愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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幸村さん、今日はお誕生日とのことで!!
おめでとうございますー!!!
と言いつつSSは誕生日全然関係なくてすみません。
以前フォロワーさんがツイッタで佐幸同棲生活を語っていたのを聞いてぐわっと来ました。
・現代
・佐幸
・お題
【イロは匂へど】
佐助には、今悩んでいる事があった。
悩んでいると言うより疑問に思っている事、と言った方が正しいか。
ともあれ、ここ数日佐助の頭の中はその事でいっぱいであった。
ここは佐助が恋人である幸村と共に暮らしているマンションの一室だ。
駅から少々離れてはいるが、おかげで2DKだと言うのに家賃は一人暮らしをしていた時の1DKの時とそんなに変わらないと言う。
佐助的には掘り出し物の物件だった。
この部屋で同棲を初めて早2週間。
毎日家に帰ると恋人が出迎えてくれて。
夕食の準備――は、生憎幸村が極度の不器用故に佐助がするのだが、元々それは一人暮らしの時からしていた事なので苦ではない。
それより、幸村の顔を見るだけで幸せな気分になり、疲れが吹き飛ぶ。
佐助としては満ち足りた日々だ。
(帰った時にソファから振り返った顔がまた可愛いんだよね~)
ダイニングに置かれている薄いベージュのソファ。
その背もたれからちょこんと顔を出して、嬉しそうにお帰りと言ってくれる恋人の笑顔を思い返すと思わず顔がにやけるが。
(そうじゃないそうじゃない・・・)
佐助は首を振ってひとまずその可愛い恋人を頭から追い払う。
今は疑問を解決するのが先決だ。
空想に浸るのはその後でいい。
顔を引き締め佐助が見下ろすのはそのソファ。
更にその上に置かれた赤色のクッション。
それが佐助の頭を悩ませている、その原因となっているものだった。
佐助の恋人である幸村にはとても可愛らしい癖があった。
それはテレビを見たり寛いだりする時に何かを、主にクッション等を抱き込むと言う癖だ。
座っている時は腹に抱き込み、寝そべる時は胸元に敷く。
時折そのまま枕の替わりにして眠ってしまう事もしばしば。
そんな可愛らしい癖の持ち主だった。
恋人の幸村は
それは佐助がまだ一人暮らしをしていた頃に、幸村が遊びに来ていた時に気付いたもので。
普段外では凛としているのに、と。
気付いた時にはそのギャップに佐助は頭を抱えたものだ。
なにこのこかわいいずるい、と。
そんな佐助の悶絶を幸村は知らないのだが、それはさておき。
そのような可愛い癖を持つ恋人の為にと、佐助は同棲を始めた時に勢い勇んで購入したものがあった。
それが、このクッションだ。
中身は抱き心地を重視したフェザーヌードのクッション。
それなりに値の張るそれは、使ってみれば佐助も気に入り部屋に色違いの自分用を購入したほどだ。
幸村も最初は気に入ったようにこれはいいな、なんて言いながら寄りかかったりしていたのだが。
しかし、暫く経ってみれば、それ以降幸村がそのクッションを使用している所を殆ど見たことがない。
使用している時と言うのも時折ソファで眠ってしまった時に枕代わりにしているくらいで、以前のような使われ方は全くしていないようだった。
その事実に気付いて以来、佐助の頭の中はそのことに関する疑問でいっぱいだ。
(何でだろう・・・気に入らなかった?)
最初に思ったのはこれだったが、最初の驚いたような感心したような笑顔を見る限りそれは考えにくいと思われた。
幸村は遠慮やおべっかの類は苦手で、すぐに顔に出る。
あの時の表情は、嫌がってはいなかった。
ならば、前のものと何が違うのだろうか。
大きさや形は一緒。
肌触りや抱き心地は新しいものが上。
更に色も幸村の好きな赤色を選んだと言うのに。
どうして・・・
「佐助!」
件のクッションを掲げて考え込んでいると、不意に背後から声を掛けられ佐助は飛び上がる。
気配に敏い佐助は普段は背後を取られると言う事などそうそう無いのだが。
余程深く考え込んでいたらしい。
気付けばいつの間に部屋から出てきたいたのか、そこには幸村が立っていた。
「だ、旦那。もう宿題終わったの?」
「うむ。ちゃんと終わらせたぞ!長時間机に向かうと流石に疲れるな」
「旦那は頭より身体使う方が楽な人だもんね~」
のんびりと会話をしながら佐助は考える。
先程の疑問、幸村にぶつけてみるべきか否かと。
果たして聞く程の事だろうか、とも思うのだが、気になるものは気になるのだ。
(――だって、一緒に暮らすなら、旦那にも居心地よく思って欲しいし)
もし癖が無意識の内でも抑えられるほど緊張しているのならば、それは由々しき事態だ。
と、大袈裟な大義名分を掲げてはいるが、結局は佐助がまた幸村のあの癖を見たいと言うのが何よりだ。
(だって、あのクッションに顎を乗っけてる旦那、可愛いんだもん!)
それが佐助の偽らざる本音だった。
「どうしたのだ、先程からぼーっとして。何か考え事か?」
そんな佐助の脳内などこれっぽっちも知らない幸村は、不思議そうに佐助の顔を見上げる。
身長差の為自然と上目遣いになるのにぐらりと佐助の能が揺さぶられるが、何とか持ちこたえる。
今は己には成すべきことがあるのだ。
取り敢えず、疑問が杞憂でない事を確かめなければなるまいと。
「何でもないよ。それより旦那、貰い物のプリンがあるけど、食べる?」
「食べる!」
「じゃあ、そこ座って待ってて。今持って来るから」
「うむ!」
佐助は幸村をソファに誘導し、座らせる。
そして、素直に座った幸村に上から手に持っていたクッションを落として手渡す。
その後は何でもないようにキッチンへと向かうが、視線は幸村に向けたまま。
手にしたクッションを幸村がどうするか、確かめようと思ったのだ。
しかし、見守る佐助の前で幸村は手の中のそれをそのまま膝の上に乗せただけ。
特に抱えるような仕草も見せず、佐助が戻るのを待っているようだった。
やっぱり、と佐助は思う。
同時に何故だろうかとも。
以前ならば絶対にここでクッションを抱え込み、ソファの上で体育座りのような恰好を取っていただろうに。
確信は持てた。
ならばもう聞いてしまえと、佐助は約束のプリンを片手にダイニングへ戻り、幸村に尋ねた。
「旦那、そのクッション、気に入らなかった?」
聞かれた幸村はきょとんとしていた。
そんな問いかけ、思いもよらなかったと言う風だ。
「いや、別に。嫌いではないぞ?触り心地もいいしな」
「けど、前のやつのが気に入ってたよね?」
よく抱えてたし、と核心を突いて続けて問えば、幸村は一瞬呆けたようになり、それから“前の”に当たる事を思い出したのだろう。
ハッと息を飲み、それから傍目にもわかる程に急に顔を赤らめた。
何だ、この可愛い反応は。
「そっ、れは、だな・・・あの・・・っ」
「ねえ、何で?」
これは是非とも聞き出さねば。
顔を寄せて尋ねると、幸村は慌てながら益々赤くなる顔を隠すようにクッションに埋めてしまう。
それはずっと佐助が見たいと思っていた仕草だけれど、今はそれどころではなかった。
幸村の身体を跨いで反対側の肘掛けに手を付き、背もたれと己の身体とで逃げられないようにして根気強く回答を待つと、やがてぼそぼそとくぐもった、蚊の鳴くような声で幸村は答えた。
「あ、あれはだな、別に、クッションが、どうこうと言う訳ではなくて、だな・・・」
「うん」
「ただ、その・・・佐助の部屋にあったものだから・・・その・・・」
佐助の匂いがして、抱えていると心地良かったのだと。
聞いてみればそんな答え。
新しいクッションはまだ馴染んでいないから、買ったばかりの特有の匂いしかしない。
それではいくら抱き心地がよくても意味が無くて。
・・・つまりは、そういう事。
それを聞いた時の佐助の心情と言ったら、もう。
「~~~っ!」
可愛い恋人にそんな可愛いことを言われて、我慢など出来るものか!
(あんた自身に消えないくらいに匂いを擦り付けてやろうかこの野郎!)
クッションなど今後一切いらないようにしてやる、と。
佐助は囲っていた幸村の身体をそのままソファの上に押し倒す。
漸く目的を果たしたはずの赤いクッションは、床に放り投げられ翌日まで気に留められる事はなかったのだった。
終
その内、佐助の部屋にある緑色のクッションが幸村によって持ち出され、ソファの上に赤色と隣り合って並ぶようになると思います。
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プロフィール
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早和
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非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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