愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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・戦国
・佐幸
幼少期ねつ造注意。
【誰が為】
真田幸村が主君である武田信玄に心酔している事は、周知の事実だ。
その心酔ぶりは甲斐国内は疎か他国にまで知れ渡っており。
仕事柄常に物事を疑い裏を読もうとする忍の目を持ってしても、真田幸村が武田信玄を裏切る可能性はほぼ皆無であると言わせしめた程だった。
何をするにもお館様の為。
或いはお館様ご上洛の為。
近くで見ている佐助としては、もう少し自分の為に何かしてもいいのに、と思わずにはいられない。
(別に、反旗を翻して下剋上しろってんじゃないけどさぁ。)
今日も今日とて来るべき戦に備えて庭先で槍を振るう幸村を見ながら佐助は一つ息を吐く。
鍛錬は幸村の趣味のようなものだが、これも突き詰めればお館様の為。
戦場でお館様のお役に立つため。
どこぞの風来坊ではないが、もう少し人生を謳歌してもいいのではないか。
まあ、あんな遊び人になられたらそれはそれで困りものだが。
思えば昔から幸村は「誰かの為」と言う事が多かった気がする。
まだ幼名の、弁丸と呼ばれていた頃。
あの頃は戦や政は無いが、お家の為、将来父や兄の役に立つ為と、日中は毎日勉学に手習い、そして武芸に勤しんでいた。
遊ぶと言えば、偶に佐助と山に行くくらいで。
それもそう頻繁にと言う訳ではない。
身近に同じ年頃の子供がいなかった為に仕方なかった部分もあるのだが、幼い子供としては随分味気ない日々だったのではないかと今にして思う。
最も歳の近い人間と言えば兄だったが、その兄信幸とも関係は微妙で。
いや、信幸は弁丸を可愛がっていたようだが、母親がそうではなかったのだ。
(あ~・・・やな事思い出した。)
失敗した、と眉を顰める。
佐助は自分で思い出した過去にいらっとした。
忍とは本来感情制御に長けるものだが、佐助はどうしてもこの世に二人だけ、嫌悪せずにはいられない人物がいた。
幸村のライバルと言う独眼竜伊達政宗と、幸村にとっては義母となる山手の方がそうだった。
この二人の事を考える時だけ、佐助は苛立ちを抑える事が出来なくなる。
伊達政宗が嫌いな理由は色々あるが、その筆頭は当然ながら幸村の命を狙っているからだ。
幸村自身がそれを許している、また命の取り合いを望んでいるとは言え、主大事の佐助としてはどこか知らない所で死んでてくれないかな、と思わずにはいられない。
そして、山手の方を嫌う理由はただ一つ。
幼少のころ、彼女が弁丸に辛く当たったからだ。
義母の山手の方は、弁丸が自分の子供ではない妾腹の子供と言う事で弁丸を露骨に遠ざけた。
弁丸の実母が死に、父である昌幸が戦仕事に忙しく城を離れることが多かったのをこれ幸いと、弁丸を孤立させた上であからさまな厭味の言葉を日常的に投げつけたのだ。
今でも思い返すと佐助は腸が煮えくり返る思いだ。
次男で妾腹とはいえ、万が一にでも弁丸に後を継がせたくなかったのだろう山手の方は、弁丸が今後一切自分達に逆らわぬようにと毎日同じ事を教え込んだ。
それは即ち、弁丸は信幸の為に生きて、信幸の為に死ぬのだと言う事。
戦場で兄の手足となり役に立ち、危機に扮した時には身代わりとなって死ぬ。
そう、繰り返し繰り返し。
殆ど洗脳に近かったと佐助は思うのだ。
そもそも幸村が自分の望みを持たず、誰かの為にばかり行動するのはその子供の頃の洗脳が原因なのではないか。
(旦那は単純だから、あんな女のバカみたいな言葉もすっかり信じ込んじゃって・・・)
お家の為。
父や兄の役に立つのだと。
母に認めてもらうのだと。
毎日鍛錬に明け暮れていた。
連鎖的に思い出す過去に、佐助の機嫌は下降の一途をたどる。
すると、そんな佐助の様子に気づいたらしい幸村が、鍛錬の手を止めて振り返った。
「佐助、どうした?」
問われて佐助は何でも無いと答えた。
過去を思い出してイライラしてました、とは流石に言えない。
特に、驚いた事に幸村は山手の方を嫌ってはいないようなので。
言えば板挟みになって困るのは目に見えていたから余計にだ。
替わりに、佐助はその前に考えていた疑問を口にしてみた。
「旦那はさ、何て言うか・・・もっと自分の為に何かしたいとかって、無いの?何か欲しいとか・・・」
幸村が普段強請るのと言えば甘味ぐらいだ。
それすらも特別高価なものは望まない。
城下の茶屋のものばかりで、更に最も望むのは佐助の作るものだと言うのだから、一城の主としては安上がりな事だ。
遊びたい、どこかに行きたい。
高価な物、珍しい物が欲しい。
美味しいものが食べたい。
自分の為だけに望む事は何か無いのか。
(あったら、全力で叶えてやるのに)
佐助はどこか切実にそう思っていた。
しかし、そんな佐助の想いをさっぱり知らない幸村は、至極不思議そうに首を傾げる。
「お前が何を持ってして“自分の為”と言うているのかは分からんが・・・」
そしてあっけらかんと言い放つ。
「俺は、基本的に自分のしたい事しかしておらぬぞ?」
お館様の為と言うのは役に立って自分が褒めて欲しいからだし、国の為と言うのも結局は自分の住んでいる場所を守りたいと言うだけだ。
誰かの為だなんてそんな大層な事ではないのだと、幸村はきっぱりそう言った。
「それに、一番欲しいものはもう手に入れてしまっているからな。あまり欲張り過ぎるのはよくないだろう。」
「え、何それ、初耳なんだけど。」
幸村がこれまで何か強請った事があっただろうか。
少なくとも自分は甘味以外で強請られた事はない。
だとしたら他の誰かに強請ったのか。
それはそれで腹立たしい。
それとも、あの独眼竜の事だろうか。
唯一無二の好敵手を手に入れた、と。
思えば奴は唯一幸村が個人として決着を望んでいる相手だ。
それでもお館様を凌駕する事は無かったから我慢できていたが。
(もしそうだとしたら、益々殺したくなってくるわ~・・・)
佐助は先程以上の機嫌の悪さ、いっそ殺気を辺りにまき散らしていた。
「ねえ、旦那、何よそれ。教えてよ。もしかして独眼竜とか言わないよね?」
言ったら殺しに行こうそうしようと、佐助が得物に手を掛けると、幸村はきょとんとした表情になる。
何故政宗殿?と顔に書いてある。
「お前に決まっているだろう?」
聞いた瞬間、佐助は手にしていた得物を取り落した。
急に愛用の武器を落とした佐助に幸村が何かあったのかと焦ったように駆け寄ったが、それに構っている余裕がない。
幸村が自身の為に、一番欲しかった物が自分って。
たかが忍風情に。
(どんだけ爆弾発言してくれちゃってんの・・・!)
堪え切れなくなった佐助は頭を抱えてその場に蹲る。
「な、なんだ、佐助!?どうした!?」
頻りに自分を心配する幸村の声を聞きながら、佐助は何度となく繰り返した決意を、また改めて強くした。
俺はこの人の為に生きよう。
終
幸村がいろんな人から依存依存と言われているのが妙に切なかった時に考えていたネタでした。
だって、幸村は別に自分の天下を望んでる訳じゃないのに・・・
かすがや小十郎は良くて、何で幸村はダメなのと松永さんに小一時間・・・
しかし、書いているうちにちょっとズレてきた気がしてならず。
そのうちちょっと書き直したいと言うか、同じ系のネタでリベンジしたいです。
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プロフィール
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早和
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非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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