愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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・戦国
・佐幸+慶次
依存型の攻めが大好きです。
【母子の真実】
真田忍隊長猿飛佐助と、その主真田幸村。
二人は幼い頃から共にいた為か、主従とは思えぬ親しさを見せる。
年の差から言えば、まるで兄弟の様と言うが正しいが、甲斐甲斐しいまでの忍の世話焼きっぷりに、周囲からはどちらかと言うと母子の様と言われる事が多かった。
一般的に蔑まれる事の多い忍が慕われ、本来無い筈の情を返すように主を慈しむ様は見ていて非常に微笑ましい――筈なのだが。
「ちょーっと、いき過ぎじゃないかい?」
今日も今日とて縁側でのんびり茶を啜る主と、その後ろに膝を付いて座り、乱れた髪を整えてやっている忍。
その姿を目の当たりにした慶次は、呆れたように二人に向かって問いかけた。
慶次は二人のような関係は好ましいと思う方だ。
身分差や格式などと言った言葉が好きでは無いので、主従や武士と忍の関係を超えて仲の良い二人に初めて見た時から好感を抱いていた。
しかし、今日改めて二人で共にいる所を見てみれば、そんな鷹揚な慶次の性格を持ってしてもこの主従はいき過ぎのような気がしてならず、思わず口にしてしまっていた。
「髪を結うて貰うのは、そんなにおかしいでござるか?某は不器用故、いつも佐助に頼んでいるのですが・・・」
「いや、髪結いくらいはいいよ?けどねぇ・・・」
慶次の言葉がさっぱり分からないと首をかしげる幸村に、慶次は答える。
髪ぐらいはまだ分かる。
身嗜みを従者に整えさせるのは主としても一般的。
この二人だとそれが女中から忍に変わると言うだけだ。
だがしかし、だ。
慶次は己が城を訪ねてからこの状態に落ち着くまでを思い出す。
風来坊の名の示す通り何の前触れもなく遊びに来た慶次に、驚いた幸村が鍛錬の手を止め、槍を片手に纏めて持てば音も無く隣に降り立った佐助がその槍を受け取る。
額から流れる汗を腕で拭おうとすれば、腕を動かした瞬間に手拭を渡す。
そして幸村が顔を拭いている間に、佐助は首や背中を拭く。
拭き終えれば腰元に撓めていた半着を着せ。
慶次が手土産を出して見せれば、用意を命じるより先に盆に乗った茶が出て来ている。
幸村と慶次が隣り合って縁側に座れば、濡れた布で手を拭いてやり。
慶次の土産である茶請けのわらび餅を、少し大きいからと一口大に黒文字で切り分けてやる。
そして、幸村が丁度良い大きさとなったそれに舌鼓を打っている間に髪を整えているのが現在だ。
3つ4つの子供ではあるまい。
流石に世話を焼き過ぎではなかろうか。
「何だろね~。痒い所に手が届くっていうの?」
寧ろ届き過ぎると言うか、痒いと思う前に手が届いていると言うか。
言うと幸村はパッと顔を輝かせて頷く。
「そうなのです!佐助は真先見の目に優れ、気も利く奴なのです!」
自らの忍が褒められたと賛同する幸村は、きっと慶次がほんの少し込めた皮肉には気付いていない。
佐助は恐らく気付いているのだろうが、終始一貫して無言であった。
と言うより、慶次に対してはお茶を出した以外は一切の関心を払っていない。
「このままじゃ、幸村は忍君がいなきゃダメな人間になっちゃうんじゃないの?」
そうして思わずポロリと口にすると、一瞬の沈黙が落ちた。
元々慶次が一人で話していたようなものだったが、ひやりとした空気が流れた気がした。
何かまずいことを言っただろうか。
しかし、幸村に怒ったような様子はない。
ならばこの空気を発しているのは・・・
「慶次殿、それは・・・」
慶次の予想は正しくて。
幸村が慶次に問いかけようとした、寸前。
「旦那。」
それまで一切口を挟まなかった佐助が遮るように幸村を呼ぶ。
「口元、粉だらけだよ。手は蜜でべたついてるし、みっともないからちょっと洗っておいで」
口調は、幸村に向けている所為もあってか、穏やかだった。
しかし、慶次には何故か空恐ろしく感じられた。
言って幸村を井戸の方へと追い立て。
濡れた布は先ほど鍛錬後の手を拭いて既に汚れているから駄目だと言う。
その理由は尤もなように聞こえるが、慶次は何となく佐助が幸村をこの場から遠ざけたいのだと感じた。
正確にはこの話題から、か。
素直に井戸へ向かう幸村の背を見送って、慶次がぼんやり庭に目を向けたままでいると、それまで見向きもしなかった佐助が初めて慶次に向かって口を開く。
「前田の風来坊」
視線は先程まで使っていた髪結いの道具箱で、こちらは見ていない。
手は櫛の片づけをしながら、佐助は言う。
「人には其々のやり方や関係があるんだ。口出しは野暮ってもんだよ」
そして一瞬だけ鋭い視線で慶次を制すと、そのまま道具箱を片付けに廊下を奥へと歩いて行ってしまった。
縁側に残されたのは慶次一人。
佐助は背を向け、しかしそれでも慶次は動けない。
佐助の姿が見えなくなって漸く竦みから開放された慶次は、ふはあと大きく息を吐いた。
額に流れた冷たい汗を手の甲で拭う。
「あの二人・・・」
慶次は呟く。
てっきり幸村が佐助に甘えているのだとばかり思っていたが。
「俺、間違ってたかも・・・」
しかしどうする事も出来ずに慶次は幸村が戻ってくるまで一人頭を抱えていた。
そんな慶次に、これで当分は余計な事を言わないだろうと満足しながら、佐助は屋敷の一番奥の間。
幸村の私室の一つに入り、押入れの奥に道具箱をしまった。
この部屋に無断で入れる者は限られている。
それは主の信頼の証だ。
押入れの襖を閉めながら、佐助は先程の慶次の言葉を思い出す。
あの言葉。
幸村が自分がいなければダメになる、などと。
(むしろそうなりゃいいのに・・・)
実際、幸村が佐助がいなければ何も出来ないなんて、そんな事は決してないのだ。
佐助が遠方の任で傍にいない時は身支度の殆どを幸村は自分でするし、出来ない部分は他の誰かが手伝うだけだ。
それは精神面でも同じこと。
多少淋しく思いはすれど、それでダメになると言う事は無いだろう。
ダメになるのは・・・
幸村がいなくなった時。
幸村から必要とされなくなった時。
自分がどうなってしまうのか。
佐助は自分が想像出来なかった。
正気でいられるのか。
そもそも生きていけるのだろうか。
彼から必要とされていると分かるから、離れた任でも熟す事が出来る。
けれど、もしそれが失くなったら。
(ダメになるのは・・・俺の方だ・・・)
だから必死に甘やかす。
自分の側が一番居心地がいいと思ってもらえるよう。
必要とされなくなる日が来ないよう。
ずっと傍らにあれる事を願って、佐助は幸村の世話を焼く。
とりあえず今は、手を濡らしたまま戻るであろう主に新しい手拭を渡すべく、縁側に戻ろうと立ち上がったのだった。
終
幸村はうっすら佐助の思いに気付いていて、敢えて甘えている所もあるといいです。
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プロフィール
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早和
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非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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