愛嬌、愛らしさ、懸命
静かな思い
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6月も末となり、梅雨明けが待ち遠しい今日この頃。
雨続きだった日に友人と雨の日の萌え行動について語り合い、それに滾って思わず佐幸変換してしまいました。
その行動をする二人を想像した時、佐助より幸村の方がしっくりくる気がして。
それを女幸ちゃんにしたのは完全に私の趣味ですすみません。
と言う事で女体化なのでご注意ください。
・佐幸+α(若干幸村総受け気味)
・現代
・女体化
【雨の随に】
佐助は自分はかなりモテる方であると思っている。
それは自慢でも何でもない、単なる冷静な自己分析の結果だ。
美形とまではいかないが、それなりに整った容姿。
成績は常に学年上位であるし、運動も身軽なため得意な方だ。
性格は軽いと言う者もいるが、明るく気さくと言ってほしい。
その為告白を受ける事も多く、その点から考えても自分がモテると言う事実は客観的に見ても間違っていないと思うのだ。
「まあ、百歩譲ってそこまでは認めてやってもいいが、こいつが男前ってのは納得がいかねえ」
そんな意見を釈然としない様子で切り捨てたのは、中学からの悪友――否、単なる腐れ縁と佐助は称している伊達政宗だ。
政宗は手にしていた新聞を鼻で笑うと、ポイとその場に投げ捨てる。
時刻は昼。
今日は梅雨の晴れ間か天気も良く、屋上のコンクリートは太陽の熱を吸って熱い。
その熱でじりじりと、そのまま放っておけば煙が上がるのではないかと思われる、よく燃えそうな薄い藁半紙のその新聞には、大きな文字でこう書かれている。
『各クラス代表出揃う。学年一のイイ男・イイ女は誰の手に!?』
如何にもなタイトル。
そしてその下には、佐助の写真が一緒に載せられていた。
佐助の通う高校は、七月の夏休み前に文化祭が行われる。
その為、佐助達一般生徒が動き出すのはまだもう少し先だが、実行委員などは中間試験を終えた頃から既に準備の為にと色々動き始めていた。
そしてその一つが、各学年の色々なジャンルの一位を投票で選ぶと言う催し、所謂ミスコンと呼ばれるそれの準備だ。
この高校の手法としては実行委員会が主体となりまず各クラスの代表者を選出させ、新聞部が宣伝し、最終的には文化祭当日に全体投票を行うと言うものなのだが、先日そのクラス代表選出が終わり、佐助達が見ていたのはその記事だった。
ジャンルは各学年により異なるが、佐助達の学年は「いい男、いい女」。
容姿だけではない、同性も憧れるような内面も含めた優れた人物が対象であり、佐助は見事そのクラス代表に選ばれたと言う訳だ。
白黒で掲載された7組7名分の顔写真と、プロフィール、それからクラスの者達のコメント。
しかし、その中に“猿飛佐助”の名前はあれど、“伊達政宗”の文字は、無い。
「やだなぁ、まー君。自分がクラス代表になれなかったからって、僻まないでよ。」
佐助は笑いながら言って、政宗の捨てたその新聞を拾い上げた。
その声音には愉悦の色が滲み出ている。
そしてそこに浮かぶのは勝者の笑みであった。
そんな佐助の言葉に政宗の口端がヒクリと引きつった。
お互い人の目を気にするタイプではないのでモテるモテないや人気の有無には然程興味はないものの、何となく――特にお互いには――負けるのは嫌だと言う思いがある。
そんな政宗に佐助の発言は地雷であったろう。
こめかみにも薄っすら青筋が浮かぶ。
屋上は瞬時に一触即発の雰囲気だ。
「まあ、でも政宗は仕方ないよ」
そんな二人を見兼ねてか、間に割って入ったのは同じく中学からの腐れ縁である前田慶次だった。
慶次の手にもやはり同じ新聞記事が握られている。
文化祭の催しの中でも大きなものの一つに入るこのコンテスト。
慶次のみならず、今や学校中がこの話題で持ち切りなのだ。
「政宗のクラス、元親いるもんね」
その言葉の指す通り、政宗の在籍するA組の欄には政宗の名前ではなく“長曾我部元親”と言う名が記されていた。
元親は高校で知り合った人物であるが、兄貴風を吹かせる男前の気質が何となく三人共に合い、一緒につるむようになった。
しかし、まさかその気に入った気質にしてやられるとは政宗も思ってもみなかったであろう。
「この投票、クラス全員だから男子票も含むもんね。元親は慕われてるもんなあ」
慶次が言う。
その言葉の通り、元親は男子からの指示が圧倒的に強い。
中学から元親と付き合いのある者達の多くは元親を兄貴と呼んで慕っており――後輩のみならず同い年の者も、だ――、元親を追ってこの高校に来た者もいる程だ。
政宗とて男子にも慕われている方ではあるが、元親には及ばなかった。
結果、僅差でA組の代表は元親に決まった訳だ。
この二人の対戦はクラス代表戦には勿体無い程だと専ら話題で、実際政宗がクラス代表から外れたと知れ渡った時は他のクラスの女子から非難の声が上がったらしい。
しかし、決まりは決まりだ。
一人の為に規定を覆す訳にはいかず、クラス代表は男女各一名とされている以上政宗は代表には成り得ない。
そして、佐助はクラスの代表になった。
世の中結果が全てと言う言葉があるけれど。
二人ともこの時ほどその言葉を実感したことは無かったであろう。
「これで、俺様が親ちゃんに勝ったら、あんたにも勝ったって事になるよねえ?」
「Shit!てめぇなんざ、元親にぼろ負けに決まってんだよ!!」
言い合いはまだ続き、この女々し野郎が、と政宗は口汚く罵る。
余程腹に据えかねたらしい。
顔だけだの軟弱だのと、言いたい放題であった。
勝者の気分もあってそれら全てを軽く流していた佐助であったが、その中の一つだけが看過出来ずに聞きとがめる。
「てめぇなんざ、男前っぷりじゃ真田の足元にも及ばねぇんだよ!」
「真田・・・?」
思わず繰り返す。
その名前は知っている。
「真田って、真田幸村?」
その人物は佐助と同じクラスの生徒だ。
佐助は余り話した事はないが、クラスの有名人の一人でもあった。
だがしかし。
「その真田だ!」
「真田って・・・彼女、女の子じゃん」
そう、彼女、女の子。
名前は幸村と男名であるが、真田幸村はれっきとした女子である。
勿論制服もスカートだ。
普段はジャージでいる事の方が多いが。
有名なのはその名前と、堅苦しい口調、それから顔と性格のギャップが余りにも激しい事からだ。
何しろ彼女はアイドルのような可愛らしい容姿であると言うのに、性格はまるで女の子らしくない。
女子の方では物足りないと男子に交じって体育の授業を受けようとしたり。
しかもそれはスポーツのみに留まらず武道である柔道などにも平気で参加しようとするし、空手などで殴り合いだってする。
そんな勇ましい性格の持ち主なのだ。
ふと校庭を見下ろせば、今も男子に混じってサッカーをしている。
ハーフパンツを履き、腕や足などの怪我をものともせず男子と体当たりで張り合っている。
気にせず相手をしている元親含む相手らもどうかと思うが、年頃の女の子のする事ではないのではないかと言うのが佐助の意見だ。
「分かるー。ゆっきーの男前っぷりは、その辺の男子じゃ敵わないよねー。俺が女の子だったら惚れちゃうよ!」
しかし、慶次は政宗の意見に賛同らしい。
あ、男のままでも惚れるけど、と。
にこにこと笑いながら佐助に続いて校庭の幸村を見下ろす。
実際、佐助のクラスの投票も男子のクラス代表に対して幸村にかなり票が入っていたらしい。
幸村が女子だった為に無効票となり、結果佐助が難なく勝利したのだが。
彼女がもし男子だったら。
否、それどころか、女のままであってももし“いい男”の枠に女子が出られるような状況だったら。
クラス代表はもしかしたら幸村の方だったかもしれない。
政宗たちはそれを知っているのかいないのか。
分からないが、触れられたくない所に触れられた佐助は若干つっけんどんに答える。
「男前って・・・男勝りなだけじゃないの?折角可愛いのに、勿体無いよね」
そこには、男としての細やかなプライドのようなものもあったかも知れない。
女子に負けそうになるなど、と。
すると政宗はそんな佐助の内心を見透かしたのか、嘲るように笑う。
「あいつはあのままでいいんだよ」
「何でよ。女の子は可愛い方がいいじゃん」
「あいつの良さが分からねぇとは、底の浅ぇ奴だ」
鼻で笑った政宗は、校庭を見下ろして口元を綻ばせる。
視線の先は当然の如く幸村だ。
政宗のこんな笑みを佐助は今まで見た事がなかった。
それから政宗は、その後響いた予鈴の音に促されて踵を返す。
もう佐助には一瞥もくれない。
否、別に見て欲しくなどないのだが。
そして、そんな二人をそれまで黙って見守っていた慶次も、苦笑を浮かべて政宗の後に続く。
そうしてその場に残ったのは佐助一人だ。
何だろう。
この釈然としない気持ちは。
一人置いて行かれたような。
最後の最後で逆転負けをしたような気分だ。
しかし佐助の意見はやはり変わらず、すっきりしない気持ちのまま屋上の柵に凭れるように座り込む。
もやつきを吐き出すように大きな溜息を一つ。
髪をぐしゃりと掻き混ぜる。
手の中ではすっかり忘れ去られた新聞が無残に握りつぶされてしまっていたが、もはやそれが佐助の意識に昇る事は既に無かった。
そうして。
そんなやり取りがあったのが月の始め。
それ以来、幸村が近くにいると何となく目で追ってしまうようになった佐助であったが、かと言って暫くは特に幸村への印象が変わると言うような事はなかった。
佐助は運動神経はいいが、積極的に外に出てスポーツをするタイプではない。
どちらかと言うとインドア派だ。
幸村とはタイプが違い過ぎて接点が無く、遠くから見ているだけなら頻度が増えた所で今までと大差無い為、それは当然の事と言えよう。
相変わらず髪もぼさぼさにして駆け回っている姿を見ては、つくづく勿体無いなと思っていた。
そんな彼女と急に話す機会を得たのは、それから一週間ほど経った頃だった。
その日佐助は日直であったが、偶々同日に新聞部から件のコンテストのクラス代表にと取材の申し込みを受けていた。
普段であれば誰かに日直の仕事を頼む所であるが、運悪くその日は担任が日直宛に雑用を申し付けており。
また、空の雲行きが急に怪しくなっていたのも要因の一つであったろう。
部活のあるものは最初から変わる事は難しく、それ以外の者は雨が降り出す前に早々に帰りたいと思うのは仕方のない事。
結果、皆が交代を渋り、佐助はどうしたものかと頭を悩ませていた。
そんな時に、日直の仕事を変わると言ってくれたのが幸村だった。
それまで殆ど話したことなど無かった為に驚きはしたが、渡りに船とは将にこの事。
有り難くお願いをして。
しかし、その時は言葉を一言二言交わしただけで終わってしまった。
お礼を言っても堅苦しい言葉で問題ないから早く取材に行くようにと素っ気なく言われてしまい、彼女も担任の元へと言ってしまう。
助けて貰っておいて何だが、もうちょっと愛想よくすればいいのに、なんて事すら思ってしまっていた。
変わったのはその後だ。
何だかんだで延びに延びた取材が漸く終わり、佐助がさて帰ろうと下駄箱へと向かった頃、外はやはりと言うか何と言うか、既に雨が降っていた。
天気予報では何も言っていなかったと言うのに。
小雨と言うには少々厳しい、傘が無ければ外を歩くのは難しいのではと言う程には雨粒は地面を叩いていた。
朝は晴れていた事と、そのように予報では何も言っていなかった事もあって、佐助は傘を持っていない。
おまけに時刻は既に夕方で、ほとんどの生徒は部活と委員会の者を除いて帰宅済みだ。
行き摺りに誰かに入れて貰う事も出来ず。
普段傘立てに転がっている傘は既に同じような境遇の者達に持っていかれてしまったらしく、傘立ては今は空っぽだ。
「最悪・・・」
そうして思わず呟いて、廊下に座り込んだ佐助に声をかけて来たのだ。
同じように帰る為に下駄箱にやってきた幸村が。
「お主、まだ帰っておらなんだのか」
「真田・・・さん!?」
「取材とやらは随分と時間がかかるものなのだな」
ご苦労だったと労う言葉は口調の所為なのか少々威圧的だが、それを気にするより佐助は幸村がこの場にいる事に驚いていた。
地元の道場に通う為に部活動には入っていないらしい彼女が、今この場にいるのは当然ながら佐助が頼んだ日直の仕事の所為である事に間違いなく。
まさかこんな時間までかかる内容だと思っていなかった佐助としては、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
雑用はそんな大した量ではないと担任は言っていたから、とっくに終えて帰っているものとばかり思っていたのに。
しかも、そう思い込んでいた為に自分は確認もせずに、幸村より先に帰ろうとしていたのだから救えない。
「ごめん!俺の所為で帰るのこんな遅くなっちゃって・・・っ」
しかし、それを謝っても幸村は気にするなの一言だ。
「時間がかかったのは単に某の手際が悪い所為だろう。己の責だ。お主が気に病む必要はない」
「いや、でも、元々は俺が頼まれてた仕事だった訳だし・・・」
「お主はそれより重要な役割があったのだから仕方あるまい。クラス代表はお主に託されたもの。代われる責を請け負うのは当然の事だ」
何とも模範的な答えであるが、幸村が本心で言っているであろう事は彼女の目を見れば分かった。
しかし、気にするなと言われてもやはり申し訳ないとは思うのだ。
こんな雨まで降りだしてしまって。
見る限り彼女の手に傘は無い。
本来ホームルームが終われば直ぐに帰る事が出来た彼女は、佐助が仕事を頼まなければ雨に降られる前に帰れた筈なのに。
「今度、日直変わるし・・・あと、何か奢るから・・・!」
せめてもの詫びにとそう提案すると、幸村は一瞬キョトンとした顔で佐助を見返し、それから思わずと言った様子でふき出す。
「え、何?俺様、何か変な事言った?」
突然笑われた佐助は、当然原因が分からない。
今の話の流れで何かおかしな事があっただろうか。
尋ねると、幸村は尚も笑い続けながら佐助に謝る。
「すまぬ。いや、お主、もっと軽くて調子がいいだけの者かと思っていたが、存外律儀なのだなと思ってな・・・」
笑いが納まると、幸村が佐助に背筋を伸ばして向き直る。
某は誤解をしていたようだ、とそう言って。
今度は真面目に頭を下げて謝るので佐助は柄にも無く狼狽えてしまった。
こんな風に丁寧謝罪をされた事もそうだが、それより何よりその前の彼女の笑顔に動揺したと言うのもある。
今まで試合の最中に挑むような不敵な笑みを浮かべた所は何度か遠目に見た事があったが、こんなあどけないような笑顔は初めてだったのだ。
「だが、礼は不要だ。先にも言ったが、此度は当然の事をしたまで故」
「や、でも、帰るの遅くなっちゃったし!雨もまだ止みそうにないしさ!」
ドギマギしたまま返事をすれば、彼女は佐助の言葉に外を見てふむ、と大仰に頷いた。
「確かに、これは当分止みそうにないな」
空は一面雨雲に覆われている。
これは下手をしたら夜中まで降り続くかも知れない。
「お主も、傘は無いのか?」
振り返った幸村に尋ねられて、佐助は頷いた。
何だか申し訳ない気持ちがいや増す。
これで自分が持っていれば、お礼に家まで送るなど出来ただろうに。
しかし、佐助が咄嗟に謝ろうとした所で、突然投げつけられたものにその言葉は止められてしまた。
暗くなった視界。
バサッと乾いた音を立てて。
顔に当たるツルツルした感触と、添えた手には対照的に少し硬い生地の感触。
「わっ!?何・・・」
顔を避けて、よく見ればそれは制服のブレザーだと気付くまで数秒。
その頃には幸村は既に靴を履き、昇降口の方へと向かっている。
「ならば、これでも被っていけ。風邪を引かぬようにな」
そう言って、また明日と彼女は屋根の無い外へと走り出る。
自分はワイシャツだけで、雨の中を。
「ちょっ・・・!」
呼び止める声も既に届かず、佐助はその後姿を呆然と見送るしか出来なかった。
流石に運動に長けているだけあり、気付けばその姿は遥か遠い。
一人になったその場所で、佐助は幸村のブレザーを抱えて蹲った。
何だこれ。
佐助は蹲ったまま大きく息を吐き出す。
悔しいが、政宗の言っていた事が理解出来た気がする。
これは、確かに自分など足元にも及ばないかも知れない。
だってこんなの。
「男前すぎるだろ・・・」
太刀打ちなど出来よう筈もない。
おまけに、そんな風に男前かと思えば自然体の笑顔まで見せられて、何だか振り回されている気分だ。
「もう、何のなの、これ、俺様どうすりゃいいのよ・・・」
誰もいない昇降口。
佐助の問いかけに答える声は当然無い。
それから佐助は、見回りの教師が下校を促しに来るまで、その場で蹲ったまま動けずにいた。
終
そしてそれから始まる佐助の猛アタックの日々、とか(笑)
因みに政宗と幸村は一年の時に同じクラスで性別を超えたライバル関係を結んでいます。
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プロフィール
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早和
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非公開
自己紹介:
戦国BASARAの佐幸と真田主従と武田軍と西軍大好きなBASARA初心者です。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
3→宴→2(プレイ途中)からの現在は4に四苦八苦中(笑)
幸村が皆とワイワイしつつ、佐助に世話を焼かれているのを見るのが何より好きです。
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