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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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今日は幸村の命日と言う事で。
(正確には旧暦だからもう一月程度後ですが)
突発的に書いてしまいました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・佐幸(+慶次)
・現代

 

 

 【限りある永久】



 

 

 


一応念の為にと持たされてはいるが、普段は余り使わない携帯電話を珍しく開いて幸村は画面を見た。
購入して受け取った状態から何の変更もなされていない、シンプルな時間だけが表示されている待ち受け画面に示される時間は8時15分。
ホームルーム開始の15分前だ。
この時間ならもう大丈夫だろうと、幸村はボタンを押すべく指を携帯の上へと運んだ。
電話帳からの検索は使わない。
中央丸いボタンの左右を押せば履歴が出て、そこから電話がかけられると聞いてからは幸村は専らその方法だ。
着信とリダイヤルの違いも良く分かっていないが、特に問題はない。
幸村が使う番号など殆ど1件のみ。
稀に使う番号を含めても5,6件程度なので、履歴の10件で十分事は足りるのだ。

普段真っ先に使う、履歴にも一番上に表示されている名前を、しかし今日ばかりは外してもう一つ下の名前の所で中央のボタンを押す。
この名前が二番目に出てきたのは何故だろう。
そう言えば、連休が始まる前に遊びの誘いを受けた記憶があるからその所為か、と。
思い出しながら呼び出し音を聞き、待つ事十数秒。
プツッと音が途切れ、現れた通話中の表示に幸村は肩を撫で下ろす。
相手が無事電話に出てくれて助かった。
留守番電話は更に苦手なのだ。

「もしもーし、慶ちゃんで~す」

浮かれたような、語尾が妙に伸びた口調。
朝でもテンションが一向に変わらない慶次に苦笑しつつ、幸村は口を開く。

「おはようございます、慶次殿」

対する自分は真逆のように固い口調だが、別に機嫌が悪いとかそういう訳ではないので誤解しないで貰いたい。
自分はこれが常なのだ。
慶次もそれは知っているので、気にした風も無く会話を続けて来る。

「おはよー。どうしたの?幸村から電話してくるなんて、珍しいね」

てか、折り返しを抜かしたら初めてじゃない!?と慶次は興奮気味だった。
確かにそうかも知れないなと幸村は薄っすら思ったが、今はそんな過去に記憶を馳せている暇は無いので慶次の疑問を綺麗に流して用件を告げる事にする。

「本日、学校を休もうと思っておりまして。つきましては、申し訳ないが先生殿にその旨伝えておいては貰えないだろうか」
「いいけど・・・どうしたの?具合悪いの?」

幸村が学校休むなんて余程だろうと慶次は言った。
実際それは間違っていない。
多少の風邪程度ならば気力で吹き飛ばす幸村は、過去を振り返っても学校を休んだのは小学生の時にインフルエンザに罹った時だけだ。
あの時ばかりは周りに止められたので仕方がなかった。
それ以降は至って健康。
昨日までだって、学校を休む気配など無かったのだ。
故に慶次は非常に心配げに病状を尋ねて来るが。
今回はそうではなかった。
幸村は健康そのものだ。
具合が悪いのは、幸村ではなく。

「いえ、某ではなく、佐助が。夕べから体調が思わしくないようで」

そう。
体調を崩したのは同居している佐助の方。
その為佐助と、看病で付き添う為に自分も休むべく、幸村は慶次に連絡をしたのだった。
しかし、幸村程の健康優良児ではないが、佐助も滅多に体調を崩す人間ではない。
どちらにしても珍しいと、慶次は心配げに尋ねる。

「え、大丈夫?熱とかあるの?病院は行った?」
「熱は少し。病院は、本人が嫌がるので行ってはおりませぬが・・・」

答えると、病院が嫌いだなんて子供じゃないんだからと呆れた態で。
慶次は念の為連れて行った方がいいと頻りに告げる。
それは正論ではあるのだが。
今回ばかりは不要だと知る幸村は、曖昧な相槌を打ちながらやんわりとそれを否定する。

「まあ、一過性のもの故・・・明日には回復しているでしょう。心配には及びませぬ」

一日で治ると。
断言する幸村に慶次は更に何かを聞こうとしているようだが、時間切れだと幸村は会話を打ち切る。
もうじき向こうはホームルームが始まるし、こちらの方も。
ガタン、と背後で物音がする。

「では、言伝ての方頼み申した。」
「あ、ちょっと・・・っ」

向こうからお見舞いがどうこうと聞こえた気がしたが、構わずに通話を切る。
もう限界だ。
同時に幸村は携帯を持った腕を強く引かれ、しまったと思うより先に強引に後ろを振り向かされた。

「なっ・・・!」

驚きに声を上げ。
しかし、直ぐに抱き込まれてそれは薄手のパーカーの生地に吸い込まれる。
顔を上げて名を呼ぼうとしたが抱き締める腕の力は強く、胸に強く顔を押し付けられてやはりそれは言葉にはならなかった。

「どこ・・・行ってるのさ・・・」

熱の所為か、息が荒い。
途切れ途切れの声が幸村を問い掛けながら責めた。

「旦那・・・」

そこにいたのは、ベッドで寝ている筈の佐助だった。
解熱の薬を飲ませ、少し前に寝付かせたばかりだったので大丈夫だと思ったのだが。
逆にまだ眠りが浅かったのか、幸村が電話の為に離れたのに気付いて起きてしまったようだった。

「まだ熱があるのだ。寝ていなければだめではないか。」
「あんた、が・・・離れるからだろ・・・」

弱々しい声とは対照的に、幸村を拘束する腕の力は緩まない。
必死さすら感じるその様子は、まるで縋り付くようだった。
微かに震えているようにも感じて、幸村は伸ばした手で宥めるように背を優しく撫で、胸に顔を埋めたままで言葉を紡ぐ。

「すまぬ。」

声はやはりくぐもっていたが、佐助にはどうやら届いたようだ。
更に強く抱き締められて息が苦しい。
しかし抵抗せずに幸村はそのまま背を撫で続けた。
ぐずる子供のような佐助を、根気よく宥める。

「目が、覚めた、ら・・・あんたがいなくて・・・」
「すまぬ。学校に電話をしていたのだ。」
「何処にもいかないって・・・約束したのに・・・」
「もう少し、寝ていると思ったのだが・・・」

しかし、釈明する幸村の言葉を聞いているのかいないのか。
それでも佐助の腕は緩まないままだった。
虚ろな様子のままで繰り返す。
『もう、二度と離れないでくれ』と。

幸村と佐助は幼馴染だった。
生まれてから今まで、家から学校に至るまで常に一緒で。
一日以上離れた事など無いのではと言う程だった。
――――今生においては。
佐助が言うのは前世の事。
400年程前、戦国の世で主従として二人が共にあった時の事だ。
その時も、幼少の頃からやはり常に共にあった自分らであったけれど。
最後の最期。
幸村は佐助を残して先に逝った。
討ち死にしたのだ。
大阪の地で。
丁度この日に。
それが余程強く記憶に残っているのか、毎年この日になると佐助は体調を崩し情緒不安定のようになる。
否、年が経つほどに記憶が濃くなっているのか、その症状は重くなっているようで。
今年はとうとう休まざるを得ない程になってしまった。
普段は己をからかいながらも、佐助がどれだけ自分を大切にしてくれていたかを知る幸村は、400年前のあの時代、残された佐助が己の亡き後どのような心境だったのか。
今になってまざまざと思い知らされた気持ちだ。
自分は悔いなく散ったけれど、残された佐助はどれ程の後悔を背負ったか。
考えれば考える程、申し訳なくて堪らなかった。
だからせめてと、佐助の傍にいる事を決めた。
普段であれば絶対にしないであろう、学校を休むことも構わなかった。
佐助にされるがまま、抱き締められて誓う。

「大丈夫だ。もう、お前から離れたりせぬよ。だから、共にいよう。」

共に生きよう。
平和なこの世で、今度こそ。

幸村は出来得る限りの永遠を誓って、佐助の背を抱き返す。
頭上でうん、と佐助が頷く気配を感じて、幸村はそっと目を閉じたのだった。

 

 

 終

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早和
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自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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