愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今週は週末が二日とも休みで、その為普段は偶にしかいないツイッターに結構入り浸っておりました。
そうしたら!
素敵佐幸を色々見れて、あまつさえ大ファンの絵描き様から(リクした)絵を頂いてしまったり、お話しさせて頂いてしまったりと朝から幸せでした・・・(*´▽`*)
根が小心者なので余り活用は出来ていませんが(色々考えすぎて発言出来なくなるw)、もうちょっとツイッターでも色々遊べるようになりたいです。
・佐幸
・現代
【仔猫のワルツ3】
自分の住んでいた部屋もそう広いとは言えはしなかったけれど、それより更に狭く小さな台所。
しかし、ここ数日ですっかり使い慣れたその場所の、一つしかないガスコンロの火を消して佐助は息をついた。
出来上がった料理を皿に盛り付け、唯一の居室である7畳程度の部屋に置いてあるちゃぶ台に運ぶ。
この家には炊飯器が無い為、メインディッシュを作る前に鍋で炊いた、そして待つ間にいい感じに蒸されたご飯を山盛りに茶碗につげば、朝食は完成で。
佐助は我ながら完璧だと自画自賛してから風呂場に向かって声をかけた。
「旦那ー。ご飯出来たよー」
浴室から既に出ている事は、扉の開け閉めする音で分かっていた。
台所に負けず劣らず、この家は風呂場と言わず廊下と言わず、部屋全体が非常に狭い――決して文句を言う訳ではないのだが――。
寧ろ、浴室が付いている事に驚きを感じるような。
ここはそんな昔らしい、古い小さいアパートだ。
故に、先程の呼びかけも佐助は普通の声だったのだが、帰ってきた声は叫ぶように非常に大きいものだった。
「うむ!今行く!」
この大声。
近所迷惑になり兼ねないからと何度も注意はしているのだが、一向に直る気配は無い。
この家で人と話す事が久しくなかったが為に、どうにも加減が分からないのだそうだ。
まあ、幸い今は夜ではないし、壁を叩かれた事もないので佐助も強くは言っていないが。
苦笑して、佐助はこの家の主である青年、真田幸村が脱衣所から出て来るのを待った。
佐助が幸村に出会ったのは、そしてこの家で暮らすようになったのは約2週間程前。
その経緯は、道端で行き倒れていたのを拾われると言う、何とも非現実的なものであった。
真田幸村と言う人は、少々表沙汰に出来ないような仕事をしていた、それによりトラブルに見舞われ打ち捨てられた佐助のような人間とは正反対の、清貧と言う言葉を具現化したような人物で。
訳あって家族とは縁が遠く、高校は寮生活の上卒業と同時に一人暮らし。
勿論仕送りなどは一切無く、生活費は全て自分でバイトで賄っているとの事だった。
本来はそのまま就職を考えていたらしいが、知り合いの援助で大学進学に至り。
しかし、その学費は一部奨学金を受け、更に残りの援助の分もいずれは全て返すつもりで勉学にバイトにと日々励んでいるらしい。
何だかこちらも、一昔前のドラマにありそうな話だと、聞いた時は佐助は素直に感心したものだ。
そして、そんな話を聞けばさしもの佐助とて良心が痛み、助けて貰った恩もあって当初は長居をするつもりもなく、また深く関わるつもりもなかった。
万が一何かあった時に、関わればその分彼を巻き込む危険性が高くなるからだ。
それこそ恩を仇で返す事になり兼ねない。
しかし、佐助の怪我が思ったよりも酷く暫く寝込む羽目になった為に、手当をしてはいさようなら、と言う訳にもいかなくなり。
更に、それでも当初は距離をおいていたのだが、肝心の幸村の方が何かと親しくなろうと接してくるのでどうしようもなくなった。
そして、その手管に根負けをしたと言うか、度肝を抜かれたと言うか。
いや、だって、まさか恭しく跪いて触れてもいいかと聞かれるなんて。
どこかの少女漫画でもあるまい、誰が想像できるだろう。
しかも、それを導き出したのが「小動物の飼い方」と言う本を読んでだったなどと。
余りのズレっぷりに脱力して。
それが思わずツボに嵌ってしまって、全てがどうでもよくなってしまった。
早い話が好感を持って――まあ、好感は最初から持っていたのだけれど――佐助の方からも関わりたいと思うのに我慢が出来なくなってしまったのだ。
最新の注意は払うつもりではあるし、いざとなったら全力で守る決意は勿論ある。
その上で、こうして一緒に暮らしてみれば、思った以上に共に過ごす空気は心地良いもので。
「待たせたな、佐助!」
「はいよ~。冷めない内に食べちゃって」
「今日は・・・おおぉぉ!!これは!!はんばーぐ、ではないか!!」
脱衣所から出て来て佐助の作った朝食を目にすると、瞳を輝かせて身を乗り出す仕種が何とも子供っぽくて可愛いらしい。
佐助は穏やかな気持ちでどうぞ、と眼前のそれを奨めた。
「しかし、肉など家にあったか?」
「へへー、これは肉じゃなくて、実はお豆腐で出来てるんだよねー」
「何と!」
前述の通り、幸村は清貧を絵にかいたような生活だ。
つまり貧しい。
一人でも余裕があった訳ではない所に更に佐助を抱え込んだが故に、財政面、特に台所事情はかなりカツカツだ。
当然肉など滅多に買えるものではなく、それ故佐助は色々と趣向を凝らしている。
「どこからどう見ても、よく見るはんばーぐだ!凄いな、佐助!!」
「お褒めに預かり恐悦至極、ってな!」
キラキラした目で賞賛され、満面の笑みで美味いとまた褒められる。
照れ隠しに態と大袈裟な言葉遣いで返して、佐助はハムスターもかくやと言う風情で頬を膨らませる幸村に笑った。
「旦那、あんまり口に詰め込み過ぎないの。ゆっくり食べなよ。誰も取らないから」
「う、すまぬ・・・しかし、佐助は食わぬのか?」
「俺様は、作ってる時に摘んだから。それに、朝は元々余り食べないし」
幸村は主としているバイトが早朝の肉体労働であり――これまたよく似合う新聞配達なのだが――、また、一日の活力は朝食からと言う古風な考え方を今でも持っているので、朝はこうしてしっかり食べる。
そして、昼夜を軽めに済ませる事が多い。
そんな幸村に合わせて、佐助の作る朝食も朝がかなりしっかりしたものになっているのだが。
佐助自身は朝は食べない事が多かったし、元々食が細い事もあって一日を通してもそんなに量は食べない。
故に、言葉に何の嘘も偽りも無かったが、聞いた幸村は急に箸を止め、しょんぼりと元気を無くしてしまう。
どうしたのかと思えば。
「すまぬな。もっと余裕があれば良かったのだが・・・」
佐助が遠慮して食べないのだと思ったらしい。
全く必要のない扶養者を抱えてのこの発言。
どれだけお人好しなのかと呆れてしまう。
「いやいや。ほんとに俺様、朝は食べないし。雨風凌がせて貰ってるだけで十分有り難いってのに。寧ろ昼夜食べさせて貰って十分過ぎるって言うか・・・」
これで文句を言ったら罰が当たると言うものだ。
料理は自分一人の為には余り作らなかったが、やってみれば案外性に合うようであったし。
節約レシピなど調べ物をするのは得意中の得意だ。
それでここまで喜ばれれば嬉しいし、作り甲斐もある。
だから気にするなと言えば、幸村は安堵したように肩の力を抜く。
あまつさえ。
「佐助は優しいな」
「・・・・・・」
そんな事を言われて絶句する。
この人、こんなんでよく今まで生きて来られたものだと、呆れを通り越して感心すらしてしまう佐助だった。
ここまで来ると、今まで詳しい事情を聞いた事はなかったけれど、もしかしてこの何となく彼に合わなそうな一人暮らしも、誰かに騙された結果なのではないかと邪推してしまう。
一家丸ごと騙されて一文無し、とか。
或は相続争いで親戚に追い出された、とか。
何となくありそうだ。
普段の姿勢や礼儀正しさ、そして箸の持ち方等、節々で見る彼の様子は何となく育ちの良さを思わせる所がある。
だからこそ、前述の通りこの暮らしが似合わないと思ったのだが。
しかし、そんな経緯と言われれば納得してしまう。
(人の事放っておけなかったとか言ったけど)
佐助を拾った理由を聞いた時、幸村は捨て猫の様で放っておけなかったのだと言った。
しかし、佐助から見れば放っておけない度合いは幸村の方が余程である。
何しろ、彼はそう言った性格だけではない。
日常生活の行動に関してもそうなのだから。
今もそうだ。
「旦那、ソース付いてるよ」
口元についたままのそれがまるで子供の様で佐助は苦笑してしまう。
ハンバーグなど滅多に食べられないからと、慌てて食べ過ぎだ。
そして、口元を拭ってやった時に濡れた肩に気付いて、またシャワーの後に髪ちゃんと拭かなかったのかと嘆息する。
幸村はこうしてずぼらな所が結構あるのだ。
そういう面を見る度に佐助はつい手を出してしまう。
食べ終わったら髪を拭いてやらなければと思う。
時折、自分はこんなに面倒見のいい人間だっただろうか佐助は自問自答するが、そうではない。
きっとこう思うのは幸村だからだ。
「旦那、今日の予定は?」
取り敢えずこの朝食を終えた後の佐助によるタオルドライまでは、予定が確定しているが。
その後の学校やアルバイトの有無を聞けば、幸村は何もないと首を振る。
「珍しいね。両方何も無いなんて」
普段ならば新聞配達の早朝バイトの後には学校があり、更に夕方から夜までまたバイトが入る事も多いと言うのに。
一日何もないなんて、佐助が知る限り初めてだ。
驚くと幸村はハンバーグの最後の一切れを口に入れ、咀嚼してから答えた。
「学校が偶々休講でな。ならば用を済ませようと、バイトも入れなかったのだ」
「用?」
これまた珍しいと佐助は聞き返す。
学校とバイト以外で幸村が出かけるなど。
やはりこれも初めての事だ。
どこに行くか聞いてもいいのだろうか。
流石に立ち入り過ぎだろうかと考えていると、食事を終え、箸を置いた幸村が佐助に視線を合わせる。
そして尋ねる。
「佐助も、怪我も治ってそろそろ外に出たかろう?」
「え?あ、うん、まあ・・・」
突然の問いかけに、佐助はしどろもどろに答えた。
確かに今日までの佐助は外に出る事が出来ず、ずっと家に籠りきりだった。
怪我もあったし、服が着ていたものしか無かったと言うのもある。
それは既にボロボロだったし、揉めた時の格好のままでぶらつけば、一悶着あった連中に見つかりかねない。
幸村に服を借りる事もあったが、なにぶん体格が違うので室内ならともかくそれで外に出るのは少々恥ずかしい。
その為、食事は作っても買い物は幸村だったし、外に出るのは精々アパート入口の集合ポストに郵便物を取りに行くぐらいだった。
仕方のない事ではあったが、確かに怪我が治ってきた今、ずっと籠りきりは少々辛い。
もしかして、佐助の家に行くつもりなのだろうか。
荷物を取って来たりとか。
そうすれば、上着と帽子があれば繁華街に近づかなければある程度は出歩けるようになるだろう。
それは有難い。
――と、佐助は思っていたのだが。
幸村の考えは少々方向が違っていたようで。
箸を置いた後、神妙になったかと思えば、幸村は静かに目を閉じる。
何だか只ならぬ気配だ。
妙な決意を感じる。
そしてそれは当たっていた。
幸村は目を開けると、意志の強い瞳で見据えて告げる。
「佐助が堂々と外を歩けるように、決着を付けて来る」
佐助はごくりと息を飲む。
決着?
誰と?
そして、その妙な気迫は一体・・・
「リーダー殿と話を付けに行く。佐助の件は誤解だ、とな!」
「はいぃぃぃ!?」
意気込んで立ち上がる幸村に、佐助は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
まさか、暴走族の元に乗り込む気なのか、この人は!
「旦那!ちょっと待ってぇ!!危ない!危ないから!!」
「大丈夫だ。こう見えて腕に自信はある!」
咄嗟に取り縋るが幸村の力は強い。
確かに力がある事は出会った時に佐助を担いで家まで連れ帰った事からも知れていたし、筋肉の付き方からも何か武道を嗜んでいる気配はあった。
だがしかし、そうではない。
「旦那!一旦落ち着こう!そうしよう!!」
「心配せずとも、俺一人で行く。お前は家で待っておれ。怖い思いは・・・」
「違う違う違うー!!違うから、無駄に男前にならないでー!!」
発言は胸に来るが、使い所が違うしやはり少しずれている。
こんなお人好しで単純で優しくて騙されやすそうな人、一人でなど余計に行かせられる訳が無い。
引かない幸村を必死に押さえながら佐助は内心で叫ぶ。
(やっぱり、放っておけない、この人!)
当面家を出られなくなってもいいから、取り敢えず止めなければ、と。
そのやり取りは、隣の部屋の住人が騒音に壁を殴りつけるまで続いたのだった。
終
お題とちょっとずれてることは自覚していますww
拝借:さみしがりな君へ5のお題「放っておけない」(rewrite様)
PR
この記事にコメントする
プロフィール
HN:
早和
性別:
非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
P R