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愛嬌、愛らしさ、懸命 静かな思い
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ツイッターで寂しいから構ってくれーって叫んだら逆に「佐弁下さい!」ってリクエストされたので書きました(笑)
佐弁です。










・佐弁
・現代
・転生

※何でも許せる方向け










【春の目覚めに】







平和になった現代で、嘗ての主から大切な幼馴染みとなった弁丸が佐助は可愛くて仕方なかった。
もう忍であった昔の様に役に立つ事も出来ないのに、変わらず無邪気に己を慕ってくれる彼。
感情制御の訓練も受けていないから、名を呼ばれ一目散に駆けてきてくれる小さい体を受け止める度に佐助は堪らない愛しさを感じた。
しかし過去の様な身分差はもうこの時代にはない。
彼にも武士と言う責任はない。
故に彼の将来を思い距離を取る必要も、心を鬼にし厳しく接する必要ももう無いのだと思えば佐助の心は軽くなる。
思う存分彼を慈しめる事の何と幸せな事だろう。
佐助の心は酷く満たされていた。
ある期間に突入するまでは。





この時代では子供の義務となった勉学の、中学でのそれを終えて家に帰った佐助が毎日まずする事はと言えば、飛んでくる火の玉を受け止める事だった。

「佐助ぇ!お帰り!」

今日も膝上程の位置に両手を伸ばし、走る勢いのまま抱きついてきた弁丸を佐助は足を踏ん張り抱き止める。
凄まじい勢いな上に弁丸は抱き付く時に両足をそのままホールドしてくるので佐助は毎日扉を開ける前には必ず心の準備をしなければならなかった。

「はいはい。猿飛佐助、ただ今戻りましたよ~」
「遅いぞ、佐助!待ちくたびれたではないか!」

今日も無事受け止められた弁丸を抱き上げ帰宅を告げれば尖らせた唇からは幼い不満の言葉が溢れた。
小学校低学年の弁丸と中学生の佐助の帰宅時間にはどうしても一時間程差が出来てしまう。
それを弁丸は毎日窓から玄関を眺め待っていてくれるらしいのだが、幼い子供にとっての一時間は相当なもので。
故にこの不満もほぼ日課のようになっていた。
弁丸はこの不満を解消する為に早く佐助と同じ学校に通いたいとよく言うが、6歳差の二人が同じ学校に通える日が来る事はない。
取り敢えず高校に上がる際に弁丸にそれをどう説明したものか。
それが目下の佐助の課題となっているのだが。
閑話休題。

「ごめんごめん。6限が長引いちゃって。学校だから許してよ」

いつもの謝罪と言い訳の言葉を口にすれば素直な弁丸はむぅと唸りながらもいつも納得してくれる。

「学生のほんぶんはがくぎょうであるからな…仕方あるまい…」

そんな小学生らしからぬ言葉遣いで頷く弁丸。
まだ幼いからか、弁丸の前世の記憶はほんの僅かなものの様で。
おおよそ人の名前くらいしか覚えていない。
その為態度や行動は普通の子供と変わらないのだが、こう言う口調や変わらない性格を見るとやはり彼はあの真田幸村なのだなと強く思えて佐助は思わず苦笑を溢す。

「だが、もう学校はおわったのだろう!?」
「うん、もう弁丸様と一緒にいられるよ」

告げればパッと目を輝かせる。
そしてならばと次々に腕の中でその日の出来事を語り始める弁丸を、佐助は眩しく見つめながら抱き上げたまま部屋へと運んだ。



弁丸の話す内容は8割がお館様と家族の事で残り2割が学校の事だ。
前述の通り前世の記憶が殆ど無い彼は幸い学校でもそれなりに上手くやれている様で。
それに関しては良かったと佐助は素直に思う。
何分、幼子にあの時代の記憶は重すぎる。
価値観も違い過ぎるから、子細を抱えていたら恐らく弁丸は学校で浮いてしまっていただろう。
佐助は適当に周囲に合わせてやり過ごせたが、不器用だった幸村にそんな芸当が出来るかと問われれば言葉に詰まる。
そう言った面で彼が苦しむ事にならなかったのは本当に幸いだったと思うのだ。
佐助も弁丸と再会してから更に記憶が鮮明になる事があるのでもしかしたら弁丸もこれから徐々に思い出してしまうのかも知れないが、その時には自分が傍にいるから助けてやればいいだけの事だ。

話がずれたがそんな風に学校生活を謳歌している弁丸は級友に遊びに誘われる事もままあるのだが、それをいつも断り家に一目散に帰るのは佐助と過ごしたいが故だ。
遊んできてもいいのだと促しても佐助の方がいい佐助と一緒がいいと全力で好意を示してくれる。
この子供を可愛いと思わずして何を思えと言うのだろうか。
部屋で弁丸を膝に抱き話を聞きながらひたひたと胸に満ちる思いを感じていると、次第に弁丸の話が途切れがちになっている事に佐助はふと気が付いた。
覗き込むと瞼が半分落ちていて眠たげに目を擦っているのでそれを掴んで止めさせる。
これはよくある事で、佐助の腕の中で気配を感じ心音を聞いているとどうやら弁丸は眠くなってしまうらしいのだ。
他の人ではあり得ない。
これもまた無意識の佐助への特別であり、同時に昔と変わらぬ所でもある。

「眠いなら寝ちゃいな」

そう促すと明らかに眠いと言う顔をしながらも弁丸はいやいやと首を横に振り眠りを拒否する。
その理由は。

「佐助が…いるのに…」

勿体無いと、そんないじらしい事を言うから佐助としては堪らない。

「寝ても、傍にいるよ」

トントンと一定のリズムで抱いた弁丸の体を叩けば瞼は更に落ちていく。
そうしていよいよ耐えきれなくなったのか、目覚めてお前の姿が無いのは許さぬぞと、言葉を残して眠りの淵に落ちる弁丸。
完全に寝入った彼を眺めながら、佐助は懐かしさを感じていた。

さっきの言葉は昔幸村が同衾した夜に言っていたのと全く同じものだった。
夜も遅く、行為の余韻と疲れに眠くて仕方無いであろうに、佐助がいるのに勿体無いと必死に微睡みを耐えようとし、無理と分かると起きるまで傍にいろと言って眠った。
あの頃は忍の立場として願いを聞いてはやれず、一人で目を覚ました幸村はいつも拗ねていたけれど。
自分だって愛しい者の温もりを手放すのは辛かったのだ。

今はもう身分もない。
人目を気にする事もない。
ずっと寄り添い寝顔を見つめていても咎められる事はないのだ。
佐助の手を握って離さない弁丸にそんな風にしなくても離れないよと苦笑して、佐助は腕の中の弁丸を抱き締める。
髪に顔埋めると太陽と子供の甘い匂いがした。
そこに混じる汗の匂い。
元々弁丸は体温が高いので人肌に触れていると熱いのかも知れない。
見ると前髪もしっとりと濡れていた。

その匂いに不意に佐助の胸が高鳴った。
ドクドクと急に心臓が早くなる。
何だろう。
彼の体温が移ったのだろうか。
自分も妙に体が熱かった。
いや、違う。
この熱には覚えがある。
前世の同衾した時の事を思い出したのがまずかったかも知れない。

佐助の記憶は鮮明だ。
日常や戦の場面は勿論の事、褥での事もハッキリと覚えている。
生々しい程のそれは忍ではない中学生の肉体には重過ぎて。
待ってくれと愕然とする。
幾ら前世でそう言う関係だったとしても、幼い幼馴染みにそんな邪な思いは抱いていない筈だったのに。
そんな思いは抱いていない、抱いてはいけない。
しかし熱くなる下肢は正直だ。
握る手と鼓動に慈しみと情愛を感じ、同時に体温と汗の匂いに劣情と独占欲を抱く。
ごちゃ混ぜの感情も下肢の熱も、一度離れて落ち着かせたいと思うのに弁丸は手を離してくれず、そっと指を剥がそうとすればむずがる様に唸って更に握る手に力を込める。

止める必要のなくなった想いがまさか思春期の体にこんな弊害をもたらすとは。
佐助は途方に暮れながら弁丸が目を覚ますまでひたすらに念仏を唱え続けた。





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戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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