないらしい幸村は、政宗の言葉にもやはりあっさりと答えて見せた。

「あれは、慶次殿があの器を気に入ったと申されるので差し上げただけに過ぎませぬ。」

無論、先代の形見やお館様からの賜り物は別であるが、それ以外に関しては欲しがる人がいれば手放しても構わないと言う。
そんな幸村に、佐助が僅かばかり眉を潜めた。
ほんの一瞬の事であったが、見咎めた政宗はやはり、と思う。
思って、面白気に続ける。
例えそれが、実は高価な物だったとしてもか、と。
しかし、それにも幸村は躊躇なく頷く。

「先程も申し上げましたが、某はそう言った物に明るくありませぬ故。そのような無骨者が持つよりは、価値を知る者が持つ方が器も喜びましょう」

悟ったような幸村の言に、政宗はふ~ん、と感心したように呟いた。
普段は暑苦しくて、深く物事を考えないような言動が多い幸村であるが、ふとした時にこうして落ち着いて老成したような事を言う。
そこがまた面白いと政宗は思うのだが。
ならば、と続けて尋ねた。

「俺が何か欲しいっつったら、どうする?」
「は・・・」
「俺も・・・そうだな、同盟記念に何か欲しいって言ったら、くれるのか?」

思わぬ問いかけに、幸村は目を瞬かせた。
まさか政宗がそんな事を言い出すとは思っていなかったのだろう。
そして首を傾げる。

「政宗殿が所望されるような物を、某が持っているとは思えませぬが・・・一体何を?」

確かに、幸村が所有する上田の物の多くは古い物が多い事もあって簡素で素朴な物が殆どであり、それだけで派手で新しい物好きの政宗とは好みが大分違う事が伺われる。
そんな政宗が、何を望むと言うのか。
そう不思議に思って幸村は尋ねたのだが、答えは意外な所へやってきた。
茶器でも、掛軸でも、着物でもない。

 「そうだな。その猿がいい」
 
間違いなく佐助を指さして政宗は言ったのだ。

「うちにも忍はいるが、ちょっとばっかし実力がな。」

佐助ぐらいの能力のある忍が一人くらい欲しいと思っていた所だったのだと政宗は続けた。
一般的に忍は物として扱われることが多く、事戦忍に関しては人を殺す為の道具だとすら言われる。
実際、里は忍を金で売るし、里が絡まなければ家や国同士で忍を売り買いする事も少なからずある為、そう考えれば政宗の申し出は特段珍しいものではなかった。
とは言え、相当の戦力を誇るものを同盟を組んでいるとは言え他国に簡単に譲れるものではないのだが。
その点も政宗は見越していた。

「あんたの所は優秀なのが大勢いるんだろ?」

真田忍隊と言えば奥州でも有名だ。
本来表舞台には立つことの無い筈の彼らであるが、その名は風魔と並んで同業者のみならず武家、将軍家にも響き渡っている。
そして、風魔と真田忍隊の違いは、その名の通り真田は忍隊の長である佐助のみならず、隊全体としての能力が非常に高い事。
その人材の豊富さだ。
それだけいるのだから、一人ぐらい構わないだろうと政宗は言ったのだ。

それに反応したのは、幸村より先に佐助の方であった。
思わず立ち上がって、珍しく感情も露に反論する。
 
「ちょーっと・・・冗談が過ぎるんじゃない?たかが同盟記念に俺様とか、高望みが過ぎるでしょ」
「jokeじゃねえぜ。勿論、こっちからも相応のもんを贈る」
 
物でも、金でも。
遠慮なく言えばいいと政宗は言う。

「そうすりゃfairだろ?同盟国の絆も深まって、いいんじゃねえか?」

政宗はしたり顔で笑った。
ここまで言われてしまうと佐助には反論のしようがなかった。
政宗の元へ行くのも、幸村の元を離れるのも冗談ではなかったが、そこは元々忍でしかない自分が口を挟める領分ではなかった。
幸村が受けてしまえば、己はそれに従うしかない。
そして、思い返す。
先程、幸村が慶次に茶器を譲ってしまった事を話していた時。
佐助が幸村のその行動を嫌だと思った理由はそれだった。
つまりは重ねていたのだ。
あっさり譲り渡されてしまったそれに、己を。
そして政宗はそれに気付いたのだろう。
だから、こんな事を言い出したのだ、きっと。
反りの合わない筈の忍が欲しいだなんて、心にもない事を。
からかわれていると思うと尚更腹立たしく、佐助は立ち上がったまま政宗を睨み付ける。
部屋に漂う剣呑な空気。
それを打ち破ったのはそれまで黙って座っていた幸村だった。
幸村は立ち上がっていた佐助を手で制すると、落ち着き払った様子で目を閉じた。

「政宗殿。某は先ほど、前田殿に茶器を差し上げたのは、価値が分かる者が持っていた方がいいからだと申しました」
「ああ、そう言ったな」

肯定する言葉に、再度開いた瞳が政宗を捉える。

「某以上に、貴殿が佐助の価値を知るとでも?」

その瞬間、立ち上がったのは闘気か、殺気か。
言葉を発した口角は上がっていたが、その目も、声も、決して笑ってはいなかった。
豹変した空気に、小十郎はとっさに片膝を立て、腰の得物に手を掛けた。
幸村が政宗にこの場で斬りかかるとは思っていないだろうが、主を守る臣下の条件反射のようなものだろう。
先程佐助が立ち上がった時ですら微動だにしなかったと言うのに。
それ程までに幸村の発した気は鋭かった。
それに比べ、当の政宗は幸村の変わり様に思わずヒュウと口笛を吹き、従者の心配などどこ吹く風で楽し気だ。
そして佐助は――
只只管に、絶句していた。
するしかなかった。
優秀な忍が聞いて呆れるが、刀に手を掛けた小十郎を気に留める余裕すらなかった。
それほどまでに、衝撃だったのだ。
幸村の、言葉も、態度も。
三者三様の反応を示す中、その中心となっている幸村は、しかしあっさりと気を納めると表情を一変。
あどけなささえ残す顔でにこりと笑う。

「と、言うのは冗談でござるが」

気配は冗談だったとはとても思えなかったが、それに言及する者はその場にはいなかった。
今の幸村はいつもと違う、有無を言わせぬ何かがあった。
幸村は問いかける。

「確かに忍は道具と称される事もありますが・・・そう言うなら、政宗殿。道具をこのように言う事はご存知ないか?」

幸村が言ったのは、使い勝手の良い馴染んだ道具を己の身体の一部と称する事だった。
例えば幸村の槍。
或は政宗の六爪。
他にも職人の使う道具など。
思う侭に使えるものを、よく己の手や腕などの身体の一部と言う。
もし己が忍達を道具と言うならば、将にそれだ。
己の手であり、足であり、目であり、耳である。

「彼らを手放す事は、己の腕や足を捥ぐようなもの。幾ら某とて、また同盟の記念と言われても、差し上げる事は出来ませぬ」

故に、と。
幸村は不敵に笑った。

「佐助は勿論のこと、真田の者を一人でも欲しいと申されるのであれば、某の命を獲る覚悟で参られよ」

言い切る幸村は、先程のような鋭さはないが闘気に満ち溢れていた。
来るなら来いと言った風情。
同盟国主同士の間には本来似つかわしくない空気だった。
しかし、この二人の間には“本来”などと言う言葉は存在しない。
政宗は楽し気に、そして満足したように笑うと、それから目を閉じて降参と言うように両手を上げた。

「OK。同盟の記念に大将の命獲りに行ったら本末転倒だ。猿は諦めるぜ」
「それはようござった。某も、今この時点での同盟の破棄は望んでおりませぬ故」

その後はもう、何もない。
それで終わり。
全て元通りだ。

「その代わり、今ので興が乗っちまった。当然、付き合って貰うぜ?俺が満足いくまで、な」

そう言って、政宗が代わりに望んだのは手合せだ。
刀を取り、一足先に立って道場へと向かおうとする。
受けた幸村も嬉々として、立ち上がる。

「承知!」

幸村とて同盟の破棄は望んでいないが、政宗との打ち合いはいつだって望むところだ。
喜び勇んで飛び出した。

こちらにござると道場への案内をしようとする幸村に、続きかけて政宗はしかし一度立ち止まると部屋を振り返った。
中にはまだ動けずにいる佐助がいて、それを見てニヤリと笑う。

「今日はいつも以上にexciteしそうだからな。やばくなったら止められるように、その緩んだ面引き締め直しとけよ、猿」

カラカラと笑いながら小十郎を連れて部屋を後にする政宗に、言い返すことも出来ずに佐助は一人取り残された部屋で叫ぶ。

「あーもう、何なの、あの人!何なの!?」

動揺の余り繰り返して、頭を抱えて蹲る。
身体の一部とか、命を獲る覚悟とか。
簡単に譲り渡されるどころの話ではなかった。

「勘弁してくれ・・・」

響いて離れない言葉に、耳が熱くて堪らない。
彼らが道場に着くまでにこの熱を引かせるのは、中々厳しいように思われた。










廊下の角を曲がり、言葉までは聞き取れないまでも背後で叫ぶ気配を感じて、小十郎は前を歩く政宗を見た。

「政宗様も人が悪い・・・」

佐助の気持ちも、幸村の答えも、全て分かった上であんな問いをしたのだろう、この主は。
そう思えば、破天荒な主に付き合う者同士、妙な親近感が沸きつつある佐助に小十郎は些かの不憫さを感じずにはいられなかった。
しかし、小十郎の忠言などどこ吹く風。
政宗は小十郎に、面白い物が見れただろうと悪びれない。

「あの猿の呆然とした面!」

傑作だったぜと、クツクツ笑い続ける政宗に、小十郎は溜息を一つ。
これ以上の説教を諦めた。
恐らく言っても無駄だろう。
替わりにもう一つ、疑問に思っていた事を政宗に問う。
有り得ない事ではあるのだが。

「政宗様。もし、万が一、真田が是と言っていたら、政宗様はどうされるおつもりだったので?」

本当に、佐助を買うつもりだったのか。
それが小十郎は気になった。
佐助の言ではないが、余りの浪費は小十郎としても見過ごせない。
しかし、そんな小十郎の問いを、政宗は一刀両断で切り捨てた。

「腕が、本体から切り離されて使い物になるかよ」

考えるだけ無駄だ、と。
笑う政宗に、小十郎は成る程と頷いた。
















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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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