愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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夏も終わりですね・・・
転生佐助はきっと毎年安堵しこの日を迎えるんだろうなと思います。
SSは現パロリーマン佐幸です。(not転生)
以前ツイッタでリーマンパロを呟いた所、リクエストで見たいと言って頂けたので書いてみました。
・佐幸
・現代
※何でも許せる方向けです。
【佐幸】専制君主革命
幸村は飲み会と言うものが非常に苦手であった。
人付き合い自体がそもそも得手ではないのだが、加えて酒が入った人間のあのテンションと距離感がどうにもついていけず、故に出来る限り避けていた。
しかし上司主催の部所全体での飲み会と言われてしまえばさしもの幸村も断れない。
そうして幸村は納涼会と言う夏特有の飲み会に半ば強制参加と相成った訳であるが。
開始の乾杯後数十分。
既に帰りたいと幸村は隠れて溜め息を吐く。
「真田の旦那、次何飲む?て言うかペース早くない?潰れちゃわないでよ~?」
「心配には及ばぬ。と言うか何だその旦那とは」
「え~?だって真田さん、喋り方固くて武士とかいい所の旦那さんみたいなんだもん~。いいじゃない!楽しい飲みの席なんだし、同期のあだ名呼びくらい大目に見てよ!」
無礼講無礼講と笑って言われてしまえば断る事も出来ずに幸村は好きにしろと言い捨てる。
飲み会が好きでは無いとは言え場を白けさせるのは本意ではないし、正直呼ばれ方などどうでもよかった。
ただやはりこの男は苦手だと隣に座る人物を幸村は横目で伺い見る。
彼は猿飛佐助と言い、先程彼が言った通り幸村の同期であるのだが、へらへらと軽い態度が幸村は入社時からどうにも好きになれずにいた。
彼は仕事中も雑談が多く、席が隣の幸村はよく話し掛けられては気を散らされる。
任された仕事はきっちりこなすので問題はないのだが、勤務中なのだからもう少し真面目にと幸村は思わずにはいられなかった。
終業後も女子と頻繁に飲みに行くようで。
それ自体は個人の時間なので構わないが、ついでの様に幸村にも声をかけて来るのも彼を苦手に思う要因だ。
女子がいなくなってから、誘いのない己を不憫に思うのか彼は「真田さんも今度行かない?」などと言うが、ただでさえ飲みの席は苦手であるのに女子となどとはとんでもない。
それに女子社員達も彼と楽しく飲みたいと思い誘ったのに、預かり知らぬ所で勝手に誘われた、しかも面白味も無い自分などが突然参加していたら嫌であろうと。
諸々の理由で幸村はそれを断るのだが。
その度に気まずいと言うか。
何となく微妙な気持ちになるので厄介だった。
断ればしつこく誘う事はせず直ぐに引くのは有り難いが、その時に言われた言葉も幸村の心に靄をかける。
真田さんも少しは慣れておいた方がいいと思うけどなぁ、と。
あしらい方とか覚えておいた方が良さそうだし、だなんて。
女子が苦手な自分を揶揄うみたいに。
卑屈かも知れないが馬鹿にされたように感じて、以来幸村は彼と距離を取っていた。
すると流石に彼も気付いてムッとしたのか、幸村の席の近くで飲みの話をしていると先んじて周囲に真田さんは苦手だから行かないよね、などと言うようになっていた。
それ自体は事実なので素直に頷き、あとは極力関わらない様にと心がけていた。
そんな相手。
しかしそんな多少距離のある同期と、席が自由なこの飲みでは当然離れて座るつもりであったのに、何故か隣り合って座っている現状もまた幸村を憂鬱にする。
まぁ、周囲の女子との会話を全て引き受けてくれるのでそれだけは有り難いと。
思い、兎に角目の前に並ぶ物を摘まみ、酒を飲み、時が過ぎるのを待っていたのだが。
二時間のリミットまであと少しと幸村が時計を見上げた所で幹事が突然何かお遊びのゲームをなどと言い出した事で幸村は窮地に立たされる事となった。
そしてそこで以前のその同期の男の忠告を素直に聞いておけば良かったかも知れないと後悔する羽目になる。
突如始まったゲームは飲みの席では割りと定番のものらしく、幸村以外の全員がその存在とルールを知っていた。
人数分の数字と王様と書かれた籤を皆で引き、王様を引き当てた者が数字を指定し命令を下すその遊び。
一見何の事はない様に見えたのだが、あれよあれよと言う間に始まってみれば何とも幸村には驚きの連続となるものだった。
最初はまだ肩を揉めだの何を買ってこいだのと差し障りない命令で、成る程王様とはよく言い得たものだと思った程度。
しかしそれが次第に様相を変えて行き。
料理を手ずから、所謂あーんで食べさせろだの、細長いおつまみを使いポッキーゲームをしろだの。
まるで恋仲の者同士がするような事を命令し始めるのだから幸村には信じられない。
そして時間を見て最後の王様となった女上司はあまつさえ口付けを、などと!
定番だお約束だと黄色い声と笑い声を聞きながら絶望したのは見事に番号を言われてしまった幸村だ。
これまでは何とか逃れていたと言うのに、何故最後のそれに限って当たるのか。
己のくじ運の無さを心底呪いたい心境だった。
おまけに相手の番号は隣の猿飛佐助で。
女子でなかった事が唯一の救いだろうか。
否、それでも破廉恥な事に変わりはない。
どうしたものかと狼狽え後ずさると彼は驚いた様子もなく平然と此方を振り返った。
その顔は笑っている様にも真剣な様にも見えて幸村には判別がつかない。
見えぬ周囲の圧力と得体の知れない盛り上がりに逃げたいと思うが王様の命令は絶対だと言うゲームのルールが幸村をその場に縛り付ける。
しかも命を下した王様は現実世界でも上司に当たる。
ゲームの中断すら言い出し難い状況だった。
どうするか。
此処はもう腹を括るしか無いのか、だがしかし。
迷う間にも相手の佐助は既に眼前に迫っている。
躊躇いのない彼はきっとそう言う事にも慣れているから、ゲームでの男とのそれなど数に入らないのだろうと思えば無性に悔しい様な悲しい様な気持ちにもなったりして。
半ば捨て鉢の気持ちで幸村が咄嗟に目瞑ると。
ふわりと伸ばされた手が肩を通り越し幸村の後ろ髪を掬った。
そして軽く髪を引かれる感触に目を開けば、此方を見据えた男は幸村と視線を合わせたまま、掬った髪の先に恭しく。
キス、を――
え、と思った時には彼は幸村の髪を手放し両手を己の顔の隣で広げていた。
そして笑って告げる。
「はい、終了~」
王様である上司は不満気だったが佐助が笑って宥めるとそれ以上無理強いはしなかった。
寧ろ。
「場所の指定はなかったですから~」
相変わらずあんたは狡い男だねぇと笑って佐助を小突いている。
幸村はただ呆然とするしかない。
終わったのか?
そして彼は、もしかして、もしかしなくても、己を助けてくれたのだろうか?
いや、単に自身が男などに口付けたくなかっただけかも知れないが、助けられたのは事実で…
お礼を言うべきかと彼の背を見つめていると振り返った佐助がウィンクをする。
それがどう言う意味合いを持つのか。
動揺の過ぎる幸村にもう大丈夫だと言う意味なのか、からかってごめんと言う意味なのか、はたまただから言ってたでしょとでも言いたいのか。
分からないが突如襲われた胸を締め付けられる様な衝動に幸村はシャツを握り締める。
そうして幸村はその日初めて知った。
恋に落ちると言う感覚を。
触れられていない筈の唇が何故か無性に熱かった。
その後、幸村が翌出社日に律儀にお礼を告げた事から二人の距離は急激に縮まった。
交流が始まり終業後に共に二人で飲みに行く様にもなり。
紆余曲折を経て二人は付き合う事となるのだが。
そこで幸村は初めて佐助がずっと己を好きだった事、飲みの誘いは女子と一緒にではなく二人でだった事、佐助が女子とよく飲みに行っていたのは女子の興味が幸村にいかないようにする為だった事、等々。
様々な事実を教えられ驚く羽目になるのだが。
それはまだもう少し先の話。
終
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プロフィール
HN:
早和
性別:
非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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